表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
編術師  作者: Akita
20/26

第二十話「逆転のヘッドスピン?」


「フィニッシュだぁぁぁ!!」


空中の瓦礫をステップで踏み抜き、ピンク色の流星となった達磨が、ゴールゲートをマッハに近い速度で通過した。


『計測終了:ランクF、宇津志 達磨。記録――18秒45(※障害物競走歴代最高記録)』

しかし、栄光の記録が表示されたのと同時に、無慈悲なシステムボイスが脳内に響き渡る。


『――連鎖終了。物理固定フリーズを開始します。……カウント:3.00秒』


「……あ、詰んだ(二回目)」

カチッ、という音と共に、達磨の全身が空中で「逆さまの状態」のまま完全硬直した。

重力と慣性は、固まった達磨を容赦なく地面へと叩きつける。


ドォォォォォン!!

凄まじい砂煙。

グラウンドのど真ん中に、達磨は頭から垂直に突き刺さった。足だけが天に向かってピンと伸びているその姿は、まるで現代アートか、あるいは不吉な墓標のようだった。


「……う、宇津志ぃぃ!!」

九条院が悲鳴のような声を上げて駆け寄る。


「死んだ……流石に今の衝撃は、脳の論理回路ごと粉砕されたはずよ……」

氷室も顔を青くして立ち尽くす。


だが、三秒が経過した瞬間。


「ぷはっ! 砂が、砂が口に……!」

突き刺さったまま、達磨の足がバタバタと動き出した。彼は首の力だけで地面から自分を引き抜くと、髪についた土を払いながら、目を輝かせてとんでもないことを言い出した。

「……おい、今、俺、閃いちゃったぞ。これだ、これだよ!」


「……は?」

心配して損をしたという顔の九条院を無視して、達磨は興奮気味に続ける。


「今の衝撃と、この突き刺さった時の『フリーズ』! これを逆に利用して、頭を起点にした新しいダンスムーブを編み出したら……これ、YouTubeで一気にバズるんじゃね!? 世界中のダンスファンが度肝を抜くぞ。BTSとかTWICEとか余裕で超えて、世界一のダンサーになれるわ!」


「…………」

グラウンドに、今日一番の沈黙が流れた。

歴代最高記録を出し、死にかけておいて、第一声が「アイドル超え」の野望。


「……馬鹿だ」

十文字魁が、ゴミを見るような目で呟いた。


「……救いようのない、計算違いの馬鹿だわ」

氷室がこめかみを押さえて俯く。


「っ、貴様ぁぁ! この国立術式編纂学校を、バズり動画の撮影スタジオか何かだと思っているのか! 術式をそんな低俗な目的のために――」

九条院が顔を真っ赤にして説教を始めようとしたその時、背後から阿久津の、腹の底から絞り出すような笑い声が聞こえてきた。


「ひーっ……くくく! いいぜ宇津志! BTS超えか、面白いじゃねえか! お前、それ動画撮る時は俺をカメラマンに指名しろよ!」

「おっ、話がわかるじゃねーか!阿久津先生! ギャラは再生数に応じて相談な!」

阿久津と達磨が親指を立て合う中、エリートたちのプライドはもはや原型を留めていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ