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盗賊狩りの準備

「盗賊狩りに行かないか?」

 単刀直入に用件をキースに伝える。最初は何を言われたのか分からずにポカーンとしていたが、みるみる内に気色悪い顔になっていった。

「行くに決まってるだろおおぉぉぉっ!よっしゃああぁぁぁぁぁっ!!気合入れて行くぜええぇぇぇぇっ!!」

 無駄に気合が入ったこの馬鹿キースは、工房ではた迷惑な音量で叫んでいる。案の定、後ろで青筋を立てた親父が裁きの鉄槌をキースの頭上に落とした。

「ぎゃあああああぁぁぁぁっ!!」

 何度目か分からない親父の拳をその身に受けたキースは悶えている。何度同じことをやって何度繰り返した光景か分からないが、それは学習能力が無いという表れなのだろう。表れ(あらわれ)というより哀れ(あわれ)だな。

「ぐおぉぉぉ………」

 未だに地べたで悶えてる姿を見ていると、何だか誘っておいてアレなんだが凄く人選ミスな気がしてならない。

「まったく、この馬鹿は何度ご近所に迷惑掛ければ気が済むんだ?………それよりもジェラルドよ。こんな奴連れてって大丈夫なんか?」

 こんな奴扱いは流石に酷くないか、親父………まぁ、俺もあいつの扱いに関しては大差ないから別に良いか。

「うーん………どうだろ。さっきまで大丈夫だと思ってたんだけど、なんか『この光景』を見せられてから、大丈夫な気が全然しないんだよねぇ………やめておくか」

 嘆息して家を出ようとすると、何時の間に這い上がってきたのか、馬鹿キースに服を掴まれた。

「待ってくれえええぇぇぇ!!大丈夫だからっ!俺っ!やれば出来る子だからっ!」

 ………自分でやれば出来る子とか言っちゃってるよ。言っちゃってるというか、イっちゃってる………お、我ながら上手いこと言えた☆

「失礼な事考えてるんじゃねぇよおぉぉぉっ!大丈夫だから、俺連れてけってっ!!」

 何で思ったことが分かるのかは分からないが、尚もすがってくる馬鹿キースを蹴り付けながら親父に視線を向ける。

 アイコンタクトではあるが、言外に「連れて行っても良いから、俺の後継者を死なすなよ」と目で訴えている。

「ところで親父、俺の心配は?」

 一応これだけは言葉に出して直接聞いてみる。

「すると思うか?」

 親父はその言葉とともにニッコリと俺に微笑み掛け、挙句にサムズアップした。

 クソオォォォっ!少しは心配しやがれってんだっ!

「よおおおしっ!!すぐに準備するぜえええぇぇっ!」

 俺と親父のアイコンタクトを何故か読み取れた馬鹿キースは、もう行くことが前提であるかのように準備を始めた。まぁ、当初の予定通りになったから別に良いか。物凄く不安だけど。


 5分程してキースがいそいそと用意したのはレザー(革)を中心とした防具と、自らが鍛えたであろうツヴァイハンダーだった。防具に関しては、まぁ、必要最低限じゃない?ってコメントしか浮かばないが、ツヴァイハンダーに関しては突っ込みどころが多すぎる。

 ロングソードと違い、ツヴァイハンダーのような大剣は刀身が1mを越える両手武器だ。長くなれば長くなるほど鉄を一定の厚みにしなければならないため、作成にはロングソード以上の技術が必要になるのが基本である。それだけではない。剣身が波打ったような形状をしている。これはキースが鍛冶をした武器に共通してみられる現象で、切れ味は折り紙付きとなっている。しかも、この波状がキースのトレードマークとなっており、この波状マークが付いた武器はキースだけの独自のブランドとなっている。いや、今はそんな事どうでも良い。

問題はこのツヴァイハンダーの切れ味ではない。

 この剣は刀身だけで1.5メートル、全長は1.8メートルにもなる馬鹿みたいな大剣で、重さは5kgもあるのだ。

 こんなものを『山の中』で山賊相手に振るえるだろうか。答えは否である。

「この馬鹿弟子がぁっ!!脳みそ腐ってるのは知っていたが、そんなモン山の中で振り回せる訳ないだろうがっ!!このボケキースっ!」

 大剣を担いで騒いでる馬鹿キースを沈めた親父は、自分が打ったであろうロングソードを一振り俺に渡す。

「………この馬鹿が剣がからきしなのは分かるが、無いよりはマシだろう………この馬鹿を頼んだぞ」

 存外、真剣な顔で俺にキースを託してきた。まぁ、こいつは殺しても死なないから大丈夫だろ。多分。

「んじゃ、行ってくるわ、親父」

「おう、気をつけていけよ」

 俺は気絶しているキースを引きずりながら山賊退治に出かけた。

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