盗賊狩りのプラン
盗賊とは、他人の持ち物を無理やり奪う者である。したがって、国によって名前や規模は様々だが、無法者を取り締まる機関が存在する。もちろん、規模が巨大になればそれだけで強い抑止力にもなる。
しかし、それらの機関が存在するにも関わらず悪事に手を染める輩は決して0になることはない。大体は徒党を組んで数と武装でターゲットを圧倒し略奪を行うので、取り締まる側も命がけになる事が多いのだ。
武に秀でた貴族は自ら兵を率いて討伐する事もあるらしいのだが、生憎とこの村の領主は専ら頭脳労働の方が得意なのでそういったことは期待出来そうに無い。
それでも何度か兵を送ってはいるらしいのだが、兵が付近を探索すると盗賊が警戒するようでなかなか拠点を見つけることが出来ないのだという。
つまり、盗賊を退治する前に拠点を見つけないといけないのだ。
「こんな事だろうと思ったよ………」
依頼書に書かれてある情報を見ながら一人ため息を吐く。場所さえ分かっていればどうにかなるというものでもないし、それより何より一番の問題は領主の兵が動いているにも関わらず未だに捕らえられていないという事だ。幸いに、とでも言うべきか、この村を治めている領主は愚鈍ではない。そしてこれは不幸な事に、そんな領主ですら未だに捕らえられていない盗賊が今回のターゲットになっている。そこから導き出される答えは、一言で言うなら超が付くほどの厄介事なんだろう。
とはいえ………依頼を受けたからにはこなさなければならない。しかも、あのキリュウオーナーの依頼だ。失敗なんてきっと許されないだろう………いや、やっぱり許してくれ。
「うがああああっ!!やってらんねーっ!!」
叫んでもどうにもならないのは分かっているが、叫ばずにはいられない。そういえばどっかの有名な劇作家が「ただ叫ぶことしか出来なかった」なんて言葉を残しているらしいが、きっとその劇作家も同じような目に遭っていたんだろう。まったくもって浮かばれない。
………話が逸れたが、まずは現状を整理しよう。今回のターゲットは、この村の物流を脅かしている盗賊だ。出没地域はこの村の街道沿いがメインだ。現在もなお、領主の取り締まりの目を掻い潜って商人の荷を略奪している―――ん?ということは………
「そうかっ!俺も商人に変装すれば向こうからやって来てくれるのか!」
そう。兵士や剣士の格好で行って警戒されるのならば、商人のような非武装者の格好をして荷を運んでいればおのずと向こうからやってくる。探す手間が省けるというものだ。
しかし、依頼書によると襲われている商人は荷馬車のような「量」を運び込んでいる者達に限られており、一人で荷を運んでくる商人は襲われていない。そういった経緯もあって、村への物流が完全に滞ることはないのだが、やはり支障は出ているという。ということは一人では無理そうなので、このプランでいくなら協力者が必要だ。
「まぁ、あいつで決まりだな。よし、一旦ウチに戻るか」
俺は依頼書を鍛冶の材料を入れてあるリュックに仕舞うと、悪友の助力を請うべく家路を急いだ。