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二十六話

 エルゼール爺の店を後にし、それでも時は未だ十二時を回っていない。


 かなりの時間を使ったと思っていたのだが、どうやら思い違いだったようだ。


 個人的にはベットから起き上がれる様になったから一番濃密な時間だったが。


 エルゼール爺のくれたヒントを読み解く限り、次に繋げる為にはエルフの郷に赴く必要がある。


 正確には精霊に深い知識を持ち、尚且つ極上の縁を持つ人物なのだが。


 そんな人物変人狂人ばかりのSランク以上の冒険者しか知らないし、精霊は自然と自由に動く人物を好む。


 つまり超ついても足りないマイペース。


 神々にでも聞けば良いのではないか、とも思ったが、その代わりに邪神の眷属を滅しろとか言われそうなので止めた。


 基本的に使命か試練の対価でしか人界に干渉出来ないからだとかなんとか。


 どっかにその原則を破った方がいない気かしないでもないが。


 本人達曰く、良心からくる罰のないルールなので、罰と言っても他の神々からしこたま叱られるぐらいだそうだ。


 そんな訳で、地道に創作を進めていこう。精霊の巫女?アレじゃ足りん。


 が、巫女派がここぞとばかりに人材として推してくる可能性しかないので、公言はするつもりは無い。


 猫の手も借りたい程の人探しだが、今回ばかりは自分の手の内の中で収めたい。


 誰かに知られる訳には行かない。公国戦も控えているが、それ以上に重要な事項だ。


 この方法を取るならば、ディーナとも距離を置く必要性は無くなる。個人的にはリターンが大き過ぎる。効率に置いても圧倒的な優良策だ。


 そのリスクに目をつむれば。

 ――――――――――――――――――――――――


 ようやく辿り着いた蜘蛛の糸の細さに嘆いていても、事は進まないので、一先ず休日を満喫する事にした。


 折角の休暇、頭を苦悩で一杯にしていては、休まるものも休まらない。


 店巡りを再開するとしよう。


 次に行くのは帝立エズスフ大図書館。


 帝都エズスフの名を冠した帝国の知恵袋。この大陸の図書の荒方は揃い、大陸一番と言っても過言ではない。


 帝都に所要がある際は帰るギリギリまでこの図書館に篭ったものだ。


 今回の主目的はその蔵書では無いのだけど。


 帝国の全ての情報を一括管理し、全土の税収、作物の収穫、経済状況、人口、果てには魔物被害の詳細までを収集、統合分析し、国政への助言を行う帝国情報庁の本部でもある大図書館の秘奥。


 古代遺跡から出土した遥昔の魔導書を集約し、その秘められた技術や高度術式を解析、使用可能な状態に復刻させる事を目的とする古代文明研究局。


 その中でも禁書と同格、又は類似、その又はそのものである物を徹底管理、又は封印、情報の引き出しを担う禁書管理課。


 その課長を勤めるとある外見少女に用があるのだ。


 僕の師匠は一人ではないからね。と言っても、彼女は教師で、師匠だった訳では無い。


 どっちが師匠とか言い始めると喧嘩が勃発する事になるので、シンリアが師匠、彼女が先生という形で落ち着いているのだ。


 実際、一度マジックの撃ち合いになり掛けた。


 周囲が更地になるからと、周囲の大人を巻き込んで説得にかかり、トランプのスピードで勝負する事になったのはいい思い出である。


 結局、禁書管理室に篭もりっきりの彼女と、冒険者で帝国のあちらこちらに飛び回るシンリアでは体力に差があり、シンリアが勝利したのだけど。


 高々言い方の問題なのだけど、本人達の本気度が凄い。


 そんな訳で、受付を軽〜く顔パスでくぐり抜け、足は迷うこと無く、事前に許可が必要になる規制レベル二のエリア向かう。


 この図書館は円形になっており、中央に向かう程にレベル分けした重要な書類、危険な書物が集まっている。


 ちなみに貴族は帝国の領地状況の報告書などが集められているレベル二までは許可なしで入る事ができる。


 目的地はレベル五、つまり皇族でも無断では入れない領域だが……


「アレク君ーーー!!」


 高速で転移、その速度のままに突っ込んできた紫色の物体を避け、その間に多重にかかった肉体強化術式に介入、全消去。


 よし、コレで危険は無い。


「酷いなぁ、わたしが補助術式が無いとまともに走れないの分かって解いたよね、アレク君」


「当然です。ローエンス先生は隙あらば僕の体を触ってきますから」


 僕の行動にぼやきを返す紫髪の美少女。


 彼女こそが禁書管理課長――禁書の黙示とも喩えられるが――ローエンス・ムゼール・イスタリア。


 イスタール皇家のその名から、家名にイス(・・)の文言がある事で、イスタール帝国に四つある内の筆頭公爵家イスレリア家の一員だと分かる。


「もー、大した意味はないって昔から言ってるじゃないか」


 ゆったりと、それでいてスラッとしたスタイルを隠していない魔女風なローブから垣間見える新雪にも似た白さの手足は華奢で、戦闘に参加する人物とは思えない。


 実際の所は、運動能力が悲しい程に弱い代わりに、恐ろしいほどマジックに傾倒した人である。この前六歳児に速さで負けてたよね…


「ローエンス先生って男子だったころの感覚まだ抜けてないですよね……」


 その為、僕の理論的な魔導術式構成にはローエンス先生が強く関わっており、実践的な魔導術式構成にはシンリアが関わっている。


 そんな経歴と僕との関係を持つローエンス先生だが、実は元男である。


 新たに出土した古代の魔導書を開いた時に晴天感という微妙な呪いにかかり、こんな惨状に陥っている。


 本人曰く『昔から女っぽいって騒いだ割には、変な心配してきたよね』


 本人は大して気にしていないので、公言することは迷惑では無い。しかし事が事だけに、社交界でも話題に出ることは専ら魔導技術関係である。


 そして、彼女が僕の体を触ってくる理由は知らない。もっと言えば知りたくない。


「ほかの子の体への順応速度は最高一ヶ月なんだけどねー。僕は十三年経ったけどまだだね」


 法的にも、雰囲気的にも女子扱いな人である。


 元々次男だったとは言え、公爵家の男児。それも筆頭公爵家ともなれば、当時の混乱ぐわいは相当なものだったそうで。本人は文字通り楽しんでいたそうだが。


 因みに、当時婚約していた婚約者とは契約続行の末の結婚だそうで。イスタール帝国が同性婚を認めているのもあるが、禁書管理課に就職した当時から性別変化のリスクについてちゃんと説明していたのも大きいらしい。


 現在のイスタリア夫人は第二子を妊娠中である。同性同士でそうゆうことをする用の魔導術式があるのだ。


 古代文明の人々は何を考えて居たのだろうか?同性婚を否定をするつもりはないし、実際目の前に幸せな知り合いがいるのだから、壊すつもりもない。古代人への疑問と技術の高さが積まれていくだけである。


 解決するあてには何時になったら辿り着くのだろう。古代遺跡への面会は断られるし……


 あぁ、ここに来た理由を忘れる所だった。昔の癖で、つい疑問に思いを馳せてしまう。


「そう、久々におねがいなんですが、出土した本と精霊、それも一番古い物を読ませてください」


 ローエンス先生はずこっけた時に付いた埃を払いつつ、首をかしげる。それは許可の悩みではなく、その理由を考えている様にみえる。


「魔導書を除けば出土品は見ても良いけど……なんで精霊についての書なんだい?」

「君の呪いには対して効果のある福音は無いはずだよ?」


 福音に限れば、精霊にアレを解く力は無い。下手を打てば、存在そのものがアレにのみ込まれて魔物に変貌することになる。いや、魔物以上に厄介なナニカ、か。


 けれど、切っ掛けを作りだす事は出来る。


「グルゼ・レイゼ男爵子息が居るでしょう?彼に少々魅せられてしまいましてね。全力で運命とやらに抗ってみるのもいいと思いまして」


「………ふーん」


 動機を素直に出した割には、感触は悪い。腕を組み、その場で考え込むのは、駄目な時の印だった。


 そのまま、諦めずに説得に次ぐ説得でどうにか許可が降りた。普通なら皇帝陛下に奏上して、数ヶ月待つ必要があるから、今回とは言わずとも逃がす訳には行かなかった。


「夢説きの泉の伝説でしょ?詳しく載ってる奴があるよ。中に入ると良い。統括司書長には話を通しておこう」


 そう言って、ローエンス先生は自分の許可証をゲートに翳し、中に案内する。細かった蜘蛛の糸が拠り合わさって、僅かに強くなった。後は全力で手繰り寄せるだけだ。


 思考は行動だけでいい、結果は後からついてくる。勿論、失敗するつもりも、予定も無い。

短くなった原因(part2)

 簡単なので四文で説明。

  生活リズムの変化に戸惑っていた。思っていたよりも若干忙しかった。微熱出した所為で若干作ってた書きだめが消えた。ソシャゲ楽しい。

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