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二十八話

 体に自然に動くままに、シンプルな装丁を手に取る。

 

 右開きに、硬い表紙を開く。

 

 長い長い文字の羅列が、見えようとしたその時。

 

 独りでに、エイリエスの書がバラバラと風が無い状態で暴かれる。

 

 状況を解決しようと、離した手を再び近付けた。しかし、その行為は二度目の変化を図らずも起こす事となった。

 

 指先が無い風に靡くページに掠った時、極彩色の光が飛び出した。

 

 空中で弧を描いたそれらは、一瞬僕と向き合った後に高速で動き、僕のまわりに虹の輪を構成する。

 

 輪型のシンボル、精霊、この二つから成る現象は……

 

「フェアリーサークルかっ!」

 

 精霊界との通路の役割りを果たすそれが、渦を巻いて僕を包み込んでくる。

 

 最後には卵状の壁となって視界を光が埋めつくした。

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 紫一色に身を包み、帝国を中心に活躍するSランク冒険者ディレア・シンリア・エルカミスと勝るとも劣らないと称される禁書の管理人は、己以外が居なくなった最深部で独り言ちる。

 

「精霊の巫女はその身に宿す深層因子、言わば精霊との親和性によってエイリエスの書の試練をスルーすることが出来る」

 

 何時だったか、読んだ文献に記された事実を確かめる様に口にし、少女の若さを残す唇は再度ひらく。

 

「けれど、今代の巫女は試練があった。そして、失敗した」

 

 巫女と称されながら、長く続く伝統に基づく信頼を失した少女を思い浮かべた管理人はもう一冊の複写されたエイリエスの書を開く。

 

 慣れ親しんだ本故にか、数秒後には目的の頁に達し、魔導書としての機能を発揮させた。

 

「謌代′蜿 蟇?k霎コ辟。縺埼≡縺ョ蟄舌r霎ソ繧 〈鬘倥>縺ョ遞ョ〉」

 

 それは、嘗ての術。今や音以上の概念含むそれは、光球を無から容易く創造し、弾けた。

 

「やっぱり……あの娘も今代も最低規定値を満たしている……」

 

 混沌とした状況を一人、正しく認識した管理人は悲しげに頭を振る。

 

 迷いを振り切る様に、目を背ける様に。

 

「変わらない。私の仕事は只、読み解くだけだ」

 

 パタンと、紙の音が長々と禁書達を震わせた。

 ――――――――――――――――――――――――

 

 チカチカと、目が忙しない。

 

 フェアリーサークルの励起と、素材になった?光達によって試練を龍人族(ドラゴンニュート)の視覚が仇となったのだ。

 

 普段から種族特徴の暗視を使っているだけあって、強烈な光に弱くなっていたのもあるだろう。


 もんどり打って倒れた訳では無いが、克服できないタイプの弱点なので、待つこと五分。

 

 まぁ、目が使えなくとも知覚できるから、移動と並行作業だけど。

 

 漸く開いた目に映る色は緑。伝承通りに、精霊界は自然溢れる世界なようである。

 

 魔術による周辺探索でも察知していたが、直進方向に木々が避けている。

 

 空間が歪んで、強引に道を作っている様子はない。かと言って、切り倒して作り上げものでもない。

 

 樹木が率先して避けている。

 

 そう表現するのが最適解なのだろう。地表には、根が動いた結果として乾いていない土が出ているし、通ってきた道が少しづつだが、狭まっている。

 

 急いでいく必要は無いだろうが、仮にもフェアリーサークルを用意してまで呼ばれているのだ。

 

 若干駆け足気味で歩いた林道の先に待っていたのは、無だった。

 

 いや、見えない様にしているのだろう。熱探知術式に微弱な反応があった。

 

「流石にバレたか」

 

 恐らく、居るだろうな〜と思った場所をジッと見つめていたら、空間が揺らいで白髪の丈夫が現れた。

 

「オレの名前は」

 

 どんな精霊なのかは予測が着いているし、どの書籍でも面倒くさいの渾名が付けられているので被せる。

 

「避役精霊源皇レチニエル。変色竜とも称されるカメレオンの精霊化個体。その生来は精霊となったという事のみ判明しており、現行ではエイリエスの書の門番を担当する。この役割は始源霊女皇ティターニアによって配された訳ではなく、審判と法の神ラジアによって選定されたものである。又…」

 

 クローネル・ヘンツ著精霊との交信に記された内容を一語一句そらえて、説明を全カットするとしよう。

 

「待て待て待て待て!オレがここに居る意味無くなるから!待って!っていうか、そこまで詳細に書いたの誰だー!」

 

「クローネル・ヘンツ、言い換えれば始まりの賢者イーステア」

 

 誰かと聞かれたので、素直に答えておく。機嫌を損ねると更に面倒になるって書いてあったし。

 

「あんにゃろうか!死んで尚オレをからかって楽しいか!おい!」

 

 と、その場で身を投げ出して叫ぶ世界最強種族。ゴロゴロ、転がりながらも衣服に砂埃が一切つかないのは、流石と言うべきか。それとも、この醜態を笑うべきだろうか?

 

 主に僕が行った行動は精霊との交信の中で挙げられたもので、僕が考えついたものでは無い事を明記しておこう。

 

 この様子を見る限り、始まりの賢者イーステアは英雄譚にあるような、公明正大な人物でなく、愉快な人であったようだ。

 

「だーもう!にゃろうの手記読んだんだったら試練内容は知ってんだろう?察し通り、オレが呼び出した幻影と戦ってもらう。勝てたら合格だ」

 

 実にシンプルな内容だが、キチンと理由があるらしく、エイリエスの書を手に取れた時点で、精神面に置ける判定はなされているから、らしい。

 

 高性能過ぎて最早内容のことを忘れそうである。

 


このまま戦闘シーンに写ったら凄まじくキリが悪かったので、ここまでです。


ゴールデンウィーク中に多めに書く予定なので、そろそろ七千文字には復帰出来るはず

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