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決勝戦当日その4

――――閉じていた目を開ける。

 周りを見渡せばあふれんばかりの有象無象が歓声を上げながら取り囲んでいる。

 自分を見れば腰にはロングソードを差し、体は着慣れた革の鎧を着込んでいる。

 そして………

 目の前を見れば見慣れた金髪碧眼野郎の姿が見えた―――――



                     

「レディィィィィィィィィィィィス エェェェェェェェンド ジェントルメェェェェェェェェンッ!!!!」


                  


「とうとうやってまいりましたっ!!第459回 武道大会決勝戦を開催致しますっ!!」

 わあああっと地鳴りのような歓声に包まれて物凄く居心地が悪い。

 やっぱり出なきゃ良かったと後悔しても後の祭なので覚悟を決めて目の前の金髪野郎を睨みつける。

「おい、テメー………とんだ食わせ者だったみてーだな。容赦しねーぞコラァっ!!!」

 こんなハメになっちまった己の不遇(から来るストレス)を全て目の前の金髪にぶつける。

「やあ、また会ったね――――

 っていう台詞は野暮か………ここまで来るってことは相当君も強いみたいだね」

 俺の殺意を飄々と交わしながらそう言ってのける。一般人だったら殺気に当てられて気絶………なんて事はないのだが、普通にイカツイお兄さんが道をあけてくれる位の人相で睨んでやったのに。

「おぉっと!!両者既ににらみ合っている模様っ!!

それでは早速、選手のご紹介を致しましょうっ!!」

 レフェリーは金髪野郎に向き直る。

「武神の間より………これまで数々の試合をその華麗な剣技で勝ち進み、とうとう決勝戦の舞台へと姿を現しました………マイス・ウッドロック選手っ!!」

 どっと再び歓声が上がる………が、耳が潰れそうなのでもう止めてくれ。

 俺がげんなりしているとやっとのことで歓声が止み、レフェリーがこちらに向き直る。

 まぁ、何でもいいけどチャッチャと説明して終わらせてくれよな。

「戦神の間より………圧倒的かつインパクトのあるラリアットにて決勝戦に駒を進めた異色の格闘家………ジェラルド・マクラレン選手ゥゥゥゥゥゥゥ」

 ぶっ飛んだレフェリーの説明に俺は溜まらず抗議する。

「おいっ!!誰が異色の格闘家だっ!断じて違『わあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』~!!」

 抗議を上げた瞬間に会場の有象無象どもに邪魔をされた………

 しかも

「それではっ!決勝戦を開始致しますっ!!」

 ―ゴーン―という鈍い鐘の音が鳴り、試合が勝手に開始されちまったっ!!

 おい、このクソレフェリーっ!!

 お前、試合が終わったら覚悟しておけよっ!!

                  


「それじゃ、僕から行かせてもらうよっ!!」

「っ!!」

 俺がレフェリーを睨みつけていると、目の前の金髪野郎が物凄い勢いで間合いを詰めてきた挙句に俺に向かって剣を一閃してきやがった。

 何かよく分からない装置でナマクラ?にされているとはいえ、痛いことには変わりない。俺は間一髪のタイミングで仰け反りながら一撃をかわす。

 ニヤリと目の前の金髪は笑い――まるで「ほぅ、やるねぇ。面白くなってきた」みたいなムカつく笑い方だ――俺に向かって更なる追撃を繰り出す。

 っていうか、こっちは剣すら抜いてないのに(レフェリーを睨みつけてる間の隙を作ったのは自業自得)抜かせる暇すら与えないとは………卑怯千万っ!!という訳で、そっちがその気なら俺にも考えがあるぞ。

「野郎、ナメやがってっ!!やらせるかってーのっ!!」

 再び剣を一閃した金髪野郎をかわしつつ、奴の足目掛けてタックルをしてやった。俺の行動が予想外だったらしく対処に遅れた金髪野郎を倒し、足元をしっかりと手でホールドしてやる。

「くたばれえぇぇぇぇぇっ!!」

 俺は倒れた勢いを利用して奴の足を脇の下にしっかりと挟み込んでから抱え上げ、そのままグルグルと回転し始める。

「ぬおあぁおおおおおおっ!!」

 溜まらず悲鳴を上げる金髪野郎を見て、いい気味だボケとばかりに嗤いながら回転数を上げていく。

「~~~~~~~~~~~っ!!!」

 いい具合にぶん回して速度が上がったのを見計らって、俺は天空………もとい、斜め45度上方に目掛けて足から手を離して金髪野郎を発射した。

「のああああああああああああぁぁぁぁっ!!」

 見事空へと発射された金髪野郎はキリモミ回転しながらその勢いを今度は地面へと向け、見事地面目掛けて顔面から激突した。

 そのまま身動きすらしない金髪野郎。

 そしてしーんと静まり返る会場。

「………うっわぁ~、いったそ~だなー」

 俺が呟いた一言はやけに回りに響いたような気がする。


                   


 その後、たっぷり10秒は経っただろうか。

 硬直から解けたレフェリーが俺の勝利を宣言した。

「しょ………勝者っ!!

ジェラルド・マクラレン選手っ!!!!」

                          

               


『わあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』



          

         

 これまでで一番の歓声が周りを包んだ。

 それこそ地鳴りのような声援に俺は顔をしかめつつもこれまでの苦労が報われたことを実感する。

               


「はぁ………やっとこれで俺も帰れるのか………」

 俺がポツリと呟いた一言は誰にも聞こえなかった。

           


 その代わり

                

           


「ちょっと待ってくれっ!!

 レフェリーは10カウント取っていないし俺はまだ戦えるっ!!試合は続行だっ!!」

                      


 そう言って再び復活した金髪野郎が目の前に現れたのだった。

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