表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西堀の隠居のはなし  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/23

溜まる闇



「セイベイさんが言わなければ、だれも、ことの真相をセイイチさんに伝えない。サネさんは言いたくてしかたなかったそうです」


「・・そりゃ・・そうだ・・」


「だから、うらみが、溜まってしまった」




 腹に溜めて、時を過ごすうち、その父親がおかしなことを言い始める。


 ―――新しい社を作りたい。


 独り言もはじまり、これはもしやボケたのか、と、思った息子は 

   



         ―――毒を手にする。





「・・・それって、やっぱりあの、ネズミ用のやつですかい?」

「それが、はじめはどうやら違うみたいです。」

 


 ある日の食事に出した佃煮を、隠居が手もつけずに戻してきて、器の下に小さな紙切れがさしてあるのにサネは気付いた。紙にはひとこと。

     

      『 早々に 捨てよ 』

 

 すると、珍しくも若旦那が台所を訪れ、親父は全部食べたか、と聞く。

 サネは、直感で、はい、とうなずいた。




「その夜に、ご隠居は腹が痛いとひと芝居うって、見舞ったセイイチさんに、確かめたわけです」


  ――― おまえ、そんなにあたしが憎いかい?殺しちまおうと思うほど


 白い顔をひきつらせたあと、息子はやさしくこたえたという。


  ――― かわいそうに。親父、とうとうボケが始まったのかい?





「ひとりごとのせいもあってご隠居の様子が、少しおかしいのは本当だったから、セイイチさんは、本当にセイベイさんがボケた、という方向に、もっていきたかった」

 

 まずは、周りから。


 近所の商店主をはじめ、おかみさん方に、この度手前どものセイベイがとうとう―― 。と話を広める。


 新しい祠も、どういう目的かはわからないが、ともかく作ってやり、独り言をつぶやく年寄りを、外の人間に見てもらう。


 ――うちでも困っておりまして。

 と苦く笑ってみせれば、あっという間に話は広まる。




「セイイチさんは、セイベイさんに、本当にボケてほしかった。周りがそうみれば、自然と自分でもそんな気になってゆくのを、期待してた。そしてセイベイさんは、その期待に、わざとこたえた」

「え?」


胡坐の膝に肘をのせ、お坊ちゃまは窓枠で照らされる薄い布団をみつめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ