三、食いしん坊の理由
俺は佐伯勝治。
小さい頃に両親が死んでから、おばあちゃんが俺の面倒を見てくれた。
「はいこれ、お煎餅。」
常に食べ物が出される日々。正直最初は食べるのが嫌いで、食べ物が出されるたびに嫌な気持ちになっていた。
でも、おばあちゃんが倒れて、死ぬ寸前に「たくさん食べるお前がおばあちゃんはずっと好きだよ」と言ってきて、食べるのが好きになった。
俺は、おじいちゃんの家でのんびり過ごしている。
けど、美味しい物はそんなに出てこなくて。
できれば大好きなラーメンをたくさん食べたい。
けど、お金がない。
だから、俺は明日死ぬのをいいことに、食い逃げをすることにした。
野球部で足は速い。
だからまあ、逃げられるだろう。
俺はラーメンを食う前に、家にあるお菓子を全て食い尽くした。
「どうした、勝治。」
「じいちゃん、今までありがとう。」
「…勝治?」
「じゃ!」
「おい!勝治!」
俺は叫んで俺の名前を呼ぶおじいちゃんを背に家を出た。
涙を堪え、俺はターゲットのラーメン屋に辿り着いた。
犯罪を進んで犯そうとする孫なんて、死ぬべきだろ。
見損なったろ。
明日死ぬから、好きなことをしたいんだ。
ごめんなじいちゃん。
俺は扉を開けて、扉に一番近いカウンター席に座った。
「醤油ラーメン大盛りと、チャーハン大盛りで」
そういうと、大将は「へい。」と言い麺を茹で始めた。
現在時刻は十九時。
ゆっくり食べて二十時頃にここを出る。そして人気のないあの路地へ駆け込んで逃げるつもりだ。
「へい、大盛りチャーハンと醤油ラーメン大盛り一丁。」
「ありがとうございます。」
麺を啜り、最後の晩餐を楽しむ。
美味い。本当に美味い。
きっと地獄行きだから、空にある婆ちゃんには会えないけど、ばあちゃんを思いながら麺を啜る。
大盛りチャーハンも食べると、お腹は一気に膨れ上がった。
時刻は二十時を回っている。
「よし」と覚悟を決め、「ありがとうございました。ごちそうさまでした。」と言い、俺は店からダッシュで出た。
後ろからは追いかけてくる大将の足音。
「待てコラ!!!」
叫ばれて、怖くて震えながらも、美味しい物を食べれたという満足感に浸った。
俺は頑張って逃げて、大将の足音がしなくなったところで休んだ。
パトカーの音が聞こえる。
離れた町のラーメン屋だから、学校には何もこないはず。しかも、古臭いラーメン屋だったから、防犯カメラは無さそうだった。
俺は、しばらく時間を潰した後、三時に校舎裏に着くように歩き出した。
続
この物語はフィクションです
食い逃げは法律で固く禁じられています。