初めての学友
正門前は多くの入学生とその両親・使用人で賑わっていた。
たった10歳の子供をその身一つで、貴族社会のしがらみの縮図である学院に送り出すのは大層不安が残るだろう。
◇ ◇ ◇
「なるほど、組分けも爵位で決まるのね……」
学院の組は6つ。
Aから順に実家の爵位が高いことになる。
王族・公爵家に次いで爵位が高いため、私もA組だ。
そして出席番号も爵位の順。同じ爵位を持つ人は50音の順だと言う。
私は1-A、5番。
1番はサフラン王女殿下、2番はレオンハルト次期公爵様、3・4番は私と同じ侯爵家のご令嬢。
……きっと、サフラン殿下とレオンハルト様がご結婚されるのだろうな……。
同じ組なんだもの。きっとそうね。これは運命よ。
それとも、サフラン殿下は他国に嫁がれるのだろうか。
全て私には関わりのない話だけれど、少しは興味があったりする。
まあ、サフラン殿下が望まれる方とご成婚されるはずね。この国でも数少ない女性王族だもの。
◇ ◇ ◇
入学式控え室でもある教室に向かうと、その席順は出席番号順に縦4人ずつ並んでいた。
つまりは私の隣は1番の殿下と、9番の侯爵令息で。
「ごきげんよう、マーガレット侯爵令嬢!」
「まあ、サフラン王女殿下! お声をかけてくださるなんて光栄ですわ!」
「いいえ、当然のことよ。お隣の席だもの。爵位とか気にしなくて大丈夫だから、これからよろしくお願いしますね」
「はい! 私こそよろしくお願いいたします、王女殿下」
殿下がこんなにも気さくな方だとは思いもよらなかった。きっと、王女教育の一環なのだろう。こんな初対面の、社交デビューすらしていない侯爵令嬢に声をかけてくださるだなんて。
「ええ! ……あの、もしよければなんだけど、サフラン様、と呼んでくれないかしら? 王女殿下って堅苦しくって」
「もちろんでございます! 私のことも、ファーストネームで呼んでいただけますか?」
「もちろんよ! 改めて、よろしくね、アリシアさん!」
「よろしくお願いします、サフラン様!!」
入学早々、王族の友人ができました。
◇ ◇ ◇
「これより、王都立学院入学式、A回を執り行います。入学生は壇上に並ぶように。」
校長先生の指示に従い、アリーナの壇上へ並ぶ。
因みにA回は貴族・王族の回、B回が平民回なのだそう。
「A組。サフラン・クレマチス」
「はい」
「レオンハルト・コットンツリー」
「はっ」
どうやら私も名前を呼ばれたらカーテシーと応答で返すらしい。
そんなことを考えていると、
「アリシア・マーガレット」
「…! はい」
あぶない……少し集中力が途切れていた……!!
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あんずっこ