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英雄(クソ爺)の帰還

 盗賊騒ぎから1週間が経ち、徐々にではあるが村の物流も少しずつ回復しはじめてきた。王都のような華やかさは無いが村へやってくる旅人は結構多いので、旅館の経営者やそれに連なる商売をしている人達はホっと一安心する。

 (くだん)の盗賊達はというと、全員が大小問わずの傷を負っていたが、その中でも二名の盗賊だけ【特に】酷い怪我を負っていた。その様子は首都へと連行される道中で、多くの人々に目撃されたという。


―――――――


「………ところで、なんでここに爺が居やがるんだ?」

 この言葉は俺と親父と(ついでにキース)が使っている工房に、見慣れた後姿を発見したことから発せられた。

 その姿は威風堂々としていて活力と覇気に満ち溢れている。この爺が立っているだけで周りに威圧感をまき散らすから、客がよって来なくなるのだ。鬱陶しいことこの上ない。早く帰れ。

「久しぶりに帰ってきたというのに、随分な台詞じゃのう?ジェラルド」

 爺はそう言いながら、俺の方に振り返った。爺、爺と言っているが、一応不本意ながら俺の剣の師匠だ。

 この村に訪れる旅人とそれほど変わらない服装をしているが、何気ない動作一つをとってもその中に隙が全く無い………嫌だねぇ、こういうのを職業病って言うんだろうか。

「お主は大概、何か失礼な事を考えているようじゃが、そんなに訓練が好きなら幾らでも付き合ってやるぞ」

「イイエ、全力で断ります。」

「ふぉっふぉっふぉ、ワシとお主の仲ではないか。遠慮するでない。ほれ、行くぞ」

 嫌がる俺を無視して無理やり外へと連れ出された。言葉が通じているはずなのに、言葉が通じないのはなぜなんだろうか?

 いや、特定の言葉だけが通じないのは狙っているとしか思えない。

「さてさて………それでは始めるとしようか。ほれ、遠慮はいらんぞ、かかって来るがよい。ワシは負けんぞ」

 爺はその辺から棒切れを拾うと、剣を抜くように挑発した。

 相変わらず舐められたもんだが、棒切れ相手に勝てないんだから涙がちょちょぎれそうになる。でも俺だってやられてばかりじゃないんだからね!!

「その幻想………棒切れごと叩き切ってやるぜぇぇぇぇぇ!!くたばれクソ爺ぃぃぃっ!!」

 俺は真剣を抜くと爺目掛けて上段からロングソードを振り下ろす。もちろん、そんな攻撃は爺にお見通しだったようでさらりと避けられる。

「おぉ、怖い怖い。爺相手に何本気出してるのじゃ?お前さんの親の顔が見てみたいわい」

 そう言われてふと横を見ると、親父が何食わぬ顔でシートを敷いて何かを啜りながらこっちを見ている。

「そこで茶飲みながら見学してる奴が親だよっ!!これで満足かボケがぁぁぁっ!!」

 俺は剣を鞘に戻すと、『神速の抜刀術』で衝撃波を繰り出す。まぁ、簡単に言うとアバンス○ラッシュみたいなもんだ。

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 爺が奇妙な動きをしながら衝撃波をかわした。

 ………チッ

「それは反則じゃろうがっ!!」

 いや、遠慮はいらんから掛かってこいって言ったのはそっちだし、反則もクソも無いだろうが。

「少しは遠慮せんかっ!!

それよりも、何で『まだ教えてない』奥義を使えるんじゃっ!!」

「いや………前に一回見せて貰った時に技を盗んだだけだけど?」

「……………」

「……………」

「お主………もし将来の夢が化け物になる事だったら、既にその願い叶っておるぞ」

「誰がそんな夢なんぞ見るかぁぁぁっ!!今度こそあの世に送ってやるぜぇぇぇぇっ!!」

 俺は素早く鞘を戻すと抜刀する構えをとる。

「ちょっと待つのじゃっ!!まさか奥義なんぞ使えるとは思っておらんかったから、せめて棒切れじゃなくて剣を………アギャーッ!!」

 逃げようとした爺は背中を向けた瞬間に、衝撃波の渦に消えていった。


………その後、初めて棒切れ相手の爺を倒して喜んでいたが、今度は逆襲とばかりに真剣で襲ってきた爺に返り討ちに遭い、全治2週間の怪我を負った。

 怪我の功名で爺が新しく使ってきた奥義の一つを盗んだが、それを知ったキースがまた暴言を吐いて全治1週間の怪我を負ったのはまた別の話である。

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