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混沌とした魔界

◇◇◇◇◇◇




 ――一方魔王サイド


 シードラゴン敗北の一報が入り、魔界は混沌に満ち溢れていた。


 マデュラに記憶を書き換えられたイシュケルは、魔王本来の冷酷さを取り戻していた。八方手を尽くしてはいたが、結果を出せない部下達に苛立ちを覚えるイシュケルとマデュラ。


 イシュケルは痺れを切らし、城の中央にある大広間に部下たちを集め、今後の作戦を語った。その姿は以前のイシュケルとはまるで違う。堂々たる魔王としての姿だ。


「よく聞け! 我々魔族は再三に渡り、勇者ども苦い泥水を飲まされてきた。このままで良いのか?」


 モンスター達はざわめき、それを否定する。彼らとて、魔族の端くれなのだ。


「俺に考えがある……」


 イシュケルはそう切り出すと、目の前で欠伸をしたガーゴイルを斬り倒しながら語った。絶対服従……使えない者なら仲間とて容赦はしない。そう、恐怖を植え付ける為の言わば儀式だ。


「勇者どもは今、アルタイトに向かっている。そこでだ……その遥か北に浮かぶ島に、我らの新しい城を築きたいと思う。そこを新たな拠点とし、人間どもと勇者にどもを恐怖に陥れるのだ。幸いその島は峻険な岩山に取り囲まれており、容易には勇者どもも入っては来れないだろう。地の利は我らにある。立ち上がれ、同士達よ! 今こそ憎き勇者どもを根絶やしにするのだ! 明朝、早速建築に取り掛かる。現場の指揮は……エビルアーマー、お前に任せる」


「もったいない、お言葉。このエビル……必ずや、イシュケル様に似合う城を築きたいと思います」


 エビルアーマーは、身体を震わせながらそう答えた。



 翌朝イシュケルを先頭に、二百体ものモンスターが後に続き予定地の島に降り立った。

 マデュラが作成した設計図を元に、エビルアーマーが指揮を取る。力仕事の得意なモンスター、魔法の得意なモンスターに別れ、それぞれの役割を担い建設を急いだ。

 その間に、イシュケルは禍々しい結界を張り巡らし、毒沼を拡散させた。

並みの人間なら、僅か一時間ほどで死に至らしめるほどの猛毒だ。

 イシュケルはその毒沼に自らの指を突っ込み、その効果を楽しんだ。


 もうすぐ日が暮れようとした時、その牙城は完成した。着工から完成まで、僅か一日足らずである。

 イシュケルは部下たちを労い、それぞれに褒美を取らせた。そうすることで士気を上げるという、イシュケルなりの頭脳戦略だ。

 単純なモンスター達は案の定やる気を出し、疲れた身体に鞭打ってそれぞれの持ち場に戻っていった。

 一日で完成したとは思えない程の出来ばえ、かつ、想像以上に巨大な城を眺めると、イシュケルの胸は高鳴った。


「この城をルビデスパレスと名付けよう」


 魔界からマデュラも駆け付け、二人は謁見の間に向かった。

 真新しい王座に鎮座し、燭台の火を眺めながら、イシュケルは話し始めた。


「マデュラよ、魔界はお前に任せる。俺はこの城で、勇者どもの動向を探りたい」


「承知しました。イシュケル様が留守の間、魔界はお任せ下さい」


 マデュラはそう言うと、ルビデスパレスの謁見の間にも魔法陣を描いた。


「これでモンスターを呼び出すのも、魔界と人間界を行き来するのも容易になりましょう。では、私は一足先に魔界に帰らせていただきます。何かあったら、お呼び下さい」


「わかった……」


 マデュラはイシュケルの返答を聞き届けると、そそくさと魔界に帰って行った。


「さて、勇者め……どうしてくれようか」


 イシュケルは王座で足を組み、鋭い爪を舐めながら口角を上げた。

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