四十二話
お久しぶりです。本日より、更新再開でございます。いつも通り、六時更新。少ないストックがきれるまでは連投です
この帝都、引いては我らが帝国中に分布している私のCCSBやTUSB等の『駒』。最近作り出した二つは本当に名の通りにしか成らない、そのような存在だ。しかし、『駒』は二つだけではない。
寝たきりの状態でも術式を編むぐらいはできたし、術者から独立して動くこれらの生体術式ならば、僕が意識を割かずとも勝手に動いてくれる。故に、この世には『駒』たちは幾体も存在するし、彼らは帝国に、エルカミス家に、僕に律する様に動いている。最近まで全個体の確認ができていなかったが、『駒』にとっての実働部隊、使い捨ての人形達、歯車人形の作成にあたって、現状を把握した。
壊れているモノはなかったし、暴走しているモノもなし、それぞれが増えつつ与えた役目をはたしている様で、何よりである。無論人類種全体に関わるような問題はキチンと解決している様だ。特段大きな問題の種はなく、だいたいは厄災の類の呼び出しをシャットアウトしただけである。犯人などその辺りは地域を治める国の問題だ。
まぁ、この帝都一帯を担当し、周辺の敵勢力を妨害、弱体化する、味方勢力を支援、育成する、自陣の強化。この五つを目的に、問答無用で帝国以外の勢力その全てに喧嘩を売る完全自立反応型連鎖結界生体魔導群体術式、略称〈影絵〉がいる限り、帝都に問題はないことは確定していたので、私は気負いなく眠りについていたのだが。〈影絵〉が消滅しているようならば、そもそも帝国は地図の上から消えているだろう。
最近は地域の独立化が進んだり、貴族派の者どもが帝国に反する行為に準ずる行動をとり始めたりと、完全に帝国の勢力とは言い切れなくなり、多少機能不全に陥っていたようだが。暫定的な行動として、勢力の分裂を誘発させていたようだし、手を加えるのは止めることにした。本人も怯えていたし。
『GUOOOOOOOOOOOOOO!!!!!』
発生源は遠く、大きくかつ低い遠吠えが帝都より離れた山中まで響いた。減衰しているであろうソレは木々が育てた青々とした葉を揺らし、実っていたその一つを落としさえした。
獣類種、それもまた群れを成す魔物の咆哮、この叫び方は総攻撃を指す物だった筈。しかも、闇属性魔力が感じられる。なかなか手強い相手になりそうだ。
まぁ、今は直面している問題に取り掛かろう。改z……改善案を考えるのは後だ。
内患外憂でも無し、なればこそ憂いを断ち切らなければ。可能な事は可能な内に、王国に逃げられては溜まったものでは無い。
ペルソナを私の周辺探知術式に接続させ、あらゆる情報を映し出す。気分はチェス、だからこそ最短経路でチェックメイトを叩き込む。
「何処の誰だがは知らないが、相応の報いを受けてもらおう」
デスゲームと行こうじゃないか。
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「分かった。私は先ず帝都防衛の現状を打開し、遊撃にまわれば言い訳だ」
隊の前方に立ち、迫り来る目の紅い黒狼を両断し私はメイドに-今し方敵の首を跳ねた-問いかけた。味方との擦り合わせは頻繁、そしてしっかりと。
「ええ、ドール達の挙動が安定し始めましたので。彼らが他の戦力と同じ程になれば、戦局は持ち直すでしょうから」
現状の帝都は城壁から内に攻め込まれていないが、打って出られる状況では無い。後方から聞こえる混迷と不安の混ざった声からするにそう易々と解決できるものでは無いだろう。
突発的な出来事、かろうじて動いているのは、各城壁に駐在している衛兵たちと自発的に動いてくれた各組合、今回の式典に勢力を集めていた教会のみである。軍も騎士団も、帝宮も一枚岩では無い、今暫く立て籠れば騎士爵たちが動いてくれるだろうし、その安心感に何処か頼っている所があるのだろう。情けない、とどうしようもなく重いため息が溢れてしまった。
しかし弱点はある。広大な帝都を包囲するように展開している敵軍は横に伸びて薄くなっている。アレクの言う『駒』が防衛戦力として数える程に成れば、援軍に来ている私達が浮いた隊となる。しからば敵の層を分断するのみだ。
「安定化まではあと如何程か、私とて無尽の力を持つわけでは無いのでね」
性懲りも無く襲いくる紅い目の魔物たちを薙ぎ払う。魔物相手の初陣以来、此処まで激しく戦うのはいつぶりだったか。久々に限界が頭の隅に過ぎった。
「後二時間ほどと仰せ使っています。あの馬鹿が本調子を取り戻し始めるのもありますが、今が正念場でございますね」
ふむ。ならば部隊の皆を少しずつさが下がらせて、此方の体力が下がらないように立ち回るか。今必要なのは敵の攻撃から街を守る事、倒すことではない、か。
「フェイミ!疲れが見える者から順次下がらせろ!私は今しばらく敵を蹴散らす!」
メイド長の名を呼んで、簡潔に命令を下す。彼女であれば、戦闘音の最中でも聞き取れるだろう。忠誠心といったものを、一部を除いて体言している人物であるし。
「我が剣は朱に染まり 我が鎧は錆を纏う 我こそは屍の山に立ち 血を啜る者 火依て大火と成らん エンチャント『血の業火』!」
何処からともなく幽し火が血より舞い上がる。踊るように、引き寄せられるように、私の周囲をぐるぐると廻り、その円を次第に小さくして空に掲げた愛剣に吸い込まれた。瞬間、鍔から悠々と剛炎が立ち昇り、刀身を覆う。
術の効果に怯え、後退していた魔物達が耐えきれなくなったのか、蛮勇なモノから襲いかかってきた。
胴体を薙ぐ様に一閃、│急所《首》を狙う必要は無い。焼けた切り傷を、剣の軌道をなぞる様に剣の形を成した灼熱が襲う。付与術式による二段階の攻撃、これでとどめを刺しに前線を少しでも離れる危険をなくせる。
強力な火属性を宿す魔物、その爪を用いて作られた我が愛剣といえども、敵の身を削ぐたびに切れ味が落ちるのは宿命。その度に研ぐ手間を省くこともできる。更に、この術式は手にかけた生命が多い程に力を増す。
「隙は減り、長く戦える、一石二鳥という訳だ」
敵の勢いは依然衰える兆しはない、しかしこちらの守りの構えは順調に整いつつある。
体内を血脈に乗って巡る気功を一層に滾らせ、剣を握る手に力を込める。胸いっぱいに息を吸って、大声で叫ぶ!
「勝機は我らにありッッッッ!!我らが安寧を脅かす不遜なる者どもに死をくれてやれッッッッッッ!!」
『うおおおおおぉおぉぉぉ!!!』
それからしばらく、私率いる部隊が、西門を守る部隊達が、当に敵を追撃し討滅しようとしたその時、前方より巨大な気配が出た。まるで、反撃とでも言うように。
帝都を西方に位置し、住民達の資源となってきたその森から、夕刻の影から、這い出たソレは巨大な咆哮を放った。
私達のそれより、遥かに激しく余りにも一匹とは思えない強さを持った咆哮は瞬時に西門を、帝都を呑み込んだ。
「GGUUUUUOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaa!!!!!」
完全自立反応型連鎖結界生体魔導群体術式、術名略称〈影絵〉
イーミール君が作成した群体生命術式の集合体『駒』の内、三番目の古株。
本文の通り、帝国に属さないあらゆるモノに喧嘩を売り、帝国に傷をつける前に破滅させる、贄にする、誘惑、支配、統合することを目的に創られた。帝国内の派閥争いに己の根底命令である『帝国の繁栄』との人工知能が衝突を起こし、機能不全に陥っていた。が、それ以外には基本的優秀であり、すべての敵勢力は順調に収縮、味方は驕らない程度に拡大を繰り返していた。魔物に関してはしれっと人の始末をしたり、冷や水要因の為に活用していた。イーミール君が都合よく素材を手に入れられたりするのは彼女のお陰てある。
貴族達の離反は彼女に寄るものでは無く、原因は不明。抑々、彼女には勢力争いに巻き込まれると消える可能性がある弱小貴族を保護するという名目で引き抜いていた。他にも分裂工作は国内の犯罪を未然に防ぐという大義名分を用いている故に、彼女には不可能である。
今回の敗因は相手が魔物であるために、大した警戒をしていなかった事と魔王がここ数年息を潜めていた事にある。
割と長いこと働いていた結果、帝国の人間は『帝国は精霊の祝福を受けている』と認知したので、彼女は世界の理に従い、精霊としての存在でもある。階級は精霊王。属性は光 闇
(イーミール君が施した精霊化処理と同じものが勝手に成った)
後書き
前書きにも書きましたが、お久しぶりです。
この七ヶ月、私が何をしていたかと言えば、遊びながら設定やらスキルアップやら、成績を上げる為に全力を尽くしていたりしていた訳ですが。実のところは、執筆自体はサボり気味でした。後々考えてみると、週一七千書いてた初期の筆者異常なんですよね。今は、一日五百を目標にちまちま書いてます。
そんな訳で、ストック切れたら定期更新に戻りますね。やらないと忘れる人に書きだめは無理だったんだ……




