武器の秘密
キースと俺の試合が終わった………あの野郎、早々に負けると踏んでいたが意外としぶとかったらしい。未だに勝ち残ってるとは流石の俺でも予想は出来なかった。
とはいえ、しぶといだけじゃ武道大会を勝ち残るなんて真似は出来ないはずだ。
「おい、お前のその手斧………ちょっと貸してみろ」
半眼で睨みつけながら、試合でキースよりも大活躍した手斧を奪い取る。
「おわっ、勝手に取るなっ!!
せめて持ち主の許可ぐらい取れやっ!!アホーっ!!」
喚き散らすキースを拳骨で黙らせつつ、爺に教えてもらったサーチの魔法をかけてみる。すると…………
―ォォ……ォォ………―
「………ん?何か聞こえる」
かすかにではあるが、何か異様な音が聞こえる………何ぞこれ?
サーチの魔法は正常に発動したはずなのに、何も解析されないぞ………しかも変な音が返ってくるなんてことは、未だかつて無かった………これは何か臭うな。
「はぁっ!?何も聞こえねぇぞ??
お前頭おかしくなったんじゃねぇのか?」
「うるさいっ!!良いから黙ってろっ!!」
アホな事を言い出すキースの言葉を遮った。とにかく、何かありそうな予感がする………
俺はサーチの魔法を更に強める。
―オオオォォォ…………―
「っっっ!!!!!!!」
音が更に強く聞こえるようになった。
………音というよりこれはまるで”声”のように聞こえる。
そう認識すると同時に、体が拒否反応を起こすような感覚に襲われた。
何か知らんが、不味いぞこれはっ!!
「おい、ジェラルド。さっきから何を――」
―オオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!―
「うわあああああああああああああああああああっ!!!」
俺は咄嗟に後ろへ飛んで”ソレ”と距離を取った。
キースが何かを言うとした瞬間、身の毛もよだつような”声”が聞こえたのだ。それと同時にサーチの魔法が完了した。
………そのせいで俺は知りたくもない情報を知る事となった。
「お………お前、これ、どうしたんだ?………」
ごくりと唾を飲みながらとりあえず聞いてみる。怖いという感情しかないが、知らずに巻き込まれるのはもっと嫌だ。
「はぁ?………これは俺が鍛冶して作った手斧だよ。つーか、さっきからお前なにしてんの?」
キースはこともなげに戯言を吐いたが、問題はソレじゃないしソッチじゃない。
「誰が作ったかなんぞ聞いてねぇっ!!
この何だか良く分からない”禍々しいモノ”は一体何なんだって聞いてんだよっ!!」
俺はキースが持ってる手斧を指さしながら力いっぱい叫んだ。
―――――――――――――
魔力付与………これを出来る者はごく僅かに限られるが、武器に魔力を与え物体をより良い物へと昇華させるという技術がある。
もちろん、そんな素晴らしい物なら我先にと技術を求める者が後を絶たないだろうが、そうは問屋が卸さない。何故なら、この技術は魔法の技術を極めた者のみが習得出来る技術だからだ。
何せ数ある魔法使いと呼ばれる人々でも、ごく一握りの上位魔術師のみが扱うことが出来る………というのが一般的で、つまり鍛冶屋が魔力付与の代物を作ろうと思ったら、べらぼうな額のお金を魔法使いに払って魔力付与をしてもらうというのが普通なのである。
話を元にもどそう。
今現在、キースが鍛冶したという手斧。これにも手斧の性能の他に『何らかの力』が付与されている………しかし、ハッキリ言おう。これは魔力付与なんていう、そんなチャチなモンじゃない………
サーチの魔法ではその全貌を知ることが出来なかったが、その一旦を垣間見える事が出来た。”ソレ”は一言で言うなら”邪悪なる存在”………または”負の塊”といっても差支えは無いだろう。
使用者を殺した挙句に周りにまで害悪を飛ばしてもなお余力があるような、禍々しくも強大な力だ。
俺は”ソレ”が何なのかは知らないし表現したくもないんだが、敢えて俺の知ってる単語の中で表現するならば悪霊………いや、邪神の類か………しかも大分タチが悪い方の意味でこの手斧は”極上”の一品だろう。
とどのつまり何が言いたいかというと、この武器はとんでもなく呪われているのだ。エクソシストも裸足で逃げ出すんじゃないかってくらいの邪悪な力を感じる。
とにかく………こんな物に関わったらタダじゃ済まないだろう。好奇心に駆られるのは別段悪い事だとは思わないが、クビを突っ込んだ先がギロチン台だった………なんて笑い話にもならない。
「良く聞けっ!!
”ソレ”をどうやって作ったかなんてヤボな事は聞かない!!だから”ソレ”を俺に近づけるなっ!!これ以上近づいたらお前を殺すっ!!」
剣の切っ先をキースのクビに突き付けながら言う。さっきの一件のせいで俺の背中は汗まみれ。そして顔面は真っ青になっていたが、今度はキースの顔も真っ青になった。
「どぅわっ!!!
危ねぇだろうがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
俺を殺す気かぁぁぁぁぁぁっ!?」
「うるさいっ!!とにかく、それ以上”ソレ”を近づけるなよっ!!」
喚くキースを尻目に、しっかりと”ソレ”を近づけないようにクギを刺しておく。
っていうか、そもそも何であんなヤバいモン持ってて、未だに生きているのか理解できん。サーチの魔法を使っても底が見えないほど呪われた武器なのだ。正直、あんなモン持ってたら普通はとうの昔に死んでるはずだが………まぁ、キースだからしぶといのだろうな。うん。
とにかく『キースだから』の一言で無理やり納得してこの件は”終わらせる”
ったく………厄介事に関わるのはもうこりごりだ。この件に関しては絶対に触れないようにしよう。
俺は未だに喚いているキースを置きざりにし、一人で宿へと帰ったのだった。




