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推理小説におけるトリックの作り方

推理小説における密室殺人トリックの作り方

作者: 髙橋朔也

 密室殺人。それを聞いたら、大体の人は難しいトリックで成り立っていると考えるはずだ。だが、密室殺人といっても簡単なトリックはいくらでもある。少し、例をあげてみよう。

 密室殺人を扱った推理小説は1841年から存在していた。それがエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』だ。まあ、『モルグ街の殺人』が世界で初めて書かれた推理小説ですが......。

 さて。『モルグ街の殺人』のトリックは実に簡単である。窓に釘が打たれているから密室になっていたが、釘は内側で折れていたというものだ。つまり、これは抜け穴がある密室物だ。

 コナン・ドイルの『四つの署名』は作中であっさりとホームズに見破られた抜け穴があった密室殺人が登場していた。ドイルのもうひとつの密室殺人物としては、読者の順位付けでもドイル本人の順位付けでも一位だった短編『まだらの紐』。これは小さい穴から蛇を部屋に入れて殺したというトリックで、抜け穴の密室殺人トリックに分類されるだろう。

 江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』は明智小五郎が初登場する作品で、人の監視で成立した密室殺人だ。トリックはこれも単純で、密室だったある区域(広義の密室)内に犯人がいたのだ。

 江戸川乱歩が執筆した他の密室殺人物は『屋根裏の散歩者』だろう。トリックは屋根裏のすき間から、寝ている被害者の口に毒を垂らしたのだ。

 また、横溝正史の『本陣殺人事件』。金田一耕助の初登場作品であり、雪が要因で生まれた密室殺人。これは機械仕掛けで密室になっていた。

 今、例に出した密室殺人物は全て名作の域に入っている(はず)。このように、密室殺人のトリックは抜け穴でも機械仕掛けでもいいのだ。それこそ、江戸川乱歩の『黄金仮面』で二階の床がエレベーターのようになって一階に下がる仕掛けがあるが、そのような仕掛けを使っても密室殺人は密室殺人だ。

 しかし、ここでひとつの問題が生じる。ジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』では『密室講義』というものがある。密室殺人トリックの分類だ。その『密室講義』では、人の出入りが可能な抜け穴や凶器を通すことのできる穴がある密室は下等だと一刀両断している。カーの考えに則ると、例として出した『モルグ街の殺人』『まだらの紐』『D坂の殺人事件』『屋根裏の散歩者』『本陣殺人事件』は下等なトリックになるということだ。それに、抜け穴などの密室殺人トリックは読者に批判される傾向があるらしい。古典推理小説ならまだしも、現代で抜け穴を使った密室殺人トリックは罵倒されるはずだ。

 ただ、抜け穴以外の密室殺人トリックだと少し難しくなってくる。そんな場合は凶器の消失と被害者が犯人というトリックを利用すればいい。一人二役は実に魅力的だ。自殺を他殺に見せかけるなら、密室殺人としてのハードルは下がる。一人二役での密室殺人はやはり、凶器の消失も非常に重要なことだ。消失する凶器としてポピュラーなのは氷だろう。だが、氷では面白味に欠ける。『本陣殺人事件』やドイルの『ソア橋』のようなトリックを使ってもいいだろう。

 凶器では、かなり面白いものもある。ブラックジャックという凶器で、巾着袋やビニール袋があればいいのだ。その袋に重く硬い物(とりわけ、小銭や石などでいいだろう)を詰める。それを使用すれば殺傷能力は高く、簡単に消失させることもできる。


 密室殺人トリックでは抜け穴がまず一番疑われる。だが、読者が疑う抜け穴は家具の裏か凝って『モルグ街の殺人』のように釘が打ちつけられた窓か扉のはず。しかし、苦肉の策で抜け穴を拡張すれば容易なことだ。床を残し、家全体を持ちあげればすむ。警察は床と家が繫がっているかなど調べないし、推理小説は作り話だと割り切ればいいだけのことだが、ここまでくると、ミステリーでなくコメディにジャンルを変えた方がよい(笑)。初心者なら抜け穴を使った密室殺人から作っていくといいと思う。暇があれば、密室殺人ミステリーを書いてみるといい。

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