レアメタルの手掛かりを掴め
死霊の館………もとい、栄光の鷹に泊まった翌日。
俺はこの館のオーナーであるオーランドにレアメタルの所在を聞いた。
そもそもこの旅の目的はレアメタルの入手だ。王都観光ツアーの客共のように観光に来たわけではない。
エリオットに頼まれたレアメタルの大きさについては指定されていないが、ワープマシンの原動力なんていう大層な代物に使うのだ。きっと大きけりゃなんだって良いんだろう。とりあえず大きいモノを探してみることにする。
わざわざ大きいモノを狙っているのは何も大きさによって報酬を変えるかも………というのを期待している訳ではない。
ただ単純に小さいモノを持っていって『これじゃ足りないから、もう一回行ってきてくれ』何て言われるかもしれないからだ。
そんな事を言われた日には、依頼人のエリオット・スミスを斬り殺して国外逃亡してしまうかもしれん。
「レアメタルですか?………昔は鉱山関係者が利権を持ってましたが、今では教会が利権を握ってまして、鉱山の一般公開はされないようになったんですよ」
「いや、別に鉱山に観光へ行くわけじゃないから。普通にその辺の店で売ってないのか?」
「それが………レアメタルの流通に関しても教会が握っているので普通の店じゃ売ってないですよ。教会関係者が運営する店でのみ手に入ります。勿論、そういった店は一般人が買えるような所ではありませんが」
「何それ?鉱物とか教会関係ないじゃん」
「そう言われましても、私には分かりかねますよ………とにかく、何か特別な伝手でもなければ手に入りませんよ。”レア”メタルの名前のとおり、産出量が少なく珍しい物ですからそうそう手に入りませんし」
「うが~!!エリオットめ!
めっちゃメンドクセー仕事押し付けやがって!!」
俺は今ここに居ないエリオットに呪詛を送った。それはもう熱心に送った。この熱い想いを届けてやりたい。憎しみを込めて。
「お、お客さん?………その顔で人が殺せますよ?」
エリオットが若干引き攣った顔で俺に言った。いやいや、今の俺はマジだから。本当に。
「………とはいえ、一度依頼を受けちまったし何とかして達成しないとなぁ」
ため息を吐きながら、館を後にした。
適当に町中を散策しているとキースを発見した。
「おい、そこのアホンダラ」
俺が話しかけるとパッとこちらに振り返るキース。
「おう、ジェラルドか。どこに野宿したんだ?お前」
「お前こそ、どこで野宿したんだよ。俺はホラーハウスが豪邸に見えるほど酷い宿に泊まったんだが」
「俺はたまたまキャンセルが出た宿に泊まったよ。部屋とか食事はやっぱり王都で泊まったカレンさんの宿が一番だな~」
そう言ってなんでもないようにキースはホザいたが、今こいつは聞き捨てならないことを言った。
「お前、野宿したんじゃないのか?」
「はぁ?俺が野宿なんぞするわけないだろーが。何だかんだ言って俺は”運”はそこそこ良い方だからな!とはいえ、キャンセルが出たのは一日だけだから、次はお前ん所の宿にでも泊まるさ」
胸を張って答えるキース。見ていて不快な気分になる。キースの言う運とは、運は運でも”悪運”だろうが!!
俺はここでキースを殴るのを我慢し、その分の怒りをエリオットの呪詛に変えながらレアメタルの情報についてキースにたずねた。
「お前、まさかここに来た理由忘れてないよな?お前が集めたレアメタルの情報って何があるよ?」
「初っ端から俺頼みかよ、まったく仕方ねぇなー」
ニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んでくるキース。エリオットの呪詛に変えていた憎しみが一瞬でオーバーフローした。
「死ね!キース!」
俺はキースの足元を引っつかんでキースの天地を逆さまにしてやる。そしてそのまま地面めがけてキースの脳天を叩き付けた。
「おぶぐぇ!」
ツームストンパイルドライバーを喰らったキースはそのまま大地に沈んだ。
「あ、情報聞く前にノしちまった。
でもまぁいいか。どうせ期待してねぇし」
いつも通りキースを叩きのめした事だし、これですっきりした気分で本格的にレアメタル探しを始められそうだ。
探すにあたっての取っ掛かりとしては、とりあえず教会とその関係者が扱っているレアメタルを当たるのがベストだろう。それでも駄目なら直接鉱山に向かうのもいいかもしれない。
あるいはこの町のギルドを頼るのも良いかも知れない。町に入って早々、赤っ恥を掻いたが何だかんだでギルド証を見せれば嫌でも友好的になるだろう………何せ英雄のお墨付きだしな。不本意だけどな!
そうと決まれば善は急げだ。
俺はこの町に聳え立つ馬鹿でかい教会を目指した。