「かわいそう」
テストが終わった。
色々な意味で終わった。
『もみじちゃんの次のテストの赤点の数とか?』
せめてそこは数じゃなくて有無を聞いてくれよ、とあの時の俺はなんとか不満を述べてみたけれど水都からは「まぁ、夢を見るのは自由だからね」なんて言われてしまったのは記憶に新しい。
・・・何が言いたいかって?
凄い良い笑顔でピースサインをしながら近付いてくるもみじとその後ろを同じくらい良い笑顔で付いて来ている水都がもの凄く嫌っていう話だよ。
悪意の有無ってのは事態の状況によっては関係無いって事でもある。
後はチラッと見て顔をそらす通行人とかな。
教室前の廊下だって言うのに何で綺麗に道が空いてるんだよ。
「煉牙、聞いてー!今回は2つだけだった!」
「・・・オメデトウ」
「声小っさ」
やかましいわ。
半分はお前のせいだ。
「でもほら、レンゲくんの占いで言っていた「良くて2つ。悪くて4つ」っていう中では最良だったじゃない」
「俺が悪くて4つって言ったのは前みたいにもみじが暗記したやつ全部ふっ飛んだらそうなるって話だよ」
「今回は大丈夫だったよ」
「何よりです」
今回もそうだって言われたら俺の心が折れるよ。
いやもう半分折れそうなくらいダメージは受けてるけどね。
「ーーもしかしてレンゲくん知ってた?」
「えっ、そうなの?」
「・・・・・・」
凄いね煉牙、ともみじに言われると何とも言えない気持ちになる。
これが罪悪感ってやつか。
いや待って言い訳させてくれ。
「お前たちに自分のテストを返される時に「もみじ赤点だからな」って先生に言われた俺の気持ちわかるか?」
「かわいそう」
やめろ。
素で同情するな。
水都に普通の反応されると予想以上にくるものがある。
俺のライフはもう少ないんだから優しくして。
「もみじ追試は?」
「んー、後日って言ってたよ」
「後日」
「夏休みとかかな」
「夏休み」
「かわいそう・・・」
やめろ!
言って良い事と悪い事があるんだぞ!!
かわいそうだって思うんだったら優しくしろ!
「優しくされたら逆にしんどいでしょ」
「それもそう」
理解が深くて助かるよ。
いや、助からない。
普通に致命傷だ。
「まぁまぁ。言っても2つだけだし大丈夫だよ。元気出して煉牙」
「なんで俺が赤点取ったみたいな慰められ方してんの?」
「ちなみにレンゲくん何点?」
「今回のテストに三桁以外の点は無い」
「100点のテスト返されてるのに赤点の話されたんだ・・・」
「水都、いい加減にしろよ」
「まだ何も言ってないじゃない」
「態度が五月蝿い」
あと口にしなければ良いっていう話でもないからな。
目は口ほどに物を言う、って言うけどお前の場合は口よりも目のほうが雄弁だぞ。
関は逆だけど。
「ーーそう言えば関は?まじで最近会ってないけど」
「あっ、そうだった」
忘れる所だった、と言って水都が1度ポケットに入れた手を再度こちらへと伸ばしてくる。
閉じられた手の中は見えないけど、今の会話の流れでーーというか関で思い出したって事でーーその中身は想像に難くない。
何よりもさっきからもみじの耳で正解が存在を主張してるんだよ。
「関が「待たせてごめん」って言ってたよ。はい、どうぞ」
「ありがとう。気にしてないって伝えといて」
なんなら平和な日々を過ごせて幸せだったよ。
水都の手からころんと俺の手に落とされたのは想像通りーー約束通りーー小さな赤い石が嵌め込まれたファーストピアスだった。
・・・思った以上にまともそうなやつが来たな。
いや、金属部分に使ってるの関鋼だし石もコレ宝石なんだろうけど。
「煉牙、私着けたい」
「いいよ」
「やった。ちょっと屈んで」
もみじの手が肩を押すのに逆らわずにそのまま少し腰を落とす。
廊下のど真ん中で中やってんだって思わなくもないけど、賢い中央魔法学園生達は静かに横の教室通ったり踵を返したりしてるからちょっとくらいなら許されるだろう。
「アタシが刺した時はあんなに嫌がってたのに」
「あの時はまだ肉があったろ」
ピアスホールを開けるのとピアスを着けるのを同列に語るな。
「あれ?煉牙、右耳は?」
うっかり険悪になりかけた俺達をもみじの疑問が引きとめる。
「開けてない」
「えっ、なんで!?私には両方開けたのに!」
「声が大きい!というかアレはもみじが開けろって言ったんだろ」
「あっ、そうだった」
別に開ける意味も無いけど閉じる意味もないからそのままになっているだけで特に深い意味はない。
勿論、開ける時痛かったから嫌になった、とかでもない。
「そういえば、と言えば」
水都が思い出したように口をひらくーー今日ちょっと忘れすぎでは?
「関も赤点だよ」
「え」
「ピアス作りに熱中し過ぎて学科全滅だって」
・・・・・・そんな事ある?
というか2人してこっちを見てくるんじゃない。
俺のせいじゃないだろーー無い、よな?




