共闘への誓い
イセリナが剣を降り下ろすと、魔シンも備え付けの剣で応戦する。どちらも一歩も引かず、剣と剣がぶつかる金属音だけが鳴り響いていた。
援護しようとイシュケルが横から入るが、魔シンは二人が相手でも互角で戦った。
「妙だな……。魔シンの奴、さっきから見てるとあまり攻撃を仕掛けて来ないぞ」
最初に異変に気付いたのは暁だった。
「ハァ、ハァ、しぶといわね」
「ハァ、ハァ、全くだ」
魔シンに大したダメージを与えていないのにも関わらず、イセリナとイシュケルは息を切らしていた。
暁の予想は的中していた。魔シンは、こちらの体力が消耗するのを待ち一気に仕掛けようとしていたのだ。
魔シンは体力の消耗したイセリナ目掛け、ゼロ至近距離まで詰め寄り矢を放った。
「イセちゃん!」
急いで暁が駆け出すも、到底間に合いそうもない。万事休すかと思われた瞬間、窮地を救ったのはまたもこの男、イシュケルだった。
咄嗟にスピードタイプにチェンジし、その矢を右手で掴みニヤリと笑った。
「魔シンよ。魔王を舐めるなよ」
青い髪を揺らしながら、イシュケルはそう言い放った。
魔シンは赤い一つ目でギロリと睨み、標的をイシュケルに切り替える。
イシュケルは嘆きの剣を構え、魔シンの攻撃に備えた。
「ウッディ、魔法はまだか? 援護しろ!」
イシュケルはウッディに援護を要請したが、ウッディからの返事はない。
不思議に思い、ウッディを見ると身振り手振りで何かを訴えようとしている。
「ウッディ! どうした?」
「…………」
ウッディは魔シンの呪いで、声を失っていたのだ。イシュケルは、マデュラの言っていたことを思い出した。
――魔シン族は、呪いや時を操ると。
「クソが。暁、行けるか?」
「空中戦は無理だけど、援護だけなら」
「期待してるぞ!」
会話が終わると、イシュケルは威嚇のような攻撃に入った。ダメージを与えるというより、魔シンの弱点を探すことに専念する為だ。
一方暁はイシュケルに答えるべく攻撃を仕掛けるが、館内では得意の空中戦が使えない為、攻撃力はイマイチだ。
「動力は、何処だ?」
先の見えない戦いに、イシュケルは焦りにも似た感情を抱いていた。
「イシュケル! あの赤い目が怪しいわ」
ようやく息を整えたイセリナが、イシュケルに叫んだ。
「目か……やってみる価値はあるな」
イシュケルは魔シンが怯んだ隙に、その赤い目に嘆きの剣を突き刺した。
「ギギギッ。ググッ」
その瞬間、何事もなかったかのように魔シンは動くのを止めた。
「手こずらせやがって、鉄クズが」
イシュケルの一撃で魔シンは倒せたものの、安心は出来ない。魔シンの残党は他にまだいるはずだからだ。
「皆すまない……。どうやら、あの赤い目を凝視すると呪いに掛かるらしい。気を付けてくれ」
呪いが解け、ウッディは呪いの原因を語った。呪いの原因がわかっただけでも収穫だろう。
魔シンの洗礼を受けたイセリナ達は、更に奥へと進んだ。特に変わった様子はない。
「変ね。魔シンはあれ一体だったのかしら?」
“そんな筈はない”と、イシュケルがイセリナを否定しようとした瞬間、暁が何かを見つけた。
「何だこれ?」
暁が見付けたのは壁に備え付けてあった小さなボタンだ。
「手詰まった状態だ。押してみる価値はあるな」
「あ、馬鹿! よせ!」
「他に方法はなかろう?」
イシュケルはイセリナ達の同意を得ず、そのボタンを押した。すると、地下へと続く階段が姿を現した。




