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明日死ぬ僕たちは  作者: 髙木悠ハ
1/7

一、未成年だから

「どうせ明日死ぬならやりたいことをやろう」

そう提案してきたあいつは本当に浅はかで、おもしれぇ奴だった。

僕たち七人は、明日死ぬ。

明日、僕たちは学校の理科室で爆破に巻き込まれて死ぬ。七人全員その未来を夢で七日間見続けたから、間違いない。

死の運命ってのは変えられないっていうから、きっと登校しなくてもどうにかして死んでしまう。

だから何もできない、何も止められない僕たちは、好きなことをとことんすることしかできない。

「俺は、酒飲みたい。タバコも吸いたい。」

「私は、今金欠だから、万引きでもなんでもして好きなものをとことん手に入れたい。」

「俺は好きな物をたくさん食べたい!でも金無いから、食い逃げとか?笑」

「俺は家族とずっと過ごしてたいな。」

「私は、好きな芸能人に会いたい!あと、テレビに映りたい!」

「俺は…」

少し間を空けて、提案した張本人、灰谷幸助が「一日中ゲームかな」と笑顔で言った。

「柳は?」

幸助が僕に話を振る。

「僕は…家族に感謝の手紙をたくさん書きたい。あと…す、好きな人に告白したい。どんな展開になってもいいから。」

「柳らしいな。じゃあみんな解散。現在朝の五時。ここ(校舎裏)に集まるのは深夜の三時な。好きなこと、とことんしようぜ。じゃ。」

そう言い、僕らは解散した。



俺は香月勇気。

俺は今日、未成年は本来、固く禁止されている飲酒、喫煙をする。

なぜか。それは、明日俺らが死ぬからだ。

俺は、冷蔵庫に大量にある缶ビールを一本持ち、父さんの部屋からタバコの箱を盗み出して、人気のない路地裏に来た。

缶ビールは、酔ったら一日が台無しになるからあとで。俺は、タバコの箱を開け、一本取り出して、ライターで火をつけた。

臭い。臭いけど、父さんのあの姿を思い出して、人差し指と中指でタバコを持ち、吸い込んだ。

「ゴホッゴホッ」

咳が出る。でも、すぐに慣れた。

口から白い煙が出る。白い煙が、空へと舞っていく。

ずっと憧れていた。早く大人になりたかった。

高校三年生18歳っていう微妙な歳の中で、俺は喫煙と飲酒が本当に憧れだった。

俺はしばらくそこで時間を潰した。

暗くなった頃、俺はタバコの箱を握りしめて、俺はゲイバーに行った。

ここも、大人になったら行きたかった場所だ。

みんなには言えなかったけど、ゲイバーに行って、男とセックスがしたかった。

ゲイバーに着くと、たくさんのイケメンがそこにはいた。俺は、カウンターに座り、一人でカクテルを飲んだ。

父さんがカクテルは不味いって言ってたけど、本当なんだな。でも、大人に一歩近づいたような気がしてすごく嬉しかった。

酒を嗜んでいると「こんばんは」と一人の若い少年がやってきた。


俺は唖然とした。

そいつが、中学の頃転校した好きな奴、田口直人だったからだ。

「え、嘘。勇気くん?」

「直人…お前…」

「しっ。」

直人は俺の耳元で「未成年ってこと秘密で働いてるの。だから何も言わないで。」と囁いた。

「あ、ああ。わかったよ。」

「ところで、なんでここに?」

「…えっと、明日俺死ぬんだわ。だから男とセックスがしてみたくてここまできたってわけ。」

「え?死ぬ?」

いや、そりゃ理解できるわけないよな。

「わかるわけないよな。」俺はそう言い、笑った。

「いや、別に。…今日0時頃空いてる?」

「え?」

直人は俺のカクテルを持つ手に手を重ね、「迎えのラブホ、行かない?」と言った。

「えっと…それって」

「セックス。したいんでしょ?明日死ぬから。」

「したいけど」

「俺じゃダメ?」

「…」

俺は性欲を抑えきれず、キスしてしまった。

でも直人は慣れてるのか、舌を入れてきた。


そのまま0時になり、俺は缶ビールを飲み干して、ラブホに来た。

部屋に入るなり、俺は息もできないほどのキスをした。

「直人…俺ずっとお前が好きだったんだ。」

「ごめんね、いなくなって。」

「許さない。」

「俺も、勇気が好きだ。今も。でもそんな、死ぬなんて。」

「ごめんな。」

「許さない。勇気を本気で好きになったからゲイバーで働いてたんだ。忘れようと。でも無理だ。」

「俺も。」

コートを脱ぎ捨てて、服を脱ぎ捨てて、直人をベッドに押し倒した。

「いつの間にそんな乱暴な性格になったの?」

「直人がいなくなってからだよ。」

「へぇ。俺のせい?」

「ああ。」

息もできないほどの舌が絡む長いキスを交わしたあと、直人が「死ぬなら、生でヤろうよ。俺が入れるから」と言ってきた。

「上等だよ」

二人の声が室内に響き渡る。生暖かい、初めての感覚が俺の中で掻き乱れる。

俺は、本当に幸せだと心から感じられた。


ベッドで寝っ転がっていると時刻は2時だった。

「俺、もうそろそろ行かなきゃ。」

「…俺も。勇気、ありがとう。」

「うん。直人も、ありがとうね。」

直人は俺に抱きついてきた。胸に顔を埋めて。

「折角会えたのに。離れたくない。」

その声と共に鼻水を啜る音が聞こえた。

「泣くなよ。俺まで泣きたくなるじゃんか。」

「だって、だって折角好きって言えたのに。やっと本当に好きになれた人に再会できたのに。」

「俺も、初恋の、大好きなお前に会えたのに、死にたくないよ。離れたくない。でも、ごめんな。」

「最後に、最後にキスさせて。」

「うん。」

キスは、涙で塩辛かった。

俺は、直人と別れを告げ、集合場所へ向かった。



この物語はフィクションです。

未成年者の喫煙、飲酒は法律で固く禁じられています。

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