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明日死ぬ僕たちは  作者: 髙木悠ハ
3/7

三、食いしん坊の理由

俺は佐伯勝治。

小さい頃に両親が死んでから、おばあちゃんが俺の面倒を見てくれた。

「はいこれ、お煎餅。」

常に食べ物が出される日々。正直最初は食べるのが嫌いで、食べ物が出されるたびに嫌な気持ちになっていた。

でも、おばあちゃんが倒れて、死ぬ寸前に「たくさん食べるお前がおばあちゃんはずっと好きだよ」と言ってきて、食べるのが好きになった。

俺は、おじいちゃんの家でのんびり過ごしている。

けど、美味しい物はそんなに出てこなくて。

できれば大好きなラーメンをたくさん食べたい。

けど、お金がない。

だから、俺は明日死ぬのをいいことに、食い逃げをすることにした。

野球部で足は速い。

だからまあ、逃げられるだろう。

俺はラーメンを食う前に、家にあるお菓子を全て食い尽くした。


「どうした、勝治。」

「じいちゃん、今までありがとう。」

「…勝治?」

「じゃ!」

「おい!勝治!」

俺は叫んで俺の名前を呼ぶおじいちゃんを背に家を出た。

涙を堪え、俺はターゲットのラーメン屋に辿り着いた。

犯罪を進んで犯そうとする孫なんて、死ぬべきだろ。

見損なったろ。

明日死ぬから、好きなことをしたいんだ。

ごめんなじいちゃん。

俺は扉を開けて、扉に一番近いカウンター席に座った。

「醤油ラーメン大盛りと、チャーハン大盛りで」

そういうと、大将は「へい。」と言い麺を茹で始めた。

現在時刻は十九時。

ゆっくり食べて二十時頃にここを出る。そして人気のないあの路地へ駆け込んで逃げるつもりだ。

「へい、大盛りチャーハンと醤油ラーメン大盛り一丁。」

「ありがとうございます。」

麺を啜り、最後の晩餐を楽しむ。

美味い。本当に美味い。

きっと地獄行きだから、空にある婆ちゃんには会えないけど、ばあちゃんを思いながら麺を啜る。

大盛りチャーハンも食べると、お腹は一気に膨れ上がった。

時刻は二十時を回っている。

「よし」と覚悟を決め、「ありがとうございました。ごちそうさまでした。」と言い、俺は店からダッシュで出た。

後ろからは追いかけてくる大将の足音。

「待てコラ!!!」

叫ばれて、怖くて震えながらも、美味しい物を食べれたという満足感に浸った。

俺は頑張って逃げて、大将の足音がしなくなったところで休んだ。

パトカーの音が聞こえる。

離れた町のラーメン屋だから、学校には何もこないはず。しかも、古臭いラーメン屋だったから、防犯カメラは無さそうだった。

俺は、しばらく時間を潰した後、三時に校舎裏に着くように歩き出した。



この物語はフィクションです

食い逃げは法律で固く禁じられています。

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