表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
編術師  作者: Akita
13/14

第十三話「地面を「殴って」走る」


「……さて、最後だ。Fランク、宇津志達磨。位置につけ」

阿久津の声が響き、達磨は氷室が残した冷気が漂うスタートラインに立った。

しかし、彼は走る構えを取る代わりに、顎に手を当てて深刻な顔で考え込み始めた。


(……待てよ。落ち着け俺。まず復習だ)


達磨は脳内で自分の「仕様書」をめくる。

術式:『桜花連鎖乱舞チェイン・ブロッサム』。

効果:3秒以内に「打撃」を繋ぐことで加速・強化される連鎖型。

リスク:終了後、3秒間の完全フリーズ。

(……「打撃」を繋げば加速する。……でも、殴る相手がいねえ!)


屋上で未定義者アンディファインドをボコボコにした時は、殴るたびに体が軽くなった。だが、今は目の前に敵はいない。あるのはただの直線コースだけだ。


(え、これ……。俺、ただジャージ着て100m走るだけの普通の人じゃね? 術式使えなくね?)


「おい、宇津志! 何を突っ立っている! 走れないなら早々に棄権しろ!」

九条院が痺れを切らして叫ぶ。


観客席からも、容赦ない嘲笑が浴びせられた。


「おいおい、Fランクはスタートの数式すら組めないのかよ」


「恥をかきたくないからフリーズしてんのか? 術式使う前にな!」


笑い声が広がる中、氷室だけが冷ややかに達磨の「混乱」を見抜いていた。

「……無知とは罪ね。対象を定義できなければ、術式は起動すらしない。あなたはただの『一般人』に戻ったのよ」


しかし。


四面楚歌の状況で、達磨の脳裏にある光景が浮かんだ。

それは、何度も何度も練習したダンスのステップ。床を蹴り、床を突き、床と反発することで空を舞う、あの感覚。

(……いや、待てよ。打撃ってのは、拳や足で対象に衝撃を与えることだよな?)

達磨は視線を落とし、自分の足元――氷室が凍らせた地面を見つめた。


(だったらよ。「地面を蹴る」のを「地面を殴る(打撃)」ってことに書き換えりゃ、それは連鎖チェインにカウントされるんじゃねーのか……?)

ダンスにおいて、床は敵じゃない。だが、最大の反発を生む「打撃対象」でもある。

達磨の口角が、不敵に吊り上がった。


「……あー、お待たせ。ちょっと設定の変更コンパイルに手間取っちゃってさ」

達磨はスタートラインで、これまでの二人とは全く違う、腰を深く落とした異様な構えを取った。


『――適合個体を検知。固有ID:UTSUMI_TATSUMA。プロトコル、再定義を開始します』

脳内に、あの無機質な声が響く。


「……設定変更だ。術式対象ターゲットを『正面の敵』から『足元の座標(地面)』に変更。打撃判定を『接地時の踏み込み衝撃』へ移行しろ!」

『了解。……論理を上書き。……術式:桜花連鎖乱舞チェイン・ブロッサム、接続完了』


達磨の周囲に、バチバチとピンク色の電子桜が舞い上がる。

その異様なプレッシャーに、笑っていた生徒たちが一瞬で静まり返った。

 

「……阿久津先生! いつでもいいぜ。俺の『一曲目』、ぶちかましてやるわ!」

阿久津は、面白そうに目を細めて号砲の引き金を引いた。

ドンッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ