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盗賊狩り 後編

「おい、テメェ!なめたマネしやがってッ!覚悟は出来てンだろうなぁッ!!」

 今にも飛び掛らんばかりの勢いの盗賊大勢と、それらに囲まれているキース。そのキースはというと、既に満身創痍の状態で立っているのが精一杯の様子だ。

 それにしても商人だけでなくキースまで襲うとは………この盗賊共はなんて酷いことをするんだろう。

「まだ襲われてねぇし、この傷は全部お前のせいだよアホォォォッ!!」

 

 ………何かキースが向こうで叫んでいる気がするが、俺には何も聞こえない。それよりも本気でキースがやばそうなので早めに決着を付けるとしようか。

 俺は走っている勢いのままに目の前の盗賊その1を斬りつける。「ぐえぇっ!」なんて品の無い声が聞こえたが、そんなのは無視だ。キースの方に気を取られていて油断している今の内に、次々と盗賊共を斬りつけていく。

 そして盗賊共が気づいた時には、キースが跳ね飛ばした奴等も含めて半分以上仕留める事が出来た。

「ッ!!何だテメェはッ!!」

 キースを囲んでいた筋肉ダルマの一人がこちらに気づいて叫んだ。だが、もはや君達は既に詰みの状態なのですよ。

 まぁ、それは俺が手がけた作戦であるので『当然の結果』である。

 だが、それを差し引いてもこいつ等が領主ですら手こずっていた盗賊だとは到底思えない。何故なら、あまりにも弱すぎるからだ。それにとてつもない三下の臭いがする。

 そもそも最初の「おい、テメェッ!」の(くだり)からして頂けない。

 いやはや、これだから脳筋は語彙が少なくて困るんだよなぁ。


 ハッキリ言って領主の兵がこんなのすら捕まえられないのは問題がありすぎると思う。村の治安を守る兵が、この程度の輩すら捕縛出来ないなんてもはや絶望するしかない。そもそも村の治安を維持するには………(説明が長いので略)つまり、ここでは戦略性に富んだ戦術こそが(中略)それこそ勝利を勝ち取る為の(削除)………

 という訳で最後に一番大事な事を言うが、俺は脳筋ではないのだッ!!

「………脳筋って言われたの気にしてたんだ」

 さりげに暴言を吐いたキースに無言で鞘を投げつける。黙らせる為に投げ出されたそれ(鞘)はキースの顔面を捉え、見事その役目を果たした。………そこで暫く寝てろ馬鹿(キース)め。

「あぁっ!?テメェはあの時のっ!!」

 筋肉ダルマAが俺を指差しながら何かホザきやがった。なんだこいつは?悪いが、俺に犯罪者(盗賊)の知り合いは居ないぞ。

「あっ!アイツっ!!酒場に居やがった奴かっ!」

 筋肉ダルマBもなにやらホザきやがった。

 う~ん、何か覚えがあるような???



 ………あぁ、あれか。

 白樺亭で俺のローストチキンを吹き飛ばし…た…………


 あああああぁぁぁぁぁっ!!!


 あのクソ野郎どもっ!!

 どっちも盗賊だったのかっ!!

 今思い出しても、腹が立つ!!


「おいっ!あン時の借り返すぞっ!」

 筋肉ダルマAがBに叫んだ。

「へっ!テメェに借りを返す前に、こいつから先に返してもらうかっ!覚悟しろ小僧っ!!」


 ………

 覚悟するのはお前等の方だ………

「食い物の恨みはしつこいんじゃボケェェェェェェェェェッ!!」

 俺は筋肉ダルマAとBに斬りかかった。


―10分後―


 気づいたら記憶が飛んでいた。

 ついでに気づけば盗賊共はすべて地面に伸びていた。

 若干二人だけボロ雑巾のような酷い有様になっていたが、はて、どうしたのだろうか?

「………お前がやったんだろうが」

 いつの間にか、キースがゴキブリの如く沸いて出てきた。まったく………生命力の強い奴だな。

「おぅ、キース。死んでなかったか。良かったな、はっはっは」

「もう少しで死ぬ所だったわっ!!ボケェェェェっ!!」

 あーもう、耳元で叫ぶな。鼓膜が破裂したらどうしてくれるんだ。損害賠償請求するぞ。

「あぁ、そうだ。それよりもお前に渡す物があったんだよ。」

 キースに渡す予定だったロングソードを使って二刀流で頑張ってしまったので血まみれだが、とりあえずキースに渡しておく。

「何で今更っ!!遅いよっ!!しかも血まみれで人に渡すなっ!!気分悪いわっ!」

 何かスッゲー嫌な顔されたけど素知らぬ顔をしておく。

「全くお前ってやつは………まぁ、良い。それよりもだ。ざっと見で30人………相変わらずの化け物だってのが証明されたのはおいとくとして、お前はこいつらを村までどうやって運ぶつもりで居るんだ?」

 キースが至極まっとうな事をホザいた。

「ん?そんなのお前が運ぶんだろ?」

「無理に決まってるだろうがっ!!荷物だけで精一杯だっつーのっ!!」

 キースが顔を真赤にさせながら叫んだ。

 赤くなったり青くなったり器用な奴だな。

「全部お前のせいじゃっ!!」

 はいはい、まぁ、それはおいとくとしてだよ。

「じゃあさ~」

 俺は地面に転がった野郎共を見渡しながら言った。

「………マジでどうしよう?」


「知るかあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 キースの魂の叫びが木霊した。

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