第二十一話「結成、最強(最悪)のユニット」
「……さて、お遊びはここまでだ」
阿久津がニヤリと笑い、モニターを切り替える。そこに映し出されたのは、巨大な仮想市街地のフィールドだった。
「第三種目は『チーム対抗・拠点防衛デバッグ』。ここからは個人戦じゃない。三人一組のチームで、仮想の『未定義者』の群れから拠点を守り抜く、実戦形式の演習だ」
「チーム……戦?」
九条院が嫌な予感に眉をひそめた瞬間、モニターに自動選出されたチーム分けが表示された。
【第7班:宇津志 達磨 / 九条院 凱 / 氷室 零】
「なっ……!? 阿久津先生、何かの間違いです! なぜ私と氷室が、このバグ野郎と同じ班なのですか!」
「文句はシステムに言え。……お前らの『完璧な論理』が、宇津志という『最大級のノイズ』を抱えた状態でどこまで機能するか、俺が見たいだけだ」
阿久津はタバコをくゆらせ、達磨に視線を送った。
「おい、宇津志。リーダーはお前に任せる。チーム名を登録しろ。カッコいいやつをな」
「リーダー? 俺が? ……よっしゃ、任せろ窓口!」
達磨はニヤリと笑い、タブレットの入力欄に迷いなく文字を叩き込んだ。
「決まったぜ。これからの俺たちのユニット名は――」
達磨は九条院と氷室の肩に(嫌がるのを無視して)強引に腕を回し、親指を立てて言い放った。
「『達磨 feat. W九条院』だ!!」
一瞬、グラウンドが凍りついた。
「……は?」
氷室が、これまでで最も低い、地を這うような声を出す。
「『W九条院』だと……? 宇津志、貴様、私だけならまだしも、氷室まで私の名前に含めるとはどういうつもりだ! そもそもなぜ私が『feat.(客演)』扱いなのだ!」
「え? だって九条院、お前ら二人とも『綺麗でエリート』って感じでセットじゃん。氷室も九条院も名前長いし、まとめて『ダブル九条院』の方が、バックダンサーっぽくて収まりがいいだろ?」
「バッ……バックダンサーだとぉぉぉ!!」
九条院の叫び声に、周囲の生徒たちが腹を抱えて笑い転げる。
「……宇津志達磨。あなた、今すぐその名前をデリートしなさい。さもないと、拠点を守る前にあなたの心臓を絶対零度で停止させるわよ」
氷室の周囲から、本気の殺気が混じった吹雪が吹き荒れる。
「まあまあ、細かいこと気にすんなって! センターの俺がバシッと決めるから、お前らは後ろで綺麗にキラキラしてりゃいいんだよ。ほら、行くぞ『W九条院』! 世界デビューの第一歩だ!」
「行かぬ! 登録を消せ! 私を『九条院A』にするな!」
阿久津が抱腹絶倒しながらスタートのブザーを鳴らす。
「第7班、チーム『達磨 feat. W九条院』、出撃! ……頑張れよ、バックダンサー諸君!」
「先生までえぇぇ!!」
不満爆発のエリート二人と、ノリノリの達磨。
史上最も噛み合わないチームが、仮想戦場へと放り出された。




