表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この恋は百合の皮をかぶっている  作者: しろうさぎ。
向日葵への出航
20/41

待ちに待った夏休み

勉強会をした四人はついにテスト当日を迎えた。

クラスは様々な感情が飛び交っていて少し異質な感じがした。

そんな中始まったテスト。皆、自分の出せるものを出し切り最後のチャイムを聞いた。

これから始まる夏休みに胸が高鳴る。

 夏休みが始まって数日。(みお)はリビングでごろりと寝転び、エアコンの風に当たりながらスマホをいじっていた。宿題に手をつける気力もなく、ただ時間だけがだらだらと流れていく。


そんな時、不意にスマホが震えた。グループチャットに「ピコン」と新しいメッセージが表示される。


misaki

《みんなで海に行かない?》


しの

《なら旅行みたいに何泊かしない?》


misaki

《旅行!いいじゃん絶対楽しいって!》


ひなた

《行く行く!》


澪は少し画面を見つめてから、胸が高鳴るのを感じつつ返信を打った。


《楽しそう私も賛成》


しの

《じゃあ具体的にいつ行くとか決めよ》


ひなた

《集まって話したほうが早くない?》


misaki

《なら明日リリィモールのフードコートはどう?》


みさきの一言で場所も即決。四人は夏休みの大きな計画を立てるために集まることになった。澪は退屈な夏休みを抜け出し、胸の奥で高鳴るような――「本当の夏休み」が今始まろうとしていた。




 翌日、リリィモールのフードコート。テーブルの上にはポテトとジュース、それにみさきとひなたが勝手に頼んだナゲットまで並んでいる。


「じゃあまずは、行き先決めないとだよね。海とはいえ……どこにする?」

みさきがスマホで調べながら聞く


向日葵(ひまわり)リゾートとかいいんじゃない?」

ひなたがポテトをひょいとつまむ。


「確か、ホテルとか温泉もあるって聞いたことあるしいいかもね」

詩乃(しの)がすかさず補足する。


「これか、最近出来た施設だよね。見て!すっごい海綺麗だよ!」

みさきは向日葵リゾートのホームページを見せる


向日葵リゾートパーク、通称向日葵リゾートは、向日葵(とう)に出来たリゾート地で観光はもちろん、ホテルや温泉などの施設も充実している今話題のリゾートパークなのだ。


「へえ、向日葵リゾートって海水浴だけじゃなくて、いろんなこと出来るんだね」

澪は興味津々に話を聞く。


「そうそう! プールもあるし、夜は花火もできるんだって! 夏のフルコースって感じじゃない?」


「だったら一泊か二泊くらいで行きたいよね!」


「一日じゃ絶対足りない!」

みさきとひなたは二人でワイワイ盛り上がっている。その二人を横目に詩乃と澪は


「日程は早めに決めておかないと、夏休みは混むだろうし……」


「なるほど……。じゃあ次は日程と予算だね」


澪は胸の奥に高揚感を抱いた。これから始まる夏に、少しずつ現実味が帯びていく。





 一通りの予定がまとまり、テーブルの上のポテトはほとんど姿を消していた。


「じゃあホテルは詩乃が見てみるってことで、交通手段は私が調べとくね!」


「うん、任せて」


「わー、楽しみすぎる!」


三人のやり取りを聞きながら、澪はストローをくるくる回す。


(あ、そういえば……水着どうしようかな。流石に学校のを着るのは……)


そんな考えがよぎり、頬がほんのり熱を帯びる。


すると、ひなたが唐突に手を叩いた。

「そうだ!せっかくだし、今からみんなで水着買いに行かない?」


「おっ、それいいじゃん!」

みさきが即座に乗る。


急にこちらへ向けられた視線に、澪はどきりとした。


「えっ、い、今から……?」

わちゃわちゃと盛り上がる二人の顔を見て、断るという選択肢はすっかり飲み込まれてしまった。



 

 売り場には、色とりどりの水着が並んでいた。ポップなものからシックなものまで、見ているだけで眩しくて、澪はどこから手をつければいいのかわからず足を止める。すると隣で、ひなたがすぐに何枚もラックから抜き取っては鏡の前にかざしていた。


「澪ちゃん、もう決めた?」


「ううん……こんな感じにしようかなって」


澪が手に取っていたのは、紺色の落ち着いたビキニ。少しだけフリルがついていて、大人っぽさと可愛さの間という感じで、無難かなと自分では思っていた。


「ふーん、なるほどね」

ひなたはちらっと澪の手元を見て、口元をにやりとさせる。


「でもさ、澪ちゃんには、こっちの方が似合うと思うんだよね!」


差し出されたのは、水色でもっと明るく、リボンまでついた“かわいい全振り”のデザイン。澪は思わず目を瞬かせた。


「……私が着て似合うかなぁ」


「絶対似合うって! わたしが保証してあげる!」


 力強く断言され、澪は戸惑いながらも心の奥が少しくすぐったい。


――似合うって、そんなふうに言ってもらえるなんて。



 少し間を置いてから、澪も逆に棚を探し、白のシンプルで洗練された水着を取り出す。


「じゃあ今日は私からも。ひなたは、こんなの似合うと思うけど」


「え、これ?……おー、確かにわたしじゃ絶対選ばないかも」

鏡にかざしたひなたは、ちょっと照れ笑いを浮かべる。


「でも、なんか大人っぽいね。澪ちゃんが選んでくれたなら、挑戦してみてもいいかも」


 ふたりは目を見合わせて笑い合う。気づけば、試着室へ持ち込む候補が山ほどになっていて、澪は思わず苦笑した。


「こんなに持ち込んで大丈夫かな」


「大丈夫大丈夫!夏休みなんだから、悩むのも楽しまなきゃ損でしょ」


 わいわいと盛り上がりながら、最終的に「どれを買ったかは当日まで秘密」というルールが自然と決まり、ふたりは互いにどんな水着を選んだのか胸にしまったまま店を出るのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。感想などいただけると、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ