十七話
本日、海幸高校の授業には異能操作の授業が含まれている。
それ故か、クラスメイトの気分は個々で大いに異なっている様だ。
面倒だ、と顔をあからさまに顰める者。憂鬱だ、と頭を抱える者。憂鬱に感じている生徒の方が多い様に感じられる。
俺は暇だなぁ、とのんびりとしている第三勢力だ。異能操作に関しては無問題である。
なぜ異能操作を嫌がるクラスメイトが多いのかというと、この海幸高校Mクラスの生徒にはMaverich、即ち異端児が集められるからだ。
異能に於いての異端児とは、素で強力過ぎるが故に自分で操作できない者たちの事を指す。
当然、覚など精神干渉系の異能も含まれる。
俺と響也は意図的にMクラスに入れられている。異端児の能力が暴発してしまった時に被害を最小限にする様に、都市上層部から指示を受けているからだ。
あくまで最小限、死人が発生しても最小限だ。
俺は精神干渉系異能の監視、響也は現象発現系異能の監視だ。
尚、顔を顰める者達は現象発現系異能の生徒である。暴発した場合、瞬間的に体育館の壁に叩きつけられる事になるからだ。
精神干渉系異能は最悪行使対象が廃人になる可能性があるので、基本的には僕との精神戦である。負けても気絶するだけなので、優しい。
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精神干渉系異能の練習場所は武道場、校内の雑音を聴かせない為、という配慮という名の隔離だ。
………別に普通の生徒よりも強いのだけどね?異能発動を防ぐ為に赤子の状態から封印しているだけだから、弱いと勘違いする生徒が多いのが問題だ。教師にも、その思想が生まれつつあるのも危険だけどね?
これはオフレコなのだが、封印は本人の意思次第で無理矢理解ける様になっている。普通の異能所持者と異端児、当然リスクは有るが操作可能になったらリターンの方が多い異端児を取るのは当然の事だ。
知識は武器。普通の生徒達が事実を知らずに不知の罪を犯し、死んだ所で気にしない。
異端児の方が産まれる数が少ないのだ、蟻の様にいる只の異能保持者がほんの少し消えても、大した損失では無い。これは海幸都市上層部、引いては管理者達の決定だ。
「詠唱隠蔽〈■■■■■■〉」
詠唱を隠したのは、その方が効果が低くなるからだ。異能が強い子は聞こえてしまうだろうが、そこまで強いのなら聞こえても問題無い。
さぁ、あと四十分。授業終了迄に気絶していない子はいるかな?
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開始十分、残っているのは二十人。その中には進藤もいる。
他の人には申し訳ないが、俺は進藤とLIOの話がしたいので殲滅させてもらう。
「出力上昇、術力増倍」
僅かに感じていた鬱陶しさが消え、精神への干渉戦は籠城戦へと変化した。
一人、また一人と倒れていく生徒達。残るのは異能効果規模比較等級、通称異能クラス。その中でクラス8以上の異能所持者だ。
毎度の事だが、粘るね?流石は異端児、イレギュラーの器だと言える。数にして六人。早々居たら困る異能しか無い。
「智狂愚死〈狂気の共鳴〉」
更に術式追加、結果的に進藤以外の生徒が倒れる。個人戦と行こうか。
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SIDE:進藤心鑑
今日は異能操作の授業がある。正直、この授業は嫌いだ。異能を使った目標なんか、無いのだから。
私の異能の大半は一つの機能に集約されている。心を読む事。そして相手の行動を予測すること、思考強化。あと目が良い事と、申し訳程度の身体能力強化だ。
小さな頃から異端児と言われ、母親から蔑まれ、姉弟からは馬鹿にされる毎日を過ごして来た。
その元にあるこの異能は嫌いだ。私から何もかも奪って、何も生み出しやしない。
かと言って、放り出す訳にもいかない。私は異能特待生として、海幸高校に入学している。
義母の命令で入学したとは言え、入学後の生活は大いに満足しているのだから。先生方には家庭事情は話しているし、理解して頂いている。………お父さんも引っ越して来たら良いのに。
ひとまず、愚痴を断ち切り異能を発動させる。途端に視界から流れ込む情報の量が格段に増加する。
覚の能力の一つ、視覚強化。鳥の様に四つの色覚を得る訳でもなく、只々目が良くなるという物。
武道場の硬い床に腰を下ろし、楽な体制を取る。清興君は異能操作の授業では全く手加減をしてくれないからだ。集中していなければ、ものの数秒で気を失ってしまう。
「詠唱隠蔽〈狂気なる啓蒙〉」
いつも通りの術。一瞬の内に、清興君に精神攻撃をする。清興君の言を信じれば、術は精神にジャミングを加える物だ。
ならば、ジャミングを自分の中に入れなければ対処できる。…勿論、理想論だ。
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私以外が倒れたことを感じ、視界に意識を傾ける。もう終わりか、と思ったのに、視界には巨大な木が聳え立つ世界が映る。
「混乱している所悪いが、ここは精神世界だ」
「とりあえず、現実では無い事は理解しました。こんな所まで作って、私と何をするつもりですか?」
流れる風の感触、鼻孔をくすぐる木々と大地の匂い、光のほんの少しの暑さ、ここまで現実に近づけるにはかなり魔素を使う筈だ。
「……個人指導?」
「やった本人が疑問形付けないでください!」
なぜ本人が分かっていないでしょう。清興君は気分屋ではなかった様に感じられましたが。
「覚は目に能力が集中しているから、特別な処置をしないとだな、と考えたんだ」
「分かりまりした。それで何をするんですか?ここを創る術しか使ったいない様ですし」
それ以外の術の行使痕跡は見受けられないので、まだ戦闘は始めないと思うのですが。
「そう、そこだ。君はどうやって俺の術を看破した?」
「どうやって……普通に清興君を見て、状況から判断しただけですが?」
それ以外に何が有るのでしょう?
「俺の術を感じるだけでも、相当なんだがな。普段から見れているなら、判断できないのは当然か」
「?何の話ですか?伝わり易くお願いします」
私を置き去りにして話を進めるのはやめて欲しい、まだ聞けていない事が沢山ありますし。
「進藤さんの目の異常さについてだよ。さぁ、特別指導といこうか」
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SIDE:清興時司
びっしり書き込まれたホワイトボートの前で持っていた木の枝を投げ捨て、問いかける。
「これで、進藤さんの眼の有能さが良く分かったかな?」
「はい。私の眼は自動で術や異能を解析するんですね」
解説中に、新事実発覚!みたいな顔をしていたので真面目に知らなかったらしい。
「ひとつ、実験と行こうか。一時開眼【艶福の魔眼】」(小声)
【艶福の魔眼】は魅了系の魔眼の中でも、ほんの少しの思考誘導と好感度調査しかないのだ。予想通りなら既に手遅れなので、【艶福の魔眼】で多少後押しされるぐらいだ。
予想通りの結果でも、妖怪つまみ食い女の持っている色欲眼程酷くはならないだろう。
……アレは酷かった。対象が私でなくて本当に良かった。とゆうか、なんであの女制御できたんだ?もしや、試行を重ねて……考えないようにしよう。絶対二百以上は喰われている、何がとは言わないが。
艶のある桃色に染まっているであろう左眼を進藤さんに三秒程向ける。申し訳ないが、計画進行の一時的な贄になってもらう。
こうゆう時は彼が羨ましくなる。解析スキルなら、こんな事せずとも判断できるのに。
「何かありましたか?清興君」
「なんでもないよ。次はもっと詳しく解説を入れようかと思ってね」
…予想が外れた?いや、あり得ない。次世代はこの子だ。一部解放と見るべきだな。
とゆうか好感度からして、やはり見られたな。どうしたものか。
「次の授業もよろしくね、進藤さん」
「はい、よろしくお願いします」
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春らしい温かい風が訓練場に注ぐ、剣を振る生徒たち、そこに加わる僕。なんでこうなった。
『第二皇女殿下の練習相手ならば、卒業しても練習に参加するのは当然では。主?』
『なんで素振りからなんだ。別に僕は普段から使う訳でもないんだから、やらなくてもいいじゃないか!』
何故だ―!使ったとしても剣達操るだけだぞー。初めは嗜むぐらいの気持ちで始めたのに、なぜこうなった。
『皇女殿下のお相手をするならば、相応の実力が必要と判断したご自分の所為だと思いますが?素振りが嫌なら、私と模擬戦をしますか?』
『しっれと思考を読まないでくれ、確かに読めるように術式を作った僕も悪いが。あと、模擬戦は当分やらないからね』
一回やったらぼろ負けしたので、勝負になる確信ができたらやることにしている。呪いを抑えれば勝負になるだろうが、あれはあれで準備が面倒なのだ。
『主の実力が上がるのを楽しみにしていますね』
そこまで言って念話が途切れた。術式介してガレアの位置情報確認したら、ダンジョン内。特に休憩中という訳でもなく魔物を切り倒している模様。なんでフミルとポテス、幻日、幻月もいるんですかね?コアたちはもう良いよ、好きにやってくれ。
「素振りはそこまでだ!ここからは自由練習とする!」
リンドス殿の授業にしては珍しく自由練習だ。僕の練習方法を決める権利はアルテミス殿下にあるので、さして気にすることでもないが。
「イーミール、学院を卒業したらしいじゃないか?おめでとう。従者として、一つ頼みがあるんだが――――
従者として、か。なら受けるしかないですね。態々幼馴染としてではなく立場で仰るのならば、考えるまでもない。
―――全力で試合をしてくれないか?」
その頼みは半ば気づいたものだった。なぜなら、卒業試験の剣術の試験を見ていたようだったからだ。近衛騎士の守られながらだったが、その顔立ちはガレアの剣に対する真剣な表情とよく似ていたから。
主が成長を望むなら、それを助けるのは配下の定め。いつだったか、『鴉』の一人が僕に言った言葉だ。
「いいですよ、やりましょう。ですが手加減はしませんよ」
「…ありがとう」
さて、シリスティアの完全覚醒といこう。
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陽光は南中から射し、似合わぬ夕暮れの衣はその熱を吸収する。熱は魔力へと変じて僕が空中に描く術式に吸い込まれる。
「権能励起『ハマリエル』【マリル】【ポテス】〈偃暗月呪喰〉」
「【龍器召喚】大いなる原初の火よ 光より分かたれし火の龍皇の御業 我が黒焔は万魔を贄とし遍くを喰らう〈黒の源燃〉」
背中から二対四翼の翼が生える。左の翼は白、右の翼は黒ですね。【救恤乃大聖天】の翼ほど大きくもなく、魔力も籠っていないので飛べないだろう。無理矢理開眼するのは厳しいから、白眼と金眼に変化させるに留めておく。髪は僅かに金のメッシュが入る程度、五年前と比べても回復には程遠い。
この魔力、流石は源皇ですね。剣に伝った魔力は黒炎に変換され、大太刀の燐光に吸い込まれ黒い燐光となって大太刀に纏われているようです。術式通りの効果が発揮されているようで何よりです。
「エンチャントを見逃して良かったのか?」
「戦いにて要となるのは技。力とて必要ですが、力を効果的に使えないようでは意味はありませんから」
「私は意志も重要だと思うがな、始めるとしようか!」
始めると言ってもどちらも動かない。アルテミス殿下は大剣を斜め左に構え、私は両手で中段に構える。獲物はどちらも真剣。私はシリスティア、アルテミス殿下は布都御魂だ。
丁度良く落ちて来た木葉を合図にして、アルテミス殿下が駆け出す。すれ違いざまの切り上げを横に避け、反転の勢いをそのままに乗せた振り下ろしを指向性衝撃魔力を込めた四本の翼で跳ね返す。四本も要らなかったですね、二本でいい。
距離が近いので、翼で殴打します。ですが対応され、刀で受けられました。後退させることができたので良しとしましょう。気功に加えて魔力も込めた方が良いですかね、それと評価を上げましょうか。
「呪閃流 呪いの型 一が技流【破勲堕天】」
「イスタール騎士流剣技 【義憤防塁】」
相手の力を侵食する気功を纏う突きは赤のオーラで止められました。ですが持続するはずのオーラは打ち消せたので無問題です。
「続けて呪いの型 二が技流【懺戒詩人】」
「っく!【落し獅子】」
私が放った十字斬りか放たれる斬影は上段からの振り下ろしで消されます。しかし、余裕がなさそうな割には技の冴えが変わりませんね。冷静さを失わず、大降りにならないのは良い事です。
「続けて 呪いの型 三が技流【呪侵烙印】」
「【武人無類】!」
【武人無類】は確か自己バフをかける物だったかな?【呪侵烙印】と相性最悪だね、【呪侵烙印】は五連撃で当たる程人体能力を下げるから。それにしても、よく防ぐね?技流が何時まで続くかな?
「続けて呪いの型 四が技流【迅雷影車】」
高速の三つの影が円を描く技のだが、振り下ろしが止められることで発動前に消されてしまった。また一から繋げないと。
「呪いの型 ……………
初めから試す為にやっているけど、成長が見れて楽しいですね。
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あぁ、残念ながら終わりですね。十まで繋がってしまった。奥義を止めることができるとも限りませんが、私の奥義を止めた人は五人ぐらいですから、厳しいとしか言いようがありませんね。
「呪いの型 奥義壱式 【雷鵬雷霆】」
十五連撃の剣戟と雷で出来た鳥による攻撃、ですが一撃目で寸止めです。雷鳥も一鳴きして消えてもらいます。
「私の負け、か」
「いえいえ、私が奥義を出すまで全て防がれる方がすごいですからね?」
大体二の技流の時点で当たりますからね。そもそも戦う機会なんて久々なので私の方が精彩を欠いていましたし。卒業試験?殆ど私やってませんが。
「あまり誉め言葉と思えないが…楽しかった、ありがとう」
「機会があれば又何度でもお相手しますよ」
周りは結構ひどいことになっていますがね。雷鳥の咆哮で生徒全員気絶してますし。
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今回の成果
イーミール君
ステータス
名前:イーミール・レオン・エルカミス
種族:龍人族
MJ聖者:シスム レベル25
SJ 銃師見習い レベル1
生命力:18,480/18,480
魔力:218,489/218,489
STR:155
VIT:116
INT:457
DEX:190
AGI:145
MID:477
スキル
召喚術 レベル45 従魔契約術 レベル45
錬金術 レベル55 死霊魔術 レベル45
光芒魔術 レベル1 疾風魔術 レベル1
暗黒魔術 レベル1 並列発動 レベル25
雷魔術 レベル35 影魔術 レベル35
空間魔術 レベル35 光芒魔法 レベル1
暗黒魔法 レベル1 疾風魔法 レベル1
光魔導 レベル35 闇魔導 レベル35
風魔導 レベル35 銃術 レベル1
学習 レベル75 解析 レベル35
上級剣術 レベル1 工学 レベル50
科学 レベル50 魔力学 レベル50
精霊学 レベル50
体力回復速度強化 レベル30
魔力回復速度強化 レベル40
イスタール帝国史 レベル50
礼儀作法(イスタール式) レベル60
話術 レベル50 速読 レベル75
ダンス レベル35
権能『ハマリエル』
称号
【聖者:シスム】【寵愛:シスム】
術式
【転移:シスムの神域『星辰の空間庭園』】【龍体変化】【龍器召喚】【マリル】【ポテス】
【夢想無兵の古戦場】【偃暗月呪喰】
技
呪閃流
スキル進化
中級剣術 レベル75 → 上級剣術 レベル1
プラス
過去のイーミール君?
『体のコリが取れましたかね?』
序盤で間違えて時司君視点で書いてしまった……そこまで情報出されてないから良いや。




