四、家族
俺は、安村要。
俺は家が貧乏だ。父さんが死んで、俺がバイトするようになって、母さんは「休め」って言うけど、俺がバイトしないと、弟二人を養えない。
だからずっとバイトをしてきた。
でも、俺は明日死ぬ。だから、今日はバイトをしないで母さんと、弟二人と過ごしたい。
「母さん」
「ん?」
「今日は、バイト休んでいいか。」
「いいよ。ごめんね。負担かけて。」
「で、母さんに頼みがあるんだ。」
「ん?」
「母さんも、今日だけは仕事休んでほしい。」
「なんで?」
「母さん、信じてくれないかもしれないけど、俺明日死ぬんだ。」
その言葉を聞いた母さんは目を見開いた。
「信じてくれないよな。ごめん。」
「信じるよ。要の言うことは全部。でも…受け止めきれなくて」
母さんはふぅ、と大きい息を吐いて俺を抱きしめた。
「やっぱり信じたくないわ」
母さんは、涙を流した。
「母さん…。」
「もう誰も失いたくないもの」
母さんの滝のように流れる涙が俺の肩を濡らした。
俺も死にたくなくて、涙を流した。
「母さん、俺も死にたくない。でもね、俺の友達も俺も、未来を見たんだ。死ぬ未来を。死の運命は変えられない。だから…」
「死んでほしくない。バイトしなくてもいい。だから要はずっと生きてないと…!」
「母さん…」
涙を流す俺たちを見て、弟二人が起きてきた。
「どうちたの?」
「彼方、叶、ごめんね起こして。」
「ううん!なんで泣いてるの?どこか痛い?」
「大丈夫よ。ほら、おねんねしないと。」
「嫌!要兄も泣いてるから僕と叶と四人でいる!」
俺は弟達を見てさらに泣いてしまった。
「おいで。」
二人を抱きしめて、俺はできるだけ伝わらないように泣いてる理由を説明する。
「あのね、要兄ちゃんね、明日、遠くに行っちゃうの。」
「遠く?どこ?」
「うーん、お空の方かな。」
「お空?僕も行きたい!」
「叶も!」
「まだ二人は早いよ。お兄ちゃんは神様から呼ばれたんだ。お空においでって。」
「へー!」
「叶も呼ばれる?」
「うーん、おじいちゃんになったらね。」
「そうなの!楽しみ!」
「そうだね。」
俺は二人の頭をポンポンとした。
「お父さんに会ってくるんだ。」
その言葉を聞いた母さんは嗚咽するほどの涙を流した。
「お父さん?」
「お父さんもね、二年前神様に呼ばれたんだよ。」
「知ってる!僕たちもお父さんに会いたいなー!」
「お兄ちゃんも、お父さんもこれからずっと二人のことお空の上から見てるよ。だから偉い偉いしてなきゃ」
「わかった!頑張る!」
母さんは、俺と弟二人を強く抱きしめた。
俺らは二時までご飯を食べたりして話し続けた。
「母さん、今までありがとう。行ってくるよ。彼方と叶にもよろしくね。負担かけるけど、もし本当に俺が死んだら、茶色の戸棚の一番下の引き出し、見て。じゃあね。」
母さんは涙を流し、俺を抱きしめて、「母さんこそ、今までありがとう。大好きだよ。バイバイ。」と言った。
「俺も大好きだよ。」
涙をぐっと堪え、手を振った。
校舎裏に向かう途中、俺は涙を堪えきれずにしゃがみ込んでしまった。
続。
この物語はフィクションです