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編術師  作者: Akita
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第十五話「無自覚な怪物と、折れたプライド」


「……3.00……2.00……1.00。……ふぅ、やっと動けるぜ」


全身の硬直が解け、達磨は砂まみれの顔を上げて「よっこらしょ」と立ち上がった。鼻血を少し流し、ジャージはボロボロだが、本人は至ってケロっとしている。


達磨は、すぐ横で石像のように固まっている九条院と、眉間に深い皺を寄せたまま沈黙している氷室を見上げた。


「……? どうしたんだよ二人とも。そんな怖い顔して」

達磨は頭の砂を払いながら、純粋な疑問を口にする。


「いや〜、やっぱり俺みたいな『ノリ』で走るタイプじゃ、7秒台が限界かぁ。……あ、もしかしてエリート様方は、もう3秒とか切ってんの? もしかして1秒とか? 瞬間移動的な?」


「…………っ!!」

九条院の顔が、怒りと屈辱で沸騰したヤカンのように真っ赤になった。


「ふ、ふざけるなッ! 3秒だと!? 物理法則を何だと思っている! 光速に近い演算を行っても、質量のある肉体を加速させるには限界があるんだ! 貴様の出した『7秒12』が、どれほど異常な数値か分かって言っているのか!?」


「え、そうなの? いや、九条院の雷とか、氷室の氷のレールとか、もっとこう……シュパパパーンッ! って行くもんかと思ってたからさ。俺、地面殴るのに必死で、自分のタイムが速いのか遅いのかよく分かってねーんだわ」


達磨は悪びれもせず、屈託のない笑顔で笑った。

彼にとっては、九条院たちの「美しい術式」の方が、自分の「泥臭いステップ」よりも上位にあるという先入観がまだ抜けていないのだ。

氷室が、震える声で付け加える。


「……嫌味なら、最高に成功しているわよ、宇津志達磨。……人類の最速記録を軽く塗り替えておいて、3秒じゃないから遅い? ……あなた、自分のしていることがどれだけ周囲の『努力』を侮辱しているか、自覚しなさい」


「えぇ……。褒めたのに怒られるのかよ。理不尽だなぁ、エリート様は」


達磨が肩をすくめると、朝礼台から阿久津の爆笑が再び聞こえてきた。


「ひーっ、ははは! 3秒か! いいぜ宇津志、お前最高だ。九条院、お前もいつまでも100年前の教科書みたいな数字で満足してんじゃねえぞ。Fランクのバグ(二酸化炭素)に鼻で笑われてんだ、少しは必死になれ」


「阿久津先生!!」

九条院の絶叫がグラウンドに響く中、阿久津は涙を拭いながら次なる地獄を告げた。


「……さて。予想外のエンタメを見せてもらったところで、第二種目に移るぞ。……次は、身体能力だけじゃどうにもならねえ。編術師の真骨頂、『空間コンパイル能力』を試させてもらう」


阿久津が指を鳴らすと、グラウンドの100m先、空中に無数の「浮遊する立方体グリッチ・ブロック」が出現した。


「第二種目は『立体障害物競走』。……ゴールまでに配置されたバグの塊を、いかに迅速に『解体』して進むか。……宇津志、お前の『殴れば解決』が、複雑な論理パズル相手にどこまで通用するか、見ものだな」


達磨は、空中に浮かぶ幾何学的なブロックを見上げ、少しだけ面倒くさそうに首を鳴らした。

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