天使のおしごとっ!
働きすぎな世の中を憂いた女神は、大天使リリエルをホワイト労働を司る天使に任命した。皆が幸福な世界を目指したい、リリエルはとても嬉しそうに働き方改革に着手した。
反対に魔王は働きすぎな世の中を利用することに、大悪魔カムッチャをブラック労働を司る悪魔に命じた。人間の不幸は蜜の味なカムッチャは人間たちの生命力を根こそぎ奪うことに執心した。
リリエルとカムッチャは犬猿の仲である。
彼女らの下で、部下の天使と配下の悪魔はバチバチやりあった。
私は天使ミラ。ホワイト労働を司る大天使リリエル様に仕える、清き心を持った天使だ。
ある日。違法な労働時間で酷使されている従業員をそれとなく促して、ライバルであるブラック労働を司る悪魔の息がかかったブラックな企業を告発させる。という重要な大仕事を適度な休憩をはさみ時間を掛けて終えた私が、逮捕された企業の重役どものくそうという声と逃げ帰っていく悪魔の悔しそうな顔を思い浮かべながら、
「やってやったぞ、ざまあみろ悪魔に耳を貸したうんこ企業と××××悪魔」
悪魔の不幸は蜜の味と、すっきりした表情で天界のマイホームに向かい飛んでいると、
「ミラ」
目の前にしゅんとワープしてきた、リリエル様に呼び止められた。リリエル様は幼い幼女の容姿に違わず子供みたいなところがあり、私を驚かせるためにいつも唐突に現れる。
以前までの私は、これにおったまげてしまい、泣いてしまったこともあった。
が、今日の私は一味違う。
「なんでしょう」
私は事前にワープの兆候を察知するという技能を身に付けていたので、平然としていた。
「……くそう」
悪態をついた、リリエル様は悔しそうだ。
私は不敬だけど、ざまあと思う。
「で、なんでしょう。またブラック企業を捻り潰すお仕事ですか?」
「ううん、違うよ。連勤なんてそれこそブラックだよ。お疲れ様だから、バカンスへのお誘いだよ。南国行って遊ぼう♪」
一緒にワープ。人が居ないところにそっと降り立ち、衣装もチェンジ。
リリエル様と南国の海で遊ぶ。
私は提案した。
「ビーチバレーをしましょう。人間の目もありますし、天使としての能力縛りで」
リリエル様は幼い容姿に違わず、大天使としての能力を封じられれば、平均的な10歳児程度の運動能力しかない。
「いいよ、やろう」
いたずらをしてくるリリエル様に何度煮え湯を飲まされたことか……。
日頃の雪辱を果たすために、顔面狙ってボールをレシーブ。リリエル様は最初はにっこりと「へたくそ~♪」なんて小馬鹿にしていたが、何度も当てると流石にむっとして、
「なんかコントロールしてない? わざとじゃないの?」
勘づいてきた。
なお、天使は頑丈なので問題ない。しかも彼女は大天使なので、尚更だ。
うるんだ目で、うらみがましそうに見てくるリリエル様をみれて、私はとても満足した。ビーチバレーって楽しいな。
しかし、
「よっと。当たんないよ~」
かわされ始めた。
またもやかわそうとしてきたので、今度は奇術で幻影のボールを増やす。
「わわわわわ!」
ひゅんひゅんひゅんひゅんと飛んでいく、幻影のボール。
リリエル様は悲鳴をあげながら必死に避けて、砂に足を取られて、よろめいたところに目掛けていった最後の一つが本物だ。
「あいた! 反則! レッドカードで退場!」
「奇術は封じられてないもんね」
「屁理屈だ~! 怒るよ!」
「すいませんね。リリエル様のあどけないお顔を見ると、どうにも的だと認識してしまうんです」
「意味分かんないよ! ひどいなぁ~、もう。普通に楽しもうよ~」
「はーい」
そうやって私たちはバカンスを楽しんだ。適度に働き、充分すぎるくらいに休息を取る。これが天使のお仕事だ。