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レアメタル

 一悶着があった後、エリオット・スミスに案内されて部屋に入った。

 そこには訳の分からない培養液に浸された何かが沢山あったり、意味の分からない機械やら魔法陣やらが沢山配置されていた。

「………”いかにも”っていうような部屋だな」

「………最悪だ、地下室にコレは怖すぎだろ」

 上から俺、キースの発言である。

「ようこそ僕の研究室へ………今ちょっと霊界から霊を呼んでたところなんだけど………折角だから会ってみるかい?」「いえ、結構です」

 即答するキースの反応に吹き出してしまったが、よくよく考えてみれば俺も同意見だ。

「そんな事よりも、俺達に何か用があるって聞いてきたんですが」

 話が進まないので直接聞いてみることにした。

「おおっと、すまないね。そうそう、君達にちょっとばかし用があってね。それで来て貰ったのさ」

 そう言うとエリオット・スミスは部屋の奥にある馬鹿でかい”何か”を指差した。

「あそこにある装置は数ある発明の中でも最高傑作の代物さ。ただ………完成させるのにちょいとばかし足りない物があってね。それで君達にその足りない物を取ってきて貰おうと思ってるのさ」

 そう言われてエリオットが指差す方を見ても、何だかよく分からない馬鹿デカイ物としか認識出来ない。ぶっちゃけガラクタにしか見えないのだ。キースの方も、言葉には出していないが胡散臭そうな目でその最高傑作の代物というヤツを見ている。そんな様子を知ってか知らずかエリオットは続けた。

「この装置はね………何と、ワープ装置なのだよ。君。

このワープ装置を使うことによって例えばこの村から中途半端に遠い王都にだって一瞬で到着することが出来たりする訳なのだよ!分かるかね!この偉大さが!!」

 エリオットが装置の前で力説しているが、いらない形容詞が入ったせいでそんな凄い代物には見えない。勿論、キースの方も以下同文の状態である。

「そんな目で見たって、この装置はあげないよ!」

 一人、勘違いするエリオットを醒めた目で見つめる俺達。

「仕方が無いなぁ。じゃあ僕の研究の成果をちょこっとだけ見せてあげるよ」

 そういうとエリオットは乱雑に物が詰まれたテーブルの上を豪快に手でなぎ払った後(何かガラスのような容器が割れた音が聞こえたがきっと気のせいだろう)さっきの意味不明な装置の縮小版のようなミニチュア?をテーブルの上に配置した。

「小さい物であれば、この何の変哲もない魔石で移動出来るからね。ちょっと君達に見せてあげるよ」

 エリオットが魔石と一枚のコインをテーブルにおいてあるミニチュアにセットした。

「それじゃあ、そうだねぇ………このコインをキース君の頭の上に転移させてみせるからね!」

「え?」

「じゃあ行くよ!!!えい!!」

「ちょ、待って!!!

俺ってば、嫌な予感しかしないんですけどぉぉぉぉぉ!!!!」

 どうやら実際に転移させてみてその実力を見せてやろうって魂胆なんだろうが、はっきり言って何か嫌な予感がしてならない。まぁ、対象がキースになってるから別にどうなったとしてもいいんだけどね。

「お前も止めろよぉぉぉぉぉぉ!マジで何か絶対やばいってぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 いや、そんな事言われても俺知らんし。自分でどーにかせーよ。

 とか何とか思ってる内にミニチュアから光が放たれ、セットされていたコインが消えた。

「おっ!!おっ!!!おぉぉぉっ!!!!今回こそ成功かな!!!」

「ちょ、、、、、おま、、、、、”今回こそ”って言い方から察するに、一度も成功したこと無いんじゃねぇのかぁぁぁぁぁぁぁ!!マジで”フラグ”臭しかしないんですけどぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 上からエリオット、キースの発言である。

 ………割かしどうでもいいな。うん。

 こうして、二人がどうでもいい事を言っている間にミニチュアから何事も無かったかのように光が消えた。

「………あれ?

………コインどこに消えたんだろ?」

「いや……アンタが知らなきゃ誰にもわからないだろ」

 ………転移させた本人のあまりの迷言ぶりに、思わず突っ込みを入れてしまった。そしてアホらしくなってきたのでさっさと帰ろうと思った矢先―――

「アチイィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

 突然、キースが奇声を上げてのた打ち回った。

 前々から狂ってるとかキチガイだとか思っていたが、これほどまで酷い症状だとは思わなかった。今度王都に行ったら病院に連れて行ってやろう。

「お前ぇぇぇぇぇ!!今、失礼なこと思っただろぉぉぉぉぉ!!!ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!」

 うっとおしいので半眼でキースを睨みつけると、何とキースの頭から煙が出ていたのだ。

「お前、いつからそんな宴会芸が出来るようになったんだ?今度、冒険者ギルドの仲間と飲み会やることになってんだけど、その時まで取っておいてくれよ」

「ふざけろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!どっからどうみたって今のタイミングで宴会芸なんぞやらないだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」

 のた打ち回りながら奇声を上げ、なおかつ突っ込みを入れるという器用な大立ち回りをするキース。その涙ぐましい努力は笑いしか誘わない。

 暫くのた打ち回って動きが緩慢になってきたので、キースの後頭部を見やると丁度コイン大くらいの大きさの”ハゲ”が出来上がっており、その原因を作ったであろうコインはキースの近くに転がっていた。

「ブハッ!!!!!!!

コインハゲが出来てやがる………………く、苦しい、ブハハハハハハ!!!」

「ありゃりゃ!!!転移には成功したみたいだけど、失敗してしまったか!!!

うーむ、最終的には人を転移させるようにしたいからな………あのような”ハゲ”を作るほどの熱を纏ってしまうのであれば転移が成功したとしても即死してしまうな。改良の余地があるだろう」

 そう言ってエリオットは羊皮紙に何やら書き始める。

「ハゲっ!!えっ!!どこどこ!!!

ちょ、おまっ!!!ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 キースがまた騒がしくなったが、俺もスルーしたしエリオットもスルーした。

「まぁ、割かしどうでも良い茶番が終わった所で――」

「茶番っていうなっ!!ってかマジふざけんなよっ!!」

 まだまだ喚き足りないキースが茶々を入れてきたのでボディーブローで沈めてやった。

「そのワープ装置を完成させるために必要な物を取ってくれば良いんだろうが、それはどういった物でどこにある代物なんだ?」

 まぁ、今まで俺が辿ってきた冒険者としての経験から言わせて貰えば、この仕事は厄介な臭いしかしない。とりわけ、きっと難易度が高い代物を要求されるだろう………とはいえ、ワープ装置なんて空前絶後な代物を作ろうってんだから当然といえば当然か。

「足りない物っていうか、多分これで完成までいけるんじゃないかっていう未確証の素材なんだけどね。どこぞの辺鄙な村でダンジョンが発見されたって言うんだけど、その村の近くに紫峰山という山があって、その山に目的の品があるらしいんだ。魔石って言ってしまえば魔石の括りなんだけど、その山で取れる魔石の中でも超レアな魔石で”レアメタル”って言うらしいんだけど、それが今無くて困ってる訳さ」

 そう言って肩をすくめるエリオット。

「特に、君達は武道大会で好成績を残したツワモノだと聞いているし、特にジェラルド君に至っては”副業”で鍛冶師もやっていて採掘も自分で行っていると聞いてね。丁度良いと思ったのさ」

 そう言ってニッコリ笑うエリオット………クソっ!お前もかエリオット!!!

「本業は鍛冶師の方だよっ!!どいつもこいつも勘違いしやがって!!」

「まぁまぁ、落ち着いて。

とにかく、これは領主命令だから拒否権は無いからね」

 例によって権力を笠に脅されてしまったが、領主に呼ばれた時点である程度は覚悟していたことだ。素直に受け入れようと思う。

「分かりました。領主命令なら仕方がないですからね。

ただし!!

報酬の件については譲歩しませんからね!!

ちなみに報酬は今後一切、領主命令を下されないこと!!

この条件が飲めないようでしたら、国外逃亡しますよ!!本気でね!!」

 いつにない剣幕で怒鳴る俺に対し、若干引き気味のエリオット。

「あ、あぁ………分かったよ。

ついでにそれだけじゃ悪いから完成した暁にはワープ装置をいつでも使っていい「いや、結構です死にたくないので」

 俺はエリオットの言葉を遮ると、ボディーブローで撃沈したキースを引きずりながらエリオットの部屋を後にした。

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