62話 クラン結成《後編》
「……分からない、です。一体何を言っているのか、、」
「あんたらしくないな。まあ、そう言えるほど俺もあんたのことは知らないのだが、、」
そう言ってアザミは自分の眼を指差す。
「知っているんだろ? この魔眼の力を」
「……そう、ですね。なるほど魔力を解析したのですか」
アザミの魔眼は魔力情報、魔法陣、魔法式などを解析して相手の魔術を模倣することが出来る。ゆえに、一度見た魔法式と照らし合わせれば術者の特定も可能なのだ。
「新人戦のとき、通信用呪符に込められたあんたの魔力を見た。同じ魔力を探したぜ。AにもBにも、当然S1にもいなかった。そして今日、訓練してたC組の生徒30人の中にもいなかった」
「私が、この学校の生徒ではない、という可能性は?」
「考えなかった。というか、グリムの知り合いなら俺らと年は変わらない。さらにあのときあんたは言った。『決勝戦を見た』と。あれを見れるのは限られた人間のみ、だ。例えば、参加者だったり、な」
アザミの言葉に少女は黙り込み、何かを考える。
「なるほど、です。グリムさんのツテという情報から年齢を絞り込み、私の言葉から人物を絞り込みましたですか。いくつか至らない点はありますが、、まあ良いでしょう。アザミさん、あなたの言う通り、私が情報屋のリン・クラウスです」
リンがペコリと頭を下げる。
「クラウス、、アミリー先輩の妹、か?」
「そう、ですね。そうなりますです。ただ、姉と私ではスペックが根本違いますですが」
「そうか、姉妹か。確かに話し方とか表情とか髪色とか似てるな」
「不思議ですか? 遺伝子レベルで一緒ですので当然ですが……」
リンが不思議そうに首を傾げる。アザミが「いや、そうなんだけどさ、、」と苦笑いを浮かべる。
「そういえば、何の用ですか? 私の正体をべらべら話に来たわけでも無いですよね?」
「ああ。俺達がクランを作ったことは知っているな?」
「もちろんです。メンバーは今12人です」
「さすが、情報屋。ついさっきのことまで知っているのか。だが、不正解だな。メンバーは12人じゃない。リンで、13人だ」
アザミの言葉にリンがポカーン、、と立ち尽くす。
「……正気ですか? 私を誘うなんて、、」
「正気だし本気だ。リンの情報とか、収集能力が欲しい」
「それはどうもです。ですが、その見返りが欲しいのです。私は情報屋。見返り目当てに人の情報を売り買いする売人です。なにか見返りがないと、、」
「そういうと思った。さっきも言ったとおり、俺達は今13人のクランだ。そのメンバーなら、その情報を自由に入手できるぞ。売られるのは困るが、知的好奇心は満たされると思うが……」
「――既に私がカウントされているのは解せないです。が、その条件は確かに魅力的です。あなた方双子に関しても、知りたいことはたくさんあるです......」
リンの心は揺らいでいた。確かに、1年のオールスターとも言えるほどの生徒たちが集まっているアザミのクランは気になる。そして、まだ知れてない情報を得れると満足するのも確かだ。でも、、
「――入ってくれたらクリムパニス大墳墓について詳しく教える」
「ぜひ、よろしくおねがいしますです」
知的好奇心には勝てなかった。我に返ったリンは自分がアザミの手を握っているのを見て「はぁぁ!!」とびっくりした表情になる。
「……私は情報収集意外に役に立てませんです。あと、人見知りですので大勢が集まる場所が苦手です。それでもいいですか?」
「もちろん。人見知りでも俺とは話せるんだな」
「あなたとは成り行きです。まあ、治していいたいとは思っていたので、いい機会です」
こうして正式に13人めが加入した。
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「ふぅ、、」
自分を落ち着かせようと、アックが軽く息を吐く。大丈夫だ、一度戦った相手。昨日の敵はなんとやらということわざも東にはあるらしいし、、
「――失礼します。ゴードン・アクセル君はいますか!」
「目の前におるぞ」
ドアを開けたアックは、まさかの展開にびっくりして尻餅をつく。
「う、おお! ゴードン君、? いや、なんで――」
「なんで、とはなんなのであるか? 我はただ帰ろうとしていたところだったのだ。そこに貴殿がドアを開けたのではないか。して、なんの用であるか?」
ゴードンの迫力に思わず「ゴクリ......」とツバを飲み込む。
「……あのさ! 俺達のクランに入ってくれないか!」
言えた! と、心のなかでガッツポーズをする。
「くらん? 何であるか、それは」
「あー、、一緒に過ごす仲間? お互いに切磋琢磨して、強さを磨きあう仲間ってとこかな……」
「して、リーダーは貴殿であるか?」
「クランのリーダーはアザミだよ。俺はクラスのリーダーだ」
説明しながらだんだん状況に慣れつつある自分に驚く。
「アザミ、、我を倒した男。そんな男の下につくか、、」
ゴードンが「フンッ!」と鼻息を吐く。
「悪くないのである。我の新しい主君にとって不足なし。このゴードン・アクセル。お力添えいたす」
アックがゴードンの手を握る。
(これで、、いいんだよな? 誘えたんだよな?)
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「ありがとうございます。助かりました」
「良いってことよ、シトっち。はい、あーん、、」
パクっと、シトラがシャーロットが持つスプーンに載ったゼリーをパクリと食べる。
「うん! 美味しいです。やはり利き腕が使えないとしんどいです、、」
シトラが包帯でグルグル巻にされた右手を恨めしそうに見つめる。
「退院はいつだっけ?」
「1週間後、です。なのに、アイツはこないんですよ!?」
「アイツ? ああ、お兄ちゃんか。そうそうシトっち、放課後にアザミくんが女の子と話してるの、みちゃったんだけどさぁ......」
「なんですって? 私は入院しているっていうのに、、そうですかアザミ。ライバルで勇者で妹の私より学園の女を優先しますか……」
ヒュウォォ、、と風が吹き病室の気温が数度落ちる。
「――風呂だけじゃなくて病院まで寒帯にするつもりか?」
「コンコン」と開いているドアをノックしてアザミが立っていた。
シトラが枕を投げつける。
「聞きましたよ、魔王。あなたの役に立って借りを返そうと頑張った結果、腕を折った妹よりも別の女との用事を優先したそうですね、、」
「ちょっとまて。おい、シャーロット。何を吹き込んでいるんだ?」
アザミがジトーっとした目でシャーロットを見る。シャーロットは口笛をスースーと鳴らしながらそっぽを向く。
「はぁ。シトラ、誤解しているぞ。俺は別に遊んでいたわけじゃない」
「へぇ。じゃあ、何をしていたんですか?」
「……俺の得た特権、クラン設立のためにメンバーを集めていた」
「クラン、ですか。で、メンバーは集まったのですか?」
「ああ。あと2人だ」
そう言ってアザミがシトラのベッドの枕元に立つ。
「シトラ、シャーロット。お前たちで最後だ。俺のクランに入ってくれ」
「私は良いわよ。面白そうだもの。シトっちはどう? 生徒会のクランにも誘われているんでしょ?」
「――私は、聞かないでくださいね?」
シトラがそう言ってニッコリと微笑む。
「そう、だな。約束したもんな」
5歳のとき、星の見える丘で誓った。『今の生活を守るために、共闘する』と。あの日からアザミとシトラはは“魔王と勇者”から“兄と妹”になった。
「じゃあ、早速行くか。皆を待たせているんだ」
そう言ってアザミがシトラの体を抱き上げる。足と方に手を回し、お姫様抱っこと言われるポーズで。
「え!? ちょッ――」
「我慢しろ。こっそり抜け出すんだから、、、それにデパートの帰りもこれだっただろ……」
「あ、あのときとは状況が違いますぅぅ!!」
アザミがシトラを抱きかかえたまま窓から飛ぶ。
シャーロットは黙って手をふり、それを見届ける。
「さて、と。私は正攻法で学園に戻るとしますわ」
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聖剣魔術学園のシンボル、時計塔。その下の空き教室の扉を開く。
長らく使われていなかった教室からは木の匂いがする。前日に掃除はしたが、まだ設備も何も整っていないスペース。そこに15人が集まる。
アザミ、シトラ、アック、グリム、エイド、ダグラス。トーチ、ジョージ、フレイア、クレア。レイン、アネモネ。ゴードン。リン。
「よく集めたね、こんなメンツ」
トーチが集まった面々を眺めてそういう。各クラスからの選りすぐり。まさに1年オールスターと言って申し分ない。
「リーダー。最初の挨拶を頼むわ。クランの名前も、まだ聞いてねんだぜ」
「分かってるよ、グリム。……皆、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。このクラン設立の目的は“魔界への対抗”だ。もしも、のとき。皆で戦うために、作った」
アザミが面々をぐるっと眺める。集まったメンバー、誰にも文句はない。全員の表情からも否定は見えない。アザミがバッと両手を広げる。
「ようこそ、俺達のクラン。オルティスアローへ!」
〜2章「双星と聖剣魔術学園 迷宮攻略編」完〜 to be continued……
第2章「迷宮攻略編」完結です。ありがとうございました。
そして第3章「精霊の守り人編」もよろしくおねがいします。
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