大司教の日常
「素晴らしい!!素晴らしい!」
狂ったようにそう連呼する男の周りは
白い粉状の物が大量に詰められた瓶と倒れ伏している人が
囲っている
「ついにできたぞ!アセチルサリチル酸だ!」
ただの解熱鎮痛剤である
そして作るのにはそこまで苦労するものでもない
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「大司教〜〜〜〜!!何やってんですか!?」
「お〜 君は確か太郎君ではないか
どうしたんだ そんなに大声を出して?」
朗らかな笑顔でそう答える男は
周りの状況など見えていないようだ
「私はアリエルです!
誰ですかその極東にいそうな名前の人間は!
そんなことよりも
またこんなにして!私はいつも言ってますよね!?
早くかたづけますよ!」
「全く・・・なんでこんな人が・・・」
ボソボソとつぶやきながら掃除を始めるのは
先ほどまで笑顔で答えていた男の側近である
そして 今アリエルに怒られてシュンとしているのが
この世界の医と科学を司る神であるバミーティアを
信仰するバミーティア教のナンバー2である大司教の役職を任されている
ただの研究狂いである
「ふぅ〜 あらかた片付きましたね・・・
で? 今回は何を作ったんですか?って
すぐに研究を始めようとしないでください!
片付けるの大変なんですから!」
「ん?んあぁ・・・すまない」
「いいですから
それで?何を作ったんですか?」
「いや ただのアセチルサリチル酸を作った」
「効力は?」
「いや まぁ 解熱鎮痛剤」
「ハァ〜 なんでそんなものを・・・
もういらないでしょ」
「いや まぁ まぁ・・・」
男はタジタジな様子で言葉に詰まっている
「なんであなたが黒風病の特効薬なんて
作れたんですかねぇ・・・本当に・・・
もっとちゃんとした人だと思ってましたよ・・・」
「いや まぁそれはまぁ
知ってるやつに似て・・・いや
なんでもないです・・・
適当に探してたら見つけました
はい ストレプトマイシンです!
じゃじゃ〜ん!」
男がそう言うと周りに光とリボンが飛び散る
「ハァ〜 まぁ聞いても終えてくれないんでしょうけど・・・
あとで片付けときますからそれ
ほら 早く行きますよ」
アリエルの表情は微動だにしない
いつものことのようだ
「どこに?」
拗ねた表情で男が答える
アリエルが呆れたように顔を歪める
「本気で忘れてるんですか?
・・・教皇様のところに行かなければいけない予定でしたよ
今日は」
「ん〜 おー そうかそうか
あの爺さんもよく生きてるよなぁ」
「・・・あなたのおかげなんですけどねぇ?・・・
本当に なんでこんなにしっかりしてないんですかねぇ?」