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10話(2) 勇者たる覚悟

【聖剣魔術学園豆知識】

クレア・スノウ 1年S1組。恥ずかしがり屋のため、すぐにスススとフレイアの後ろに隠れる。引きこもりがちで、狭いスペースがあるとそこに収まってニマニマ笑っている。ちなみにそれを見られると茹でられたかのように顔を真っ赤にする。


リヴァ・フレイア 1年S1組。身長なクレアとは正反対でどんどん突っ走っていくタイプ。そのためクレアによく止められる。狭いスペースを見つけたらなんとかして拡張したくなる性格。なぜこんな正反対な二人が一緒にいるのかと言うと、ただ家が隣同士だから......と言われているが実際は―――。


その実力はまだベールに覆われている。

「何をするためって、そりゃァ、騎士団に入ってこの国を守……」


 この国を守るため、少年はそう言いかけてハッとした表情になった。いつの間にか教室内も静まり返っていた。アザミの質問の意図を悟ったのだ。


「守る? ならば力がいるな。勇者になるか? 魔術師になるか? ……笑わせるな。……誰かを守る仕事をしようとしているのに、お前は人を傷つけられないとでも言うつもりか?」


 冷たい目で少年と、さっきまでザワザワと不安そうに口走っていた教室の皆を見回してアザミは続ける。


「敵を殺す覚悟がないやつは誰も守れない。そんな甘い覚悟ならココに来るべきではないな。そうだろ? ここは聖剣魔術学園―――将来国を守護する王都騎士団の勇者や魔術師を育成する機関なのだろ? 今戦えないやつがどうしてたった3年後に人を殺せる。誰かを守れる。……戦えないなら帰れ。邪魔だ―――」


 その言葉に誰も何も言い返せなかった。多少暴言が混ざっていたり、気持ちを一切考慮していないところはあるが、それでもそれは反論できない事実だったから。目を背けていた正論だったから。

 黙り込んでシーンとした教室でアザミの言葉を黙って聞いていたハイルがパンパンと手を叩く。


「はいはい、そこまで。……アザミもグリムも落ち着きなさい」


 その言葉でアザミはそっと目をつむりふぅー、と息を吐く。そうして余計な力を抜いたアザミはグリムと呼ばれた赤髪の少年の上からスッとどいた。グリムはゆっくりと立ち上がり、ポリポリと頭を掻きながら、


「悪かったよ。……急に“殺し合い”なんて言われて気ィ動転してたんだ、、、」


「……いや、俺こそ言い過ぎた。戦場に出たことのない15歳にはキツくて身も蓋もない話だったな」


 アザミはそう言ってチラッとグリムを見ると、特に頭を下げたりはしないながらも言葉上で謝罪する。グリムも別に本格的に謝るつもりはない様子でフンッと目を逸らすと、その地殻に座ったままのシトラに軽く頭を下げた。


「シトラさん、だっけか。悪かったな。ついカッとして手ェ出そうとしちまって」


「いえ、、私もグリム君の気持ちも考えず軽率な発言をしてしまいました。ごめんなさい」


 シトラが頭を下げるグリムに気にしないでください、と微笑んだ。ハイルはアザミの言葉に静まり返った教室、そしてその静けさの中にいつもとは違った色を見て「へぇ......」と思わず笑みをこぼした。


「……どうやら覚悟は決まったみたいだね?」


 そう言ってハイルが生徒たちを見回す。誰の目にもすでに戦う覚悟が宿っていた。アザミの言葉に感化され、そうだと気がついたから。親を守るため、大切な人の力になるため......各々がなんのためにこの学び舎に来たのかと言うことをハッキリと思い出したから。だからその手には力が入り、その目は強く輝く。


(例年この意識付けに苦労するんだけどね。ハハハ、やっぱりこのクラスは、特にあの双子は面白いねぇ)


 そんな皆の様子にハイルはクスッと笑った。そして、


「よろしい。覚悟もやることも決まったことだし、早速具体的なことを話し合っていこうか。じゃあ、まず手始めにリーダーを決めよう」


 そう言ってハイルがまたその羽ペンで黒板を叩いた。すると描かれていた文字がバラバラと形を崩して消え、その代わりに座席表とそれぞれの名前が浮かび上がった。


「じゃあ、リーダーをやってくれる人はいるかな?」


「……そのリーダーというのは何をするのですか?」


 ハイルの言葉に本日三度目、アンカーが質問をする。それを見てハイルは、忘れてた! と頭を軽く叩いてリーダーというものについて説明を始めた。


「……一言で言ったら皆のまとめ役、かな。戦闘中に指示を出す司令塔だよ。もちろん、現実リアルと違って新人戦の王様とリーダーは必ずしも同一人物である必要はない。戦いや訓練の際に皆をまとめてさえくれればいいんだ、リーダーはね」


 そう説明をした上でまた、ハイルは「やってくれる人〜?」と再び挙手を求める。すると今度はスッと一本の手が挙がった。


「じゃあ俺がやります。確認ですけど、本当に俺が王様である必要はないんですよね?」


 そう言って手を挙げた男、アンカーが立ち上がる。その確認に「もちろん」とハイルはニッコリと頷いた。


「じゃあリーダー、挨拶をお願いしようかな」


 ハイルに促されてアンカーが黒板の前に立った。ハイルよりも身長は高く、このクラスでおそらく一番だろう。アザミはふーん、とアンカーの話に耳を傾けてみる。


「えっと……俺はアンカー・スレイフィールです。気軽に“アック”って呼んでくれ。リーダーになったわけだけど......まぁ、リーダーと言っても皆と同い年だし、出来る限り皆ロ仲良くしたいと思っているから気兼ねなく話して欲しい。これから1年間、よろしくな―――!」


 少し緊張しているのか声が震えていたが、それでも勇気ある行動とハッキリしたスピーチにワッと拍手が起こった。アックはそんな皆の反応に少し照れくさそうにしながら席に戻っていく。それを見てチラッとシトラは隣のアザミに目を向けた。


「アザミ、あなたはリーダーをやらなくても良かったのですか?」


「……ふーん、意外だな。お前のことだから魔王である俺がトップなんて許さないと思ったのだが?」


「―――怒りますよ? 私はアザミの事は認めているんです。それに魔王とか勇者とかもう関係ないって誓ったじゃないですか!」


 そう言ってシトラがプク〜と頬をふくらませる。アザミは不満顔のシトラにアハハ、と笑いかけ、


「冗談だよ、冗談。……まぁ、俺じゃなくてアックでもいいと思うけどな。アックは責任感もありそうだし、リーダーには適任だと思うぞ。何より下の……周りの意見をしっかりと聞けるってのがリーダーには必要だからな」


 そういうアザミにシトラは渋々ながらも頷き、スッと前へと視線を戻した。アザミは「そんなこと言うってことはシトラ、アイツ俺にリーダーをやってほしかったのか?」なんて勘ぐるが、別に言葉にすること無く同じく視線を前へと戻す。ハイルは皆の目が集まったことを確認して、


「よし、リーダーも決まったことだし、今日のホームルームはこれで終わりにしよう。新人戦の本格的な話し合いは明日から。それでいいね? リーダー」


 ビシッと羽ペンの先でアックを指しながらのハイルの言葉に、「はい」とアックは頷く。


 こうして入学初日から波乱の幕開けとなった双子の聖剣魔術学園での生活は放課後へと突入していくのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 初級学校、中等学校を卒業した2人が有名魔術師や学校行事をよく知らないというのはおかしいと思うのだが
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