第十九話「空中ステップ、連鎖する桜の残像」
十文字の『論理爆弾』によって粉砕されたブロックの残骸と、消滅しかけてバグ化したミチルのコピーが、グラウンドに土砂降りのように降り注ぐ。
他の生徒たちが瓦礫を避けるために足を止める中、達磨だけが不敵に地を蹴った。
「――よっしゃ、曲が変わったな。……ここからは俺のソロステージだ!」
達磨が跳躍する。向かう先はゴールではなく、空から降ってくる巨大なブロックの破片。
「宇津志!? 何を考えている、自殺志願者か!」
九条院の叫びを背に、達磨は空中で体を鋭く捻った。
『――加速段階:一速。……空中座標を打撃対象に固定』
落下する瓦礫の表面を、達磨の右足が鋭く叩く。バキィッ! という衝撃音と共に、瓦礫は粉砕される代わりに、達磨を上空へ押し上げる「踏み台」へと変貌した。
「――二速!!」
次は、ミチルのコピーが消えかけた「ノイズの塊」を左足で捉える。
本来、実体のないバグの破片。しかし、達磨の『桜花連鎖乱舞』は、そこに「打撃」を成立させることで、無理やり物理的な反発力を引き出す。
空中を歩いているのではない。
落下する無数のゴミを、超高速のダンスステップで叩き続け、その反動だけで高度を上げているのだ。
「……なっ、空中で術式を連鎖させているだと!?」
十文字が驚愕に目を見開く。彼の『論理爆弾』が壊せば壊すほど、達磨にとっては「足場(打撃対象)」が増えていくという皮肉。
「三速!! ――加速、最大!!」
『――全事象への干渉レベル:極。……空間の慣性を無視します』
ピンク色の電子桜が、空中に光の道を描き出す。
一歩、二歩、三歩。
滞空時間はすでに限界を超えているはずなのに、達磨は落ちるどころか、爆風を切り裂きながらさらに加速していく。
「おらおらおらぁ!! どけよエリート様方、特等席は譲らねえぞ!」
空中で回転を加えながら、達磨はミチルの頭上を、十文字の爆炎を、そして九条院と氷室の計算を、文字通り「飛び越えて」いった。
その姿は、舞い散る桜の中を駆ける一閃の雷光。
パズルを解くのでもなく、消去するのでもなく。
「落ちてくるゴミすら、俺を輝かせるための演出だ」と言わぬばかりの傍若無人なステップ。
「……あいつ、マジかよ」
阿久津が思わず煙草を落とす。
空中を縦横無尽に駆け巡り、最短距離でゴールゲートの真上へと到達した達磨。
その眼下には、呆然と空を見上げるエリートたちの顔があった。
「――フィニッシュだ!!」
達磨は空中で最後の一撃を空間に叩き込み、ピンクの火花と共にゴールラインへ向かって一直線に急降下を開始した。




