表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

〈現在〉⑶

「今日は楽しかったわね、涼きゅん!」


「そうだな、由衣きゅん! また来ようぜ!」


 由衣と涼はるんるんで店を後にする。


 イチャイチャした甲斐あって、帰る頃には後輩ズも二人が付き合っていると納得げんなりしていた。


「先輩たち、本当に付き合っていたんですね。途中、何度も逃げたくなりましたよ」


「疑ってすみませんでした。まさか、ここまでバカ……ラブラブなカップルだったなんて」


「そうなの、そうなの!」


「分かってもらえて良かったよ!」


「じゃ、最後に二人でキスしてもらえますか?」


 その二文字に、由衣と涼の笑顔が固まった。


「え?」


「き、キス?」


「ほっぺじゃダメですよ? ちゃんと、マウストゥマウスでお願いします」


「チュー(ネズミの顔真似)」


 さすがに動揺した。


 二人はキスをしたことがない。「さすがにそれは本命と」と、人前では顔を重ねたり、腕や鞄で隠したりして、キスしているように見せかけてきた。


 動揺を隠せない二人に、孝之と麻央は「やはり偽ップルか」と期待した。


(さすがに、キスはしていなかったか。僕は間接キスなんかで誤魔化されないぞ!)


(本当に付き合っているなら、キスなんて簡単にできるはず……でしょう? 先輩)


 由衣と涼は動揺していた……()()()キスをしてもいいのかと。


(いいの?! 野田くんとキスしても?! ありがとう、二人ともー! 明日、なんか奢ってあげる!)


(よっしゃ! 柴咲さんとキスできる! フリとはいえ、さすがにガチでキスしたいとは言えなかったんだよなぁー!)


「んもー、しょうがないわね! 伊豆くんと美国さんにだけ、特別に見せてあげるのよ?」


「え?」


「そうだぞ? 二人が頼むから、仕方なくやるんだからな! あー、恥ずかしいなぁー!」


「え? え?」


 由衣と涼は言い訳を口にしつつ、唇を重ねる。先ほど食べたクレープの甘い香りがした。


 予想外の展開に、言い出しっぺの孝之と麻央のほうが耳まで真っ赤になった。


「分かりました! 分かりましたから!」


「末永くお幸せに! 荷物はお宅まで運んでおきまーす!」


 孝之と麻央は荷物を抱え、その場から逃げ出す。


 二人がいなくなったのを確かめ、由衣と涼は唇を離した。本心を隠そうとして、自然と口数が増える。


「だましやすい後輩で助かったー! まさか、キスまでさせられるとは思わなかったけどな!」


「ね。あ、ファーストキスだったら、ごめんなさいね?」


「いやいや! さすがに高校生にもなって、ファーストキスはありえないだろー!」


(……私は初めてだったけどね)


(……俺は初めてだったんだけどな)


「……ねぇ、練習のためにもう一回やってもいい?」


「お、おぉ。いいよ」



  ♦︎



 人通りがないのをいいことに、キスの「練習」を続ける二人。


 その様子を、後輩ズが電柱の裏からのぞき見ていた。逃げたフリをして、電柱の裏に隠れていたのだ。


「あれはガチだわ」


「うん、ガチ。あれで付き合ってなかったら意味分かんない。諦めよう」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ