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この恋は百合の皮をかぶっている  作者: しろうさぎ。
風に乗せた一歩
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9月に並ぶ二人の足跡

 夏休みが終わり、三週間ぶりに澪は通学路と学校の日常へ戻ってきた。

 駅で再会したひなたや詩乃との会話に、変わらない距離感を感じて胸が和らぐ。

 教室ではみさきとも合流し、久しぶりの四人の空気が少しずつ戻っていった。

 担任から体育祭が二週間後だと告げられ、クラスに期待とざわめきが広がる。

 昼休みの話し合いで、それぞれが出場種目を決めていく中、ひなたは澪を二人三脚に誘った。

 澪はその誘いを受け入れ、秋の始まりとともに新しい日常が静かに動き出す。

 秋の気配が少しずつ近づいてきた九月の午後。


 体育の授業は、体育祭に向けた練習にすっかり変わっていた。グラウンドのあちこちで歓声が上がり、風に混じってホイッスルの音が響く。


(みお)とひなたは用意された紐を手に取った。 


下を眺めると、ひなたは紐で互いの足を結んでいる。こそばゆい感じがなんだか心地よい。 


「澪ちゃんキツく無い?」


「うん、大丈夫だよ」


ひなたは嬉しそうにしながら、立ち上がる。


二人は少し息を吸って、合図のタイミングを取った。


「せーのっ!」



 ふたりで歩幅を合わせながら少しずつテンポをつかんでいく。何度か繰り返すうちに、足の動きが自然と揃いはじめた。

「いち、に、いち、にっ――!」

土の上を、ふたりの足音が伝わる。


 そして息が合って走れるようになった瞬間、ひなたが笑った。その笑顔に、胸の奥が不意に熱くなる。


「ね、今の完璧じゃない?」


「うん、……悪くなかった」


「よし!次はもっと速くいこ!」




 夕方の風が少し冷たくなってきて、髪がなびく。周囲ではクラスメイトたちがリレーや玉入れの練習をしていて、どこも笑い声が絶えない。その中にいる自分たちも、自然と笑っていた。


 ――夏休みが終わっても、こうして笑い合える。そんな当たり前の時間が戻ってきた事が、少しだけ嬉しく思えた。


 体育祭当日、校門をくぐった瞬間に、いつもの学校とはまるで違う空気を感じた。グラウンドにはテントがいくつも並び、白線で引かれたコースの上を先生たちが確認して歩いている。


いつもより早く登校した生徒たちは、体操服姿で走り回ったり、わいわいと話していて、空気の中には緊張と高揚が入り混ざっていた。


「うわぁ……体育祭の日って感じだね」

隣でひなたが、まぶしそうに空を見上げる。九月の陽射しはまだ強いけど、風は心地いい。


「おーいみんな、今年は赤組だぞー」

クラスの体育委員の子が赤いハチマキが入った段ボールを持ってきた。


「他のクラスはどんな感じ?」

みさきがハチマキを受け取り聞く


「今年は、C、D、E組が赤で、A、B、F組が白だよ」


澪はハチマキを結びながら不思議そうに呟いた。

「こんなギリギリに決まるんだ」


「そうそう、当日に発表なんだよね」 赤いハチマキを結んだひなたの横顔が、いつもより少し大人びて見えた。


 周りを見渡せば、他のクラスの生徒たちも同じようにハチマキを締めていて、色の違いで全体が鮮やかに分かれている。普段は何気なく過ごしている校庭が、まるで別の場所みたいだった。


「ただ今より開会式を行います。生徒の皆さんは整列してください。」

マイク越しの声が響き、生徒たちが次々に整列をはじめる。


風が吹いて、赤と白の旗が大きくはためいた。赤いハチマキを強く結び直しながら、私は静かに息を整える。


――いよいよ、体育祭が始まる。

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