表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常と世界の狭間の中で  作者: 水白ウミウ
第1章 世界の隅の静かな家
2/5

01 接続世界

 一見すると変わらない世界に見える、そして二度と元いた世界に戻れない者がいる

 「忘れてはいけない、元いた日常を。忘れれば今この世界が日常となる」

 自ら望むにせよ望まずにせよ、世界に自身を侵食されてしまう事を忘れてはならない。

 

「もう少し、あの先を曲がったら我が家だよ!!」

 

 見えてこそいた別世界に初めて足を踏み入れた、だが想像していた景色とは違って薄暗い平らな道があるだけだった。景色とい景色は何も見えず、風も吹かず、匂いも無い無機質な空間。彼女に手を引かれ歩かなければ方角も見失い元来た道を戻れるか分からない。歩く周囲だけが僅かに照らされるがこの世界の普通なのか、それとも彼女のおかげなのか分からないが。

暖かく握られたその手を離さないよう、彼女の大きめな歩幅に必死について行った。そして気づけば出口であろう輝く光が見えた。 

 

 この出口の先、きっとそこには見たことない景色が広がっている。そう期待せずにはいられなかった。

 

「着いたよ、これから君と私が住む家だよ。遠慮しないでね」


 少しの不安とそれ以上に胸を高鳴らせながらそこで見た物は、鬱蒼と木々に取り囲まれながら建つ家そのままで、ただ落胆した。

 決してこれから二人で住むことになろう家が小さく狭くボロボロだとかではない、ただ日本の田舎へ行けば1軒や2軒何処にでありそうな日本家屋であるということ。言ってみれば現実味、規定していた日常とかけ離れた世界ではなかったということ。

 

「あの……先ほど通った道は」

  

「ん……あーあれかい? あれはただの隧道……簡単に言えば世界の境界を繋ぐトンネルかな」

「あともし勘違いさせたかもしれないけど、隧道は必ずしも別世界と繋がっているとは限らないよ。繋がったり切れたり……さっきのは別の場所、ここは日本のとある人里離れた山奥に繋がる唯一の道だね」

 

 彼女は目を閉じながらコクコクと首を縦に振りながら、先ほどの隧道と周囲の森、そして家を指さし場所のことこれまでのを生活事を説明してみせる。そして彼女はここで初めて名を名乗る「彷徨う森の魔女 サレリア」と呼ばれると。

 

「大丈夫よ、君の名前はもう知っているわ。悠人、これからよろしくね!!」


 サレリアはずっと握っていた左手で自身の胸元にたぐり寄せ、優しく頭をポンポンと叩いてから撫でてくる。正直、魔女と名乗りはしたが彼女が一体何者でどんな事が待ち受けているのかは分からない。ただか彼女の言った『楽しく愉快な世界』を求めここで一人過ごしていたのかと思うと、自身と多少なりとも重ねてしまうことで胸が苦しくなった。

 

「ん、体冷えちゃったかしら。ほら入りましょ」


 もっと彼女のことを知りたいと思う、躊躇することなくサレリアに導かれ屋敷の中へと入るのであった。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ