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キースの鍛冶指南

 人にはそれぞれ得意・不得意がある。それは様々な分野であったり局面であったり、それこそ自分の周りの環境の違いなど、数えきれない程の内的・外的要因すらをも含めた影響があって、その人の不得手の分野というものが確立されているのではないだろうか。

 そもそも………

「いい加減、御託は聞き飽きたんで早くしてくれると助かるんだが」

 横で空気を読まない発言をしているのが我らが悪友改め、荷物持ちの「キース」君である。

「勝手に荷物持ちにするなっ!」

 だから耳元で騒ぐなって。

「お前な………自宅に鍛冶工房があるだけでも優遇されてる癖に、更に稀代の名工を父親に持ってるんだぞ!

そのアドバンテージすらも凌駕(りょうが)するお前の鍛冶の才能が無さに脱帽するよっ!」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇっ!!人が気にしている事を言うんじゃねぇぇぇぇっ!!」


―現在、鍛冶修行中の主人公―


 あのクソ爺が帰ってきてから、またバタバタと騒がしい日々が到来した。何かにつけて修行という名の後継者作りを推し進めてくるのだ。

 何かある度に(いや、何もなくてもか)後継者、後継者とミニにタコ………ではなく、耳にタコが出来るほど聞かされているが、そんなに大事な事なのだろうか?

 元を正せばこの流派、王家や民を守る為に作り出されたものだという………その本来の役目は『守りの剣』が主体なのだ。しかし、爺が後継者に選ばれてからはその姿を変えてしまった。どこまで変わったのかというと、その『守りの剣』で伝説のドラゴンを討ち取ってしまう程に変化してしまったのだ………こんな流派は無くなった方が平和だと思うのは俺だけだろうか?

 まぁ、そんな話はどうでも良い。今は鍛冶の修行の時間だ。一瞬足りとも無駄にするわけにはいかない。

 ではここら辺で仕切り直しをしようじゃないか………


 さぁ、今回は鍛冶の指南役として独自の鍛冶ブランドを持つキース君を迎えております。彼の性格はアレですが、腕は確かなので頼りにはなるでしょう。

 俺はハンマーで鉄を叩きながら、焼き入れ時を見定めていた………そして、今までは同じタイミングで失敗してきたので、今度はタイミングをずらして焼き入れをする。

―カキン―

「………っ!!うが~っ!!!」

 ハンマーを打ち付け過ぎたのか、はたまた細見にしすぎてしまったのかは分らないが、刀身がポッキリと折れてしまった。それはもう見事に。

「はぁ~………だから、焼き入れのタイミングが違うってさっきから言ってるじゃないか。」

 さも私は疲れてますというような表情とともに溜息を吐くキース。腹が立つことこの上ない。

「だから、こうやるんだよ」

 キースは俺からハンマーをひったくると、『精錬君』から新たな鉄のインゴットを取り出す。そして慣れた手つきで熱を加え、ハンマーを振るう。

―カン、カン、カン、キン―

 キースの手によって、見事に仕上がっていく刀身が何故か突然輝き出した………おい、どう考えてもおかしいだろ。

「………っと、ここまではお前でもできるよな?」

 いや、できないから。

「そしたら更に………」

 キースが焼き入れを行うと、工房全体が金色の光に包まれる。おいっ!!突っ込みどころが満載だぞっ!!

「仕上げは、水で熱を冷まして………」

 水で冷やされると同時に光が剣に向かって収束するように弱まり、最後に淡い光を湛えて剣に留まった。

 それを見届けた後、キースが開け放たれた入口に向かって剣を振る。

 するとどうだろう。金色の斬撃が剣から放たれ、外にあった薪置場を粉々に粉砕した。

 空いた口がふさがらないまま、俺は呆然とその光景を見届けた。そして、キースがタイミングを見計らったかのようにこちらに向かって一言のたまった。

「な?簡単だろ?」

「出来るかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 この世の理不尽さと、俺の魂の叫びが共鳴した瞬間であった。

 ちなみに薪置場を破壊したキースは、この後ウチの親父にボコボコにされるという折檻を受けるのだが、それはまた別の話である。

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