表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西堀の隠居のはなし  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/23

知りませんでしたか?


「 ―― そういえば、セイベイさんのおかげん、いかがなんでしょう?」

 お茶を飲み、若旦那となにやら話すお坊ちゃまの声がいきなり耳にはいった。


 ――なに言ってやがんだ。さっき、あんた  ―― 言おうとして、先に出た息子の「良くありません」という言葉に、それを失う。


 若旦那は、なんとも暗い笑いを畳に落とした。


「――どうやら、ヒコイチさんや、お客様がいらしてるときは、気が張るのか、元の親父のようですが、・・・二人きりになったりすると、ひどいものでして・・・」


「そうですかあ。二人きりになると、やはり、自分の命を狙うのか、とか、セイイチさんに言うのですか?」


 あいかわらずのお坊ちゃまは、天気を確認するように聞いている。


「ええ・・。自分でそのように言ったことすら、あとで覚えておりません。とにかく、波が激しいのです」


「それでも、この母屋には呼ばずに、庵でひとり過ごして、大丈夫なのですか?」


「元々、頑固な人ですからね。呼んでもあそこを離れようとはしません。それに、むこうにいれば、わたくしと言い争うこともなく、ただ、独り言をつぶやいているだけですので・・・。きっと、本人もあそこに居るのが楽なのでしょう」


 ああ、ひとりごと、ねえ。と、お坊ちゃまは出されたお茶に手をのばす。

「―― なんでも、乾物屋さんが、戻ってきたってことですけど」


「乾物屋さん?・・・カンジュウロウさんが?・・・それを、親父が・・・セイベイが、そう、言ったのですか?」


「ええ。ですから、ヒコイチさんなどは、どこかの怪しいお坊様に、おかしなことを吹き込まれて、騙されているんじゃないかと。新しいお社のこともそのせいじゃないかって心配してるのですよ」


「・・・そうですか・・・」


「あれえ?もしかしてセイイチさん、この話、知りませんでしたか?」


 息子は、どうみても驚いていて、知らなかったことがうかがえる。


 だが、ふいに口を結んで顔をあげると、そこまでひどいとは・・、と小さく首を振った。

「ご心配いただいてるような、お坊様と縁はございませんが、実は、・・・」


 どこかで聞いたように、ここだけの話にしていただきたいのですが ―― と語りはじめたそれに、ヒコイチは眉をよせる。


 この息子は、言葉と逆のことを望んでいるようにしか思えない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ