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ニート生活6ヶ月

久しぶりの投稿よろしくお願いします

 超有名な進学高校に入り、そこで猛勉強し国立大学に入るというのが俺の親の書いたシナリオだった。現に俺の姉さん達はそうだったし俺の妹はその為に頑張っている。うちの家は結構な古い一族で一般的に言うと旧家とか貴族って言感じだ。家族経営の会社をいくつも持っていて、当たり前のように自宅はデカい。

 姉さん達と妹達は正直天才と言うべき存在だった息をするように一位をかすめていくという感じだ。天才の姉妹に囲まれた俺自身はなんのことはない凡才だった。そこそこな進学高校にギリギリ入学し、宿題の多さに嫌気がさしながら毎日を過ごしそれでもこの時はまだ期待されていたんだろう。それはそうだろう姉と妹は天才と言える人種ならば同じ親から生まれた俺が凡才であるはずがないと言うのは親の言い分であり俺が思っていることではないのだ。幼い頃はそれでも期待に応えようと努力した記憶がある。元から凡才としてしか生まれなかったためか俺は見事に国立大学を滑り落ちた。元々親が書いたシナリオに進学以外の選択肢はなく俺は現在ただの穀潰しのいわゆるニート生活を行っている。

「ふう、まぁわかっちゃいたけどさ、ここまで露骨とはね」

 本日12月24日のクリスマスは妹の誕生日である。にも関わらず俺は今自室に寝転んでいる。他の家族は既に妹の誕生日を祝うためホテルの会場を貸切にしドレスやスーツにと豪華な料理に囲まれている頃だろう。その為か既に家には使用人の気配もなく現在家には俺のみとなっている。

「腹減ったな‥‥‥」

 俺はベットの上から起き上がり机の上から封筒を掴む。中身は1万円札が3枚と俗に言う諭吉が3枚入っている。どうやら俺の今日の食事代のようだ。それと同時にこれが意味するのはこれをやるからパーティーには来るなと言うことである。

「外で食うか」

 俺はクローゼットの中から黒いコートを引っ張り出しそのまま羽織ると玄関まで行きスニーカーを履き外に出る。

「グアーさみぃ」

 季節は12月後半冬真っ盛りである。そのまま広い庭園を抜け門を抜ける。家があるのは都内の高級住宅街であり、周りに店が一つも無いというのが欠点である。俺としてはもう少しコンビニが欲しいところだ。まぁこんなところに住むような金持ちがコンビニなんか利用するわけがないのだが、俺は仕方なく近くの商店街まで歩いて1時間の道のりを歩くのだった。
















 私、エリー・シュヴァルツ・エーレンヴルグは現在、警察署にいる。別に私が警察のお世話になるような犯罪を犯したというわけではなくただ、街でひったくり犯が居たのでそのまま関節技を決めて警察に突きだしただけである。

「エリー、おつかれ様もう帰ってかまわないそうよ」

 奥から婦警姿の私の高校時代からの親友の白河歩しらかわあゆむが手を振りながら出てくる。

「お久しぶりです、歩」

 私はいまだに交遊のある友人に歩み寄る。

「エリー、あんたまたそんな黒いスーツなんか着て、クリスマスなんだからおしゃれして町に行こうよ、見た目いいんだし」

「歩、私はそんなもの見せる男はいませんよ」

 私は苦笑を浮かべながら二人で廊下を歩き出す。どうやら彼女もこれから帰りのようだ。

「どっかにいい男居ないかしら、早く結婚して寿退社したいわ」

「警察って寿退社って言うんですかね、それに公務員ですよ、給料良いじゃないですか。私は羨ましいですよ」

 私達はそんな他愛もない話をしつつ歩は更衣室に入り私は廊下で待つ形となった。

 ふと外を見るともう夜だというのに人々で溢れかえっており、この12月24日のクリスマスを思わせる装飾が眩しく照らしている。

「確かに歩の言うとおりですね、本日はクリスマス、私に女らしさがあればこの日は装飾して街に繰り出すべきでしょうね」

 私は洒落っ気も何もない自分の普通のスーツを見て少し溜め息をつく。























 俺こと西園寺謙吾さいおんじけんごはクリスマスに装飾された街で厄介な女に捕まっていた。

「さて西園寺くん、本日はなんで一人で街に繰り出したのですか!!」

 先程から俺の後ろをちょろちょろと歩き俺にこんな質問をするのは高校時代の同級生の八坂美弥子やさかみやこである。

「つか、なんでお前がここにいんだよ」

「そりゃ、私の職場の仕事ですよ、私はいまやジャーナリストなのですから」

 そういやこいつは卒業後、新聞社に就職するみたいなこと言ってたな。だとしてもさっきからこいつ俺の後ろでウザい。

「つかなんだよ、俺になんかようか」

「用がなきゃあなたのような不景気面した男に近づきはしませんよ、これですよ」

 美弥子は1枚の紙を渡してくると俺はそれを読み上げていく。

「何々、クリスマス独り身男に聞く、なぜ自分は聖夜に独りで居るのかってテメェ喧嘩売ってんのか?下手するキレられて終わりだぞ?この企画」

「私は夜の独り身男達に今の自分の現状を再認識してもらいたくてですねって何処行くんですか!!」

 話が長くなりそうなので俺は立ち去ろうとすると後ろからものすごい勢いで追ってくる。

「なんだよ‥‥‥お前」

「さぁ私のインタビューを受ける権利をあなたに上げましょう」

「要らねえよ」

「そう言わずにここでこの企画成功させないとあたし給料でないんですよ」

 美也子がやけに俺に絡んでくるのはこれが理由か、というかこんないかにもクリスマスイルミネーションに彩られた街の商店街に独り身の人間は一人では大体来ないだろうまだショッピングモールの方が可能性がある。第一企画が悪い、もっとシンプルな企画でもいいだろうになぜこの女はこんなろくでもない企画ばかりふと腹のなる音が響く。美也子はバツが悪そうにこっちを見ている。

「えへ・・・・・・・朝から何も食べてなくて」

「たく・・・・・・・お前は」

 俺は美也子の手を握るとそのままショッピングモールに入って行った。












 警察署を歩と共に出た私は歩の誘いで近くのショッピングモールに来ていた。

「エリーこれなんか似合いそうじゃない」

 そう言うと歩は私に深紅のダウンジャケットを勧めてくる。色合いもきれいなものだ。

「着る機会もないでしょうし別にいいですよ」

「エリー、見た目は良いんだからもっとおしゃれしなよ」

 歩はそう言うが今の私は仕事一筋だそのようなことにかまけている時間はない。私は絶対に見つけなばならないのだあの男を私のすべてを奪ったあの男を絶対に見つけねばならないのだから。

「エリー?どうしたの怖い顔してたよ」

「そうですか?」

 いけない歩は関係ないのに私は何を考えている。

「いいえ、昨日あまり寝ていないので疲れが出たようです」

「大丈夫?」

 歩が心配そうに私の顔をのぞき込むので私は目をそらしてしまう。

「よし、エリー、ラーメン食べにいこう」

 歩のその一言に私は呆けてしまった。本当に気が利きすぎる親友です。














 俺と美弥子はショッピングモールのフードエリアのラーメン屋に入ると美弥子を席に座らせると俺はメニューを受け取り、水を飲む。

「あのー健悟さん、私財布がですね‥‥‥」

「金ねえのは知ってる、ここは払ってやるから食えよ」

 どうせ三万も飯代として出されている。正直言って家の家族は金銭感覚がおかしい、いったい三万も渡して何を食うと思っているのやら、普通に食べるなら三万も必要ない。

「まぁ適当に頼めよ、特に制限なんてないからさ」

「健悟さん‥‥‥私の身体が目的ですか‥‥‥」

 わけのわからんこと言う美弥子に俺はデコピンを一発くれてやる。気持ちのいい音と共に美弥子が痛がり悶える。

「つかてめぇの身体なんぞ興味ないわ」

「なんですと、見なさいこのナイスバディーを!!」

「は?うるせぇよ、てめぇのどこがナイスバディーだよ寝言は寝て言え」

 美弥子は身長157センチに胸もそれほどなく結構細身である。

「なんですか、貧乳をなめないでください、こうゆうのが好きという人だってちゃんと居るんですよ!!」

「がー!!うるせぇとっととラーメン頼め、へっぽこ美弥子」

「へっぽことはなんですか、店員さん豚骨ラーメン、大盛と餃子と葱豚飯ください」

「あと俺は豚骨醤油を大盛で」

 二人してラーメンを頼むと二人で水を飲みラーメンを待つ。

「西園寺くん、そういえば知ってますか、この街で最近行方不明事件が増えているのですよ」

「行方不明事件?」

「ええ、先月から行方不明者がどんどん増えてるんですよ、隣のクラスの坂下さん、覚えていますか?」

「ああ、あの素行不良だかで何回か停学食らってたやつだろ?」

 坂下京子《さかしたきょうこ≫高校時代の隣のクラスである意味有名人である。素行不良による停学を数回繰り返し一時期は退学すら危ぶまれたはずだ。

「その坂下さん、先月から家に帰ってないらしいんですよ」

「元から素行不良だろう、今更居なくなったところで特に気にならないだろう」

「こっからが問題なんです、親から警察に捜索願いでてるっぽいんですよ」

「心配しすぎだろ、現代日本で犯罪に巻き込まれる方が少ないだろ」

 俺はそう言って俺はおどけて見せる。目の前にラーメンが出され俺たちは食べることにした。店の扉が開き客が入ってくるがその客に俺は目を奪われる。銀色のポニーテールに縛られた髪、青い瞳、純白の肌に凛々しく整った顔、そして黒と白統一されたモノクロのスーツ、彼女は自分の中で異様とも言える、美しさを持っている。

「‥‥‥」

 俺は思わず言葉を失った。異様な美しさを放つと同時に俺は異質さを感じる。どこか彼女は世界とずれている。
















 私達はラーメン屋の暖簾を潜る。中はそこそこ混んでおり私達は端の席を見つけて座る。

「さてここは豚骨醤油が絶品と聞きます、歩食べましょう」

「私ちょっと油っこいの無理かなぁ」

 私達がメニューを見ていると隣の席におかしな男が座る。茶色いコートにサングラスに帽子にマスクに手袋、おおよそ食事をする格好ではない。そもそも見た目から不審者である。

「怪しいわね、冬だからってあんなに厚着する必要は無いはずよ、なんで誰も通報しないのよ」

「現代の日本人にただ怪しいだけで警察に突き出す人は居ないでしょう、この国は平和ですからね、基本的に面倒は嫌でしょう」

 歩の言葉に私はメニューを見ながら答えると歩は不満げな顔で私を見る。

「もちろん全ての日本人そうとは言いませんが大体の日本人がそうでしょうね、中にはあなたのような正義感の塊のような方もいらっしゃるかもしれませんが、すいません、塩ラーメンお願いします」

「私は味噌でお願いします」

 お互いにラーメン注文すると水を飲むと歩が懐から煙草を口にくわえると火をつける。

「煙草は身体によくないですよ歩」

「しょうがないでしょう、西園寺先輩のお小言を聞いてんだからあたしは今日は妹の誕生日だかで早く帰ったけど、昔から全然変わらないわよあの人のお小言は」

「西園寺先輩ですか、懐かしい名前ですね」

 かつての高校時代の先輩の名を聞くも特に何も覚えないのはあの事件の性だろう。私とあの人はもう。
















「西園寺先輩ですか‥‥‥」

 端の方の席から姉の話題が出てきたことに驚きを覚えるも別にあの人のことだ特になにも覚えない。

「西園寺君、さっきの話し」

「多分姉さんだよ、あの人は刑事課のエリートだし」

 恐らくあの人の同僚か何かだろう、俺の姉西園寺彩子さいおんじあやこは西園寺家の長女である。西園寺の家を継がずに警察官になった人で親戚連中からは変わり者とされている。また、西園寺家の中で唯一家を出て行った人である。

「確か西園寺君のお姉さんって三人居たよね、誰なの?」

「多分彩子姉さんだよ」

 ふと、目の前に湯気の出たラーメンが置かれる。俺前には豚骨醤油、美弥子の前には豚骨に餃子に葱豚飯。

「まぁ食っちまおうぜ」

「そういえばさっきの続き何ですが、行方不明者が増えてるのと同時に妙な噂があるんですよ」

「妙な噂?なんだよ」

「ええ、この街って昔港があったの知ってますか?」

「ああ、たしか旧都のほうにあるやつだろ、それがどうかしたのか?」

「でるらしんですよその港に化物」

「はぁ?化物なんぞ居るわけないだろ」

 俺は美弥子の話に馬鹿馬鹿しさを覚える。第一、旧都にある今は使われていない港は周りをフェンスとコンクリートで覆って今は入れないはずだ。

「うんなこと言ってる暇があったらもう少しまともな企画くらい立てろよ」

 俺達の雑談をラーメンを啜る、今日はこのままこの美弥子と過ごすクリスマスイブとなりそうだ。それもいいだろう。俺のような凡人にはぴったりのものだろう。













 私達のテーブルにラーメンが置かれ歩と共に一斉に啜る。口の中に塩ラーメンの旨味が広がる。ここで突如、歩が固まる。

「どうしました歩、誰か知り合いでもいましたか?」

 歩が私の斜め後ろを指さしたので私も斜め後ろを何気なく向くとそこには有り得ない光景が広がっていた、机の上にはおびただしい数のラーメンの丼が置かれ、その中身を一心不乱に啜る先ほどの不審者がいた。

「あれって何人前あるんでしょう」

「エリー、そいつ指名手配犯!!」

 歩の言葉に店の客全てが振り向いてその指名手配犯を見る。当たり前である、この人達はいずれも日常を生きる人達なのだから。

「エリー!!」

「わかってますよ!!」

 私は姿勢を低くすると指名手配犯に向かい走り出す。

「腕いただきます!!」

 私は指名手配犯の腕を掴むと関節技を決めようとするが突如食事に集中していた指名手配犯をがこちらを見る。

「え!?」

 その瞬間私は宙を舞っていた。信じられないことに私は指名手配犯の片手を掴むと同時に片手で投げ飛ばされたようだ。まずい、この体制じゃあ受け身がとれない。しかもかなりの高い。怪我ではすまないだろう。私は覚悟を決めるが私は何かに身体を支えられる。

「え!?」

 私は見知らぬ少年に抱きかかえられていた。それも世に言うお姫様抱っこというやつである。

「大丈夫ですか?」

 私を抱える黒い髪の少年、これがこんな出会いだったのだ。西園寺謙吾とエリー・シュヴァルツ・エーレンヴルグの始めの出会いであった。






つづく












 

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