第二十二話「センター不在の開幕」
「……よし、第7班。……いや、『達磨 feat. W九条院』だったか。……作戦開始!!」
阿久津が笑いを堪えながら合図を送ると同時に、仮想市街地のゲートが開き、不気味なノイズを纏った『未定義者』の群れが姿を現した。
「……行くわよ、九条院。あのバグ(達磨)は放っておいて、私たちがこの拠点を完璧に防衛する。彼に指一本触れさせないのが、最大の屈辱でしょうから」
「同感だ、氷室! 私の雷霆で、未定義者もろともこの不名誉なチーム名を焼き払ってくれる!」
二人のエリートが、怒りを力に変えて鮮やかに術式を展開する。
九条院の周囲には青白い電位が渦巻き、氷室の足元からは絶対零度の霜が広がっていく。
「さあ行くぞ、宇津志! 貴様もセンターなら少しは働――」
九条院が振り返り、達磨に声をかけようとした、その時だった。
「……あ、……あがっ、……がはっ!?」
そこには、颯爽と駆け出すはずの達磨が、首を妙な角度に曲げたまま、地面に膝をついて震えている姿があった。
「宇津志……? 貴様、今度は何のパフォーマンスだ」
「ち、ちが……。今ごろ……来た……。さっきの……地面に突き刺さった……ダメージ……首が、首があぁぁぁ!!」
遅れてやってきた凄まじい衝撃の「揺り戻し」。
数分前、時速200キロ近い速度で頭から地面に突き刺さったツケが、今になって頸椎を直撃したのだ。
「ギギギ……ッ、首が固定されて動かせねえ! まるで全身がフリーズしたままだ……! 窓口ぃ! タイム、一旦タイムだ! 労災だろこれ!」
「ひーっははは! 知るか! 戦場にタイムなんてねえよ。首が回らないなら、そのまま棒立ちで踊ってろ!」
阿久津の非情な声がスピーカーから響く。
「……信じられない。この期に及んで、自爆のダメージでのたうち回るなんて」
氷室が心底軽蔑したような目で達磨を見下ろす。
「ええい、もういい! 氷室、あいつはただの『置物』だと思え! 私たちがやるぞ!」
「了解。……氷結障壁、展開」
二人が前方の敵を迎え撃つために飛び出していく中、チームの「センター」である達磨は、拠点のど真ん中で首を90度に曲げたまま、「あたたた……!」と情けない声を上げ続けることになった。
「……待てよ『W九条院』! 俺を置いてくな! 首が動かなくても、足さえ生きてりゃ……あ痛ててて!!」
絶体絶命(?)の状況で、未定義者の群れが、棒立ちの達磨に向かって殺到し始めた。




