名前に隠された意味
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――一方勇者サイド
イセリナ達は、命からがらアルタイトの街に辿り着いていた。
道具袋の中の、薬草は底をつき、ウッディが言っていた通り回復魔法の必要性を改めて認識していた。
「皆、お疲れ様。ウッディと暁のお陰で、何とかピンチを切り抜け伝説の盾も手に入れることが出来たわ。後はウッディ……、回復魔法の習得をお願いね」
「任せておけよ。回復魔法は苦手で一度は諦めたが、そんなこと言ってられねぇもんな」
ウッディは、笑顔でイセリナに返した。
「さぁ、今日は身体を休めましょう」
イセリナ達は明日に備え、今日は宿を取ることにした。
翌日、イセリナ達はウッディに回復魔法を習得してもらう為、アルタイトにある魔法学校に足を運んだ。
――魔法学校……基本的な攻撃魔法や、回復魔法を学ぶ魔法使いや僧侶を志す者の為の学校だ。
ウッディは苦手な回復魔法を克服するべく、臨時で入校した。
「ウッディ、あまり時間は取れないから、集中して勉強するのよ」
「任せておけって、イセリナ。今度は本気だすぜっ!」
「僕も応援してるよ、ウッディ」
ウッディは二人に激励されると、自分より年下の生徒の中に消えていった。
――今更、基礎から回復魔法を覚えるのは、格好悪い。
今までの彼ならそう思っただろう。しかし、今回の戦いで回復魔法の必要性を認識し、イセリナ達の為にプライドを捨て習得することにしたのだ。イセリナも暁も、ウッディの気持ちは十分感じていた。
「ウッディ、大丈夫かしら……」
「イセちゃん、ウッディなら大丈夫だよ。僕が保証するよ」
「そうね、大丈夫よね。それじゃ、私達は伝説の武具の情報を集めましょう」
「ほい、きた」
イセリナと暁は伝説の武具の情報収集することにした。
◇◇◇◇◇◇
――一方魔王サイド
イシュケルは久しぶりに魔界に戻ってきていた。
「う~む。あの御方という奴の所在を調べなくてはな」
イシュケルはイシュケル魔城にある書庫に赴いた。
「マデュラのことだ。何か手掛かりを残しているに違いない」
イシュケルは埃にまみれた書物を、片っ端から読みあさった。
――何か、手掛かりはあったか?
心配そうに、鞘の中から嘆きの剣が語りかける。
「薬草スープのレシピはあったが、これと言って手掛かりはないな……。クソっ、そのあの御方って奴の復活を、指を加えて見てろと言うのか……」
イシュケルは怒りに震え、古ぼけた本棚を蹴飛ばした。すると本棚から本が崩れ落ち、埃とカビ臭さが書庫を包み込んだ。
――イシュケルよ、見て見ろ! この本、他のやつと違うぞ!
偶然落下した本の中に、一際異彩を放つ辞書ほどの厚さがある書物を嘆きの剣が発見した。
「これはまだ読んでいないな……」
イシュケルはその異彩を放つ本を、手に取り開いた。
――古の戦いで、我々魔王は勇者達の軍勢に破れた。だが、我々は諦めた訳ではいない。偉大なる“大魔王ジュラリス様”の亡骸をガルラ牢獄に封印し、悠久の時を越え必ず復活させるであろう。そのためには、ジュラリス様の影武者を育て、生け贄にする必要がある。これを読んでいるであろう魔族の者よ。ジュラリス様の復活を頼んだ。
我が魔族に栄光あれ!
その本は魔族語で綴られていたが、イシュケルは不思議と解読することが出来た。
「イシュケルとは、魔族語で影武者という意味だったのか……」
――そのようだな。しかし、我輩は影武者とは思っていないぞ。イシュケルはイシュケルだ。我が主に変わりはない。
「嘆きの剣よ、嬉しいことを言ってくれる。所で、ガルラ牢獄は知っているか?」
――あぁ、ガルラ牢獄なら知っている。但し彼処は厄介でな。ダメージ性の結界が張り巡らされているから、ドラゴンの背に乗り、突破しないとキツいかもな。
「ドラゴンか……俺に呼び出せるか……」
イシュケルはドラゴンを呼び出すすべく、謁見の間に戻った。




