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時空の歪み

 地下へと続くその階段からは、怪しげな霧が立ち込めていた。イセリナを中心に、四人はその階段を降りていく。


「イシュケルは、髪の色が変わるんですね」


「ま、まぁな」


 イシュケルはイセリナの言葉に照れながらも、タイプチェンジのことは話さなかった。いくら共闘してるとは言え、敵は敵。それはわかっていたが、この三人と一緒にいる空間が心地よく感じられていたのも事実だ。

 イシュケルはそんな考えは“魔王らしからぬこと”と、気持ちを押し殺していた。

 一方、イセリナも同じようなことを考えていた。


――さっきだって、見殺しにすることだって出来た。兜だって奪う気になれば奪えたはず。でも、イシュケルはそれをやらないどころか私達を助けた。ねぇ、何故私達は戦わなくちゃいけないの? と。


 イシュケルとイセリナは立場上、自分の“想い”は内に秘めていた。


「しかし、長い階段だな~」


 延々と続く階段に嫌気がさし、ウッディが愚痴る。かなり下へと降りた筈だが、一向に階段が終わる気配はない。四人は口にしなかったが、イヤな予感がしていた。


――もし、ここが魔シンのねじ曲げた空間だとしたら。


 時を操る魔シンにとって、その程度のことは容易いだろう。そして、その思惑は見事に的中してしまった。

 密かに暁が階段に落としておい

た薬草が、再び視界に入る。

 暁は言った。


「皆気付いてるかも知んないけど、空間がねじ曲げられてるっぽいよ」


 やはりそうかと、他の三人は顔を見合わせた。


「突破する方法を考えよう」


 イシュケルが切り出すと、イセリナ達はそれに同調した。


「でも、思いつかないわ」


「イセリナよ、俺に試したいことがある」


 イシュケルの考えはこうだ。“二手に別れ、一方は下へ、もう一方は上へと昇る”という作戦だ。


「やってみましょう、それじゃウッディと暁は下へ、私とイシュケルは上へ。いい?」


 イセリナの言葉に従い、二手に別れた。



 ――イシュケル、イセリナサイド



「ねぇ、イシュケル……。私達、どうしても戦わなくちゃいけないのかしら?」


 二人きりになったイセリナは、本音をイシュケルにぶつけた。


「わからない……ただ運命には逆らえないと言うことだ……」


「そう……」


 イセリナもイシュケルも、それ以上は言葉にしなかった。


「お~い、イセリナ」


 階段の上から、ウッディの声が聞こえる。その声を受け、イセリナとイシュケルは階段を駆け上がった。

 二組が合流しようとしたその時、四人の前に時空の歪みが現れた。挟みうちすることで、空間を圧縮したのだ。


「思った通りだ。皆、飛び込むぞ」


 イシュケルは躊躇なく、その歪みに飛び込んだ。続けて、イセリナ、ウッディ、暁も時空の歪みに飛び込んだ。飛び込んだ時空の歪みの先には、地下とは思えない広い空間が広がっていた。


「やったぜっ。っても喜んではいられないようだな」


 ウッディが言った通り、目の前には敵、敵、敵。一体でも苦労した魔シンが、うじゃうじゃと群れをなしていたのだ。

 その遥か奥には、他の魔シンとは形状の異なる魔シンもいる。恐らく、そいつが魔シン族の長だろう。


「弱点もわかったし、やっちゃうよ~。僕が相手だ」


 広い空間と弱点がわかったことで、暁は先陣を切り魔シンの中に飛び込んだ。完全にコツを掴んだ暁は、僅かな間に十体もの魔シンを倒した。


「暁の奴……やる。お前にばかりい格好はさせられない。俺も行こうとするか」


 暁に続くように、イシュケルも鉄クズの山を築いた。あれほど苦戦した魔シンだったが、あっという間に二人の活躍で全滅に追いやった。


「次は貴様の番だ!」


 一番奥の朽ち果てた王座に鎮座する魔シンに向かって、イシュケルは指差した。


「お前は魔王だな? 何故、人間ごときに加担する?」


「貴様には関係のないことだ」


「ハッハッハッ。“関係のないことだ”か、面白い。我が自ら相手になろう。我が名は魔シン族特攻隊長『デスナイト』、ここに来たことを後悔するんだな。死ねぃ」


 デスナイトは両手に大剣を持ち、王座から腰を上げた。


「皆、行くぞ!」


 イシュケルを先頭に、四人はデスナイトに攻撃を仕掛けた。

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