(レオンハルトside) 親友の助け舟
今回はレオンハルト目線でお送りします!!
幼い頃からの記憶が、愛をつくった。
そんな不思議な番外編です。
どうぞ、ご清読くださいませ!
「そうなのですが、やはり……私自身、大それた事なのですが……サフラン王女殿下に密かに想いを寄せておりまして」
アドリアンの言葉に、思わず息を呑んだ。
あいつの言葉は、きっと。俺の為に、嘘をついてくれたのだろう。アドリアンは俺に真意こそ確かめてこなかったけれど。俺の想いびとがアリシア様であることはきっとお見通しだから。
それはそうだ。物心ついた時には一緒にいた、1番古い友人だから。俺のことも、お見通しだろう。
だから、俺とアリシア様を遠ざけることがないよう、自らを犠牲にしてまで協力してくれた。そう思って間違いはないだろう。
しかし。このまま誤解をされてしまえばいずれ困るのはアドリアンだ。
……あいつが本当に心から愛する人ができた時、この噂がもしも流布していたら?
…………それを理由に本気を信じてもらえなかったら?
その時にはきっと、アドリアンは笑ってくれると思う。
だけれど、俺自身が自分を許せない。
だから。今この噂を知っているのは俺と、アリシア様と、アドリアンだけ。
アリシア様の誤解を解かなくては。
その時には、俺の本心を伝えなければならないだろう。
ただ、愛する人に本心を秘めるのも、親友を犠牲にしてまで自らの想いを押し倒すのも、このクレマチス王国の次期公爵として、1人の男として。道義にかなわない。
だから、絶対に……
◇ ◇ ◇
いつの頃だっただろう。
俺は、どこかでアリシア様を見かけたことがある。
とはいっても、気づいた時にはすでに頭の中にあっただけだ。
見かけただけなのか、話したことがあるのか。彼女の名前は何なのか。それすらもわからないが、呼吸のように、元から知っているかの如く、鮮明に覚えていた。
ずっと頭に焼き付いて、気づけば、寝ても覚めても彼女のことばかりだった。
歳を手で数えられるほど幼いながら、毎夜毎夜、彼女が夢に出てくるほどに。
そんな彼女とどこで、なぜ会ったのか。
なぜこんなにも心惹かれるのか。
そんなことは判らないが、ただずっと想っていた。
光陰矢の如し。10歳となり、3ヶ月前に行われた学院の入学式で、アリシア・マーガレット侯爵令嬢と再会をしたのだ。
ストロベリーブロンドの髪に、キャメルの瞳。
ココア色の光沢感のあるリボンがとても似合う。
何より、その名前を知ることができた幸福感。
その刹那、俺は―――
アリシア様に、数年越しの2度目の初恋をしたのだ。
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あんずっこ