この双子が生まれたきっかけ ～悪魔～
急がなくては！ 間に合わない！！！
悪魔は、ある街の川沿いを走っていた。（悪魔が走るっていうのも可笑しいのだが。）それはもう、息を切らして。悪魔に羽はあるのだが、これは「この世」では使えない。つまり、彼は地上（悪魔は上界と呼んでいる。）にいるのだ。
天使も落ちこぼれだった同様、彼もその部類にがっちり浸かっていた。上司には毎日のように怒鳴られ（最近は、軽くあしらわれるようになった。）、閻魔様には見向きもされない。（あぁ、心優しい方なのに…）
彼は悪魔なので、大きな仕事がある。天使のように、微笑んでいるだけではいけないのだ。それは、人の魂を集めることである。これが、実に大変な仕事なのだが。
仮に人が一人、亡くなったとしよう。
その人の魂は身体から、飛び出す。まぁ、追い出されるのだが。そうしたら、悪魔の出番。魂を、そっと回収する。（魂は、繊細なのだよ。）それだけだ。
簡単と思うかもしれないが、そうもいかない。
この回収が大変なのだ。魂は、人の意識と同じものだ。つまり、勝手に動く。悪魔が急いでいる最大の理由が、これだ。飛び出した瞬間は、気を失っている。だが、５分もしないうちに目を覚ましてどこかへ行ってしまうのだ。ちなみに、魂は悪さをしない。人間が「幽霊だ～！」とか「ものが勝手に動く～！」と叫ぶ現象が起こるのは、大体が悪魔のせいである。こうすることによって、人間にお祓いをしてもらうのだ。なぜか、魂にはお祓いがよく効く。（科学者は、「思い込み」というものが働いているといっていた。）魂を外に出してもらい、回収するのだ。これは、カリスマ的な上司悪魔が行う、高度なテクニックだ。（でもこの前、同期がやってたな…）
この悪魔にはそんな器用なことはできないので、頑張って気を失っている魂を追いかけるのだ。
