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戦いの果てに見たもの

 ここからイシュケル達の反撃が始まった。イシュケルはアルザスの腐食した腕を削り取り、ウッディはそれを炎の魔法で焼き付くした。たが、アルザスは腐食して朽ち果てた腕を何度も再生した。


「なんだ、こいつは! 再生しやがる。イシュケル、こいつを殺るには木っ端微塵に吹き飛ばすしかなさそうだぜ!」


「そのようだな。アンデッド系によくあることだ。慌てるなウッディよ。しかし、問題はそれをどうするかだ」


 イシュケルはわかっていても、アルザスを再生出来ぬよう木っ端微塵に吹き飛ばす方法が思い付かずにいた。


「イシュケルの魔斬鉄はどうかな?」


「駄目だ……切り刻むという意味では、通用しないだろう」


 暁の考えは却下された。反撃に出たイシュケル達だったが、再び劣勢に押し戻されていた。


「待てよ……確かアルザスは伝説の武具、即ち身に付けている鎧と天空人のお陰で進化したって言ってたよな? だったら、鎧を奪えば……」


「ウッディ、いい考えだよ。イシュケル、やってみようよ」


「あぁ。だが、これは俺一人でやる。やはり、これは俺一人の問題だ。この作戦は危険な賭けだ」


「何言ってんだよ。さっき俺達は仲間だって言ったろ?」


「確かに言った、ウッディよ……だから、こそだ。もし、アルザスにここで全員やられたらどうするんだ? イセリナは誰が生き返らせる? ドーガの言葉を思い出すんだ」


「未来は俺達で切り開く……だな。わかった。俺と暁は徹底して援護に回る。それでいいな?」


「すまない……」


 そう言うとイシュケルは再びアルザスに向け駆け出した。


「暁……イシュケルの援護に出来るだけ一人・・で協力してやってくれ」


「ウッディ、お前はどうするんだ?」


「俺は、取って置きの魔法の準備に取り掛かる。この魔法はやたらと詠唱に時間が掛かるもんでな。時間を稼いで欲しいんだ。出来るか? 暁……」


「わ、わかった。やってみるよ」


 暁はウッディに言われた通り、イシュケルの援護をする為に前線に戻って行った。


「ごめん……ごめんな……暁……」


 ウッディは少し離れた場所にあるイセリナの亡骸を見つめた後、歯を食い縛り涙を堪えた。


――アルファ校長、すまない。どうやら、あの魔法を使わないと駄目のようだ。やるしかない、未完成だがあの魔法を。


 ウッディは一度目を閉じた後、両足を肩幅程度に開き詠唱に入った。

 前線では、イシュケルとアルザスが激しくぶつかり合う。イシュケルがアルザスの腕を切り落としては、暁と黒龍が再生を遅らせるように、床に散乱したアルザスの肉片を消滅させると言った形を取っていた。


「しぶとい奴め、やるしかないか……」


 イシュケルは深呼吸すると、アルザスに向け魔斬鉄を繰り出した。鈍い音と共に、アルザスは真っ二つになった。恐らく、アルザスは再び再生するだろう。

 魔斬鉄が通用しないと知って、イシュケルが魔斬鉄を放ったのには理由があった。狙いはアルザスが纏っている伝説の鎧。この作戦が上手くいくかいかないかで勝負は決まる。イシュケルはそう考えていた。


「ぐはっ……」


 アルザスは痛みを堪えきれず、一度は叫びを上げた。しかし、肉片はアルザスの核部分に再び集結する。再生の始まりだ。


「今だ、暁! アルザスから鎧を奪うのだ」


 イシュケルの作戦を読んでいた暁は、直ぐ様体勢を整え、鎧の奪取に成功した。


「よくやった。暁! これで、アルザスの力も落ちるだろう」


「フハハハッ」


「何がおかしい!」


「鎧を奪えばこのアルザスに勝てると? つまらんジョークだ」


 鎧を奪われ完全な亡者になったアルザスは、再生しながらそう言い放った。

 その時、後方から眩い光が謁見の間全体を照らす程に激しく光る。


「最後に勝つのは俺達だ! 皆! どいてくれ――っ! アルザス、これで貴様は終わりだ! 喰らえ、究極魔法ファイナルウェポン」


 ウッディは両手を目一杯広げ、その魔法をアルザスに向け放った。


 ウッディの放った究極魔法ファイナルウェポンは、周囲にある物を飲み込みながらアルザスを襲う。


「な、何だ! この魔法は……か、身体が捻れていく……ぐはっ……」


 ファイナルウェポンはアルザスを飲み込み、木っ端微塵に砕き形なきものにした。


「ハァ……ハァ……やった……か」


 ウッディはアルザスを倒したのを見届けると、その場に座りこんだ。


「ウッディ――っ! あんなに凄い魔法があるなら、何で最初からやらないだよ」


 暁がウッディに駆け寄る。そして、少し遅れてイシュケルも駆け寄った。


「ウッディ、見事な魔法だった……見直したぞ!」


 ウッディは虚ろな目をして、二人に言葉を返すことなく黙ったままだ。


「ウッディ……ウッディ?」


 返事をしないウッディにしびれを切らし、暁が肩を掴み揺さぶる。


「…………あ……暁……これは……禁断の魔法……だったんだ……命と……引き替え……の……うぐっ」


 ウッディの身体全体に、倦怠感と剣を何千本も刺されたような痛みが走る。更に、呼吸器系も蝕まれ酸素を取り入れることさえ困難な状況に陥っていた。


「暁……残念だが、ウッディはもう……」


 イシュケルはウッディを見て、その命はもう幾ばくも残されていないと悟り、暁の肩を叩いた。


「イヤだよ、ウッディまで死んだら……僕は……」


 暁は人目を憚はばからず、声を出して泣いた。サハンも黒龍も、静かにそれを見守っていた。


「……ウッディ、すまない。一度お前を蘇生してるから、俺の手では……出来ないのだ……」


「……イシュケル……気にすんな……お前には……感謝してるぜ……必ずイセリナを……生き返らせて……くれよ……暁! 最後に顔を……顔を見せてくれ」


「何だよ、最後だなんて。そんな悲しいこと言うなよ!」


 暁がそう言うと、ウッディは出来る限りの笑顔で返した。


「暁……最後に言わせて……くれ」


「な、なんだよ、こんな時に」


「暁、お……まえが…………す…………だ……」


「ウッディ? ウッディ――っ!」


 ウッディは力なく暁に最後の言葉を残すと、息を引き取った。泣き崩れる暁の肩を、イシュケルはそっと撫でた。


「思い切り泣けばいい……この悔しさを忘れない為にも……」


「……そうだね……」


 イシュケルは何も言わず、暁が落ち着くまで肩を撫でてあげた。


「イシュケル、もう大丈夫だよ。僕達にはやらなくちゃいけないことがあるんだ」


「そう言うことだ。暁、ではこの城に囚われた天空人を探すとしよう」


「わかった。その前にちょっと、待ってて」


 暁はイセリナとウッディの亡骸を並べ、道具袋から粗末な布を取り出し二人に掛けてあげた。


「イセリナ、ウッディ、ちょっと行ってくるよ」


 暁は二人の亡骸に明るく話し掛け、イシュケルの元に駆け寄った。


「もう大丈夫か?」


 イシュケルが暁にそう問いかけると、


「うん!」


と、暁は元気に返した。


「では、行くぞ! サハンもついて来い。黒龍はここで、二人を見守っていてくれ、わかったな?」


「ギャォォン」


「いい返事だ」


 イシュケル達は謁見の間を離れ、囚われた天空人の捜索を始めた。このルビデスパレスは自分の城ということもあり、天空人を探すのにそう時間は掛からなかった。


「じいちゃ――ん!」


 サハンは囚われていた一人に言った。

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