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勇者始動!

 マデュラはイシュケルを謁見の間に誘うと、突然足を止めた。


「イシュケル様、訓練に入る前に、お願いがあります。我が魔王軍は勇者イセリナの活躍により、劣勢にございます。つきましては、魔界ゲートの作成をお願いしたいのですが」


 ここで捕捉を入れよう。『魔界ゲート』とはモンスターを産み出すゲートであり、そのゲートを作成するには大量の魔力を必要とし、極限られたエリートにのみに許された偉業である。


「魔界ゲート? 俺にそんな力があるのか?」


「勿論です。この魔法陣に向かって、強く念じるのです」


「何かわからんが、とにかくやってみよう」


 言われた通りイシュケルが強く念じると、魔法陣は妖しく光り輝き出した。


「これでいいのか? マデュラよ」


「さすがはイシュケル様。お見事です。」


 魔法陣からは、ゾンビや獣のようなモンスターが次々と溢れ出した。


 イシュケルは自らの力に酔いしれ、早くも魔王としての自覚が芽生え始めていた。金を動かしていた男が、モンスターを動かす。この上ない喜びに、イシュケルは震えた。




◇◇◇◇◇◇




 ――一方勇者サイド


 彼女の名前はイセリナ。


 魔王軍から平和を取り戻す為に立ち上がった、若き勇者である。かつ、イシュケルが人間だった頃に、課金に課金を重ね育て上げたキャラでもあった。


 イセリナは今、信用のおける仲間を探し、ターナの街のギルドにいた。


「腕の立つ、魔法使いはいないかしら?」


「イセリナさんよ、いることはいるんだが、アンタの実力をワシらは知らねぇ。そんな奴に紹介は出来ねぇ。悪いが出直してくれねぇか?」


 無精髭を生やした小汚ないギルドの店主は、一見華奢に見えるイセリナを見掛けで判断し、冷たくあしらった。

 イセリナはブロンドの髪をかき揚げながら、“またか”と肩を落とした。今までも自分が女というだけで、紹介してもらえないことが度々あったからだ。

 この旅で培ったスキルは山ほどあるが、イセリナ一人の力では限界があった。


「わかったわ……」


 イセリナがこの街を諦めて、次の街を目指そうという時、ギルドは慌ただしく動き出した。


「おい、おめぇら動くな。命が惜しかったら金を出しやがれ!」


 厳つい山賊がギルドを襲ったのである。ギルドにいた連中は、立ち竦み金を出そうとしている。イセリナに取っては、力を見せる絶好の機会だ。


「やめなさいよ。私が相手になるわ」


「なんだこの小娘! 俺様を誰だと思ってやがる。聞いて驚くな……」


 イセリナは山賊の言葉を待たずして、素早く剣を引き抜き山賊を斬りつけた。僅か数秒の出来事である。


「弱い奴に限って能書きを並べるのよね」


「馬鹿な、この俺様が一撃で……」


 山賊は名を名乗る前に、イセリナの重い一撃でその生涯を終えた。そして何事もなかったかのように、ギルドに静寂が訪れた。


「イ、イセリナ。ワシはお前が気に入った。仲間を紹介してやろう」


 イセリナはこのチャンスを活かし、仲間を紹介してもらえるようになったのだ。


「イセリナ、こいつを連れて行け。少々性格に難はあるが、腕は確かだ」


 深々と礼をするイセリナの前に、青く長い髪の男が現れた。


「よぉ~。君がイセリナちゃん? なかなかの腕っぷしのようだね。俺は魔法使いのウッディ。宜しくな」


 その軽そうな男に、イセリナは言った。


「あなた本当に魔法使い? 弱かったら置いていくわよ」


 にやけていたウッディはその言葉を受け止め真顔になると、年季の入った杖を振りかざしイセリナに向け炎の魔法を放った。

 イセリナは剣を水平に構え、炎の魔法を人がいない床へと弾き飛ばした。


「腕は確かのようね」


「イセリナちゃんも中々やるね。惚れちゃうなぁ」


 イセリナは強力な助っ人を仲間に迎え入れ、魔王軍に向け再び動き出すのであった。


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