十五話
例の如く、零時。今日の授業は精霊学がある。つまり、精霊の巫女の諍いに巻き込まれる可能性がある。非常に、とても、この上無く面倒だ。
なぜ僕が絆され疑惑がかかっている第三皇子の尻拭いをしなければならないのか、理解に苦しむ。
まぁ、そんな事を考えても義務は変わらないので諦めるとしよう。
今日は授業以外に大した事は無いはずなので、朝食までに生産をして時間を潰そう。
手始めに酷い死に方をしたカエル君の皮膜を使った外套作りだ。解析。
[大溶岩蛙の皮膜]品質 A−
ビックマグマフロッグの皮膜。溶岩を泳ぐ蛙は己を高温の皮膜を一枚挟む事で、熱さを物ともせず泳いでいた。皮膜はその性質を故に、その内に熱を宿らせている。強い火属性体制と土属性体制、撥水性、防寒性を持つ。
このワインレッドの皮膜は確かに熱を持っている。だが、その熱を放たないのだ。その為バックを作れば、保温効果をつけることができる。今回は単に有用だから使うのだけど。
これを上手く仕立てれば【大地の記憶】でも通用する耐熱装備になり得るので、素材は惜しみなく行こう。
ガレアとサーラは自分でどうにかする用意があるそうなので、各自に任せてある。
「錬金術錬成術式素材〈大溶岩蛙の皮膜 三枚 熱吸の綿花のツイル 三枚 炎天の日金のインゴット 二個 慈緋の紅玉 特大 一個 大 一個 中 四個 小 二個 火炎魔石 特大 一個 大 一個 中 四個 小 二個 大炎知樹の枝 五本 上位溶岩蜘蛛の糸 五個〉リソース〈魔力 218,000 邪炎精霊の火炎魔石 溶岩上位鮫の火炎魔石 溶岩巨猪の火炎魔石 大炎知樹の火炎魔石〉」
初めに皮膜とツイルを上位溶岩蜘蛛の糸で縫い合わせる。皮膜は少し薄いので、皮を貼るみたいに行う。因みにツイルとはハットなどに使う硬めの綿素材である。
次に、大炎知樹の枝を使い、火を起こす。枝は一メートル程の長さなので、少し時間がかかった。何故燃えにくい火属性を持つ大炎知樹の枝を燃やす理由は、単に火という現象に火属性魔力を足す為だ。別に自分の魔力や魔石の魔力を火属性にして足せば良いのだが、この場合は燃えにくい物を燃やしたという結果の方が欲しかったので大炎知樹には薪になって貰った。燃えにくい物を燃やした結果は火の魔力が深まる縁になるので、手を抜く気がない今回は行った。因みに、空中で燃やしているので寮室が火事になるなんて事は起きない。
次に縫い合わせた布を使ってフード付きのローブを作る。この時にフードが付いている襟から帯の様な物に正五角形をつけた物を三本縫いつける。その内真ん中の物を少し長めにしてつける。
縫いつける終わる頃には大炎知樹の枝で起こした火が紅色になっているので、火天の日金のインゴットを溶かす。溶かす容器には、火の魔力を内部の物と混ぜる術式を刻んでおく。
インゴットが溶けてある間に、全ての慈緋の紅玉を魔宝石化する。その魔宝石には、耐熱結界、性能強化、耐火結界、耐土結界を特大サイズの一個を除く七個で発動させる。特大サイズにはローブに溜め込まれるであろう熱を魔力に変える術式と魔力を火属性に変換する術式を刻む。
インゴットが溶けたら、ローブに金で月と星の装飾を加える。背中の正五角形には各頂点を通る円を装飾で作る。首元に小サイズルビーを二つ使い、留め具をつくる。手の甲の上に当たる位置の布に中サイズルビーを二つ使い装飾と一体化させる。大サイズと残りの中サイズは背中の正五角形に五芒星の彫刻と火炎の魔法文字を刻んで配置する。特大サイズは留め具に合う様に調整しながら、二匹の東洋龍が尻尾を噛み合っている装飾をつける。金が余ったので、上位溶岩蜘蛛の糸の残りを金糸にして、背中に暗月とシスム様の紋章を組み合わせた紋章つける。
最後に魔力を込めて終了。
[緋天炎の暗月聖外套]
品質 S 防御力 +5,000 耐熱 S 耐寒 S 耐火 S 耐土 S 魔力青紫炎属性変換機能 熱魔力変換機能
大溶岩蛙の皮膜と熱吸の綿花を基本の材料にした青紫炎属性のローブ。所々にルビーを使った星の装飾がなされており、金の装飾は派手すぎず、謙虚すぎす、上手くローブを引き立てている。背中の金糸による刺繍は静寂と転生の女神シスムの聖印と、女神シスムの静寂の顕現たる暗月の紋章を描く。その他にも、金糸の刺繍は装飾を生かす様に入れられている。素材の限界が出されている。
ワインレッドが夕暮れの空の色に変じたのですが?結構気に入っていたのだけどなぁ。まぁ正装に使えるようになったからいいかな。
それと、僕の聖者任命お披露目は十五日後だそうだ。そのために普段着?となるローブを作った。聖地から帰ってきた大主教様曰く『聖者殿に相応の司祭服を用意しておく』との事だが。
二つ目は『龍眠り』という霊薬だ。効果は単純明快眠り薬。まぁこの霊薬を素材にして違う霊薬を作るので中間素材だが。因みに霊薬とはポーションの上位互換のような物だ。正確には霊薬を改良し、使いやすくした物がポーションだ。当然、メリットが大きい分、デメリットも大きい。『龍眠り』のデメリットは眠っている相手に寝ている間大きなバフがかかることだ。その為、『龍眠り』の名前の由来は龍が眠る程効果が高い、ではなく。龍のように寝ている間も隙が無い、の方が正しい。その効果故に体力のない病人に飲ませて、病気を治すのに使ったりする。
始めに静眠草と夢見茸を今まで使っていなかった錬金道具の一つ、抽出機で効果の結晶であるエッセンスにして取り出す。量はどちらも二十個だ。
次に『傷戻し』、ポーションの元になった言われる霊薬にエッセンスと蒸留水を加え、錬金道具の一つ、攪拌機で撹拌する。
撹拌した液体に悪夢呼びの花と夢宿りの蔦という毒草を刻んで入れる。次に誘惑蝶種の魔物の鱗粉、今回は上位誘惑彩蝶の鱗粉を加えて再び攪拌機に入れる。
最後に又々錬金道具、蒸留機で蒸留して終了だ。しかし、この蒸留が凄まじく時間がかかる。三分に一滴、ニ滴瓶に落ちるレベルで二、三時間はこの調子である。
…………ポツ…………………
ちょっと術使えば早くなるか、これは早い方がいいから気合い入れてやろう。やり過ぎても霊薬は古くなればなる程良い物になるので構わない。【龍器召喚】
「我が声よ響け 目に見えぬ時は その内に凡ゆる生物を内包せん 我今ここに時を一時とはいえ奪い取る その時は早まり その時は他を置き去る 〈時間加速:極大〉」
ティルフザールの魔力貯蔵は便利だなぁ〜。後で入れる必要があるけど、自分が消耗せずに使えるから。因みに、蒸留は既に終わった。パッと見、三十年ぐらい経ったと思う。
解析。
[龍眠り]品質 A 昏睡付与 +450日 バフ +450日(STR、VIT、AGI、DEX、INT、MID +1,000)
相手を長い眠りにつかせる代わりに、強大なバフを付与する霊薬。四十年物。
ん、中間素材が良いものになるのは良い事だ。………………扱えるかな?
三つ目は同じく中間素材霊薬『魔力湧き』。同じく効果は単純、魔力の回復速度上昇。デメリットはその回復速読の速さと量、質、濃さ。本人に扱えないレベルの魔力が生じて、魔力暴走を引き起こす。僕は使っても問題ない。
魔憑草と奪魔草、血吸草、日偽草のエッセンスを『傷戻し』に攪拌機で溶かし、火爪熊の爪など、魔力臓器五つを擦り潰して撹拌する。
再び蒸留して〈時間加速:極大〉をかければ完成だ。
[魔力湧き]品質 A+ 魔力回復速度 +300% 魔力質上昇 +300% 魔力濃度上昇 +300% 魔力回復量上昇 +300% 魔力深度上昇 +1
効果時間中、魔力の質、量、濃さ、回復速度が上昇する。四十年物。
中間素材が全て揃ったので、完成品を作る。
初めに月詠草、魔憑草、浄水藻、知与の朝露、上位暴走牛の乳、血吸桜の花、夜呼梟の影羽、響浄草をエッセンスにして、『魔力湧き』、『龍眠り』、『静知の秘』という気付け霊薬、の混合液に入れて攪拌する。
その後、幻現の蘭、薬蓄の瓢箪、闇切草を刻んでいれ、蒸留。そして【時間加速:極大】。
完成した霊薬は『宵の雫』。効果は長期間に渡る魔力回復速度上昇、集中力向上、バフだ。大体効果は三ヶ月ほど続くので、材料費からすれば大いに徳である。
三つの霊薬のデメリットを打ち消し、メリットだけを取る理屈は、単に打ち消し合わせただけである。だが、理屈が単純なだけでその調整は難しい。
しれっとここまで霊薬を作って来たが、本来霊薬は緻密な温度管理、素材の状態などの条件から猛烈な時間と回数が必要な物だ。
魔術でどうにか出来ない物もあったが、帝都に着いてから着々と準備をして来たからできた事だ。
因みにこの霊薬、素材の時点で一リットル程あるのだが、出来るのは試験管一本だ。このまま〈時間加速〉をかけて、効果をあげる予定だ。
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現在は、七時。懸念していた精霊学の授業だ。内容は契約精霊との親睦を深めるという物。中、大精霊が周囲にいると、小精霊が出てこないので、広い第一練習場で行われている。そして予測通り問題発生中、巫女の精霊とバk…第三皇子殿下の婚約者、ノーラル侯爵令嬢の人型精霊が仲違いを起こした。講師は第三皇子殿下の執事が嫌々止めている。
『俺は森にいた時からお前が嫌いだったんだよ、ジゼル!攻撃をする程では無かったが、契約者を貶すのなら話は別だ!』
『フハハハハ!当然の事だろう?その小娘が性悪で、阿保な事など』
やはりこうなるか、精霊同士の喧嘩は周囲に深く影響が出るから嫌いなんだ。僕はクレティアの貼った結界の中で、毛繕いをしているクレティアを撫でながら見ているから安全だけど。サーラも契約精霊の土色の獅子の耳を持つ少女とお茶してる。
止めないと駄目かなぁ?駄目なんだろうなあ。だって契約者同士が全然止める気配無いし。そもそもの原因は巫女がぶつかったのが悪いのだけど、そこからのノラール侯爵令嬢の指導が良く無かった。
よりにもよって第三皇子殿下との関係を話題に出したのだ。相手は政治に関心を持たない一平民、帝宮の情勢を話題に出した所で意味がない。どこぞの馬鹿はこれから覚えさせると言ったらしいが、当の巫女本人は統治学を選択していないという報告が来ている。
そろそろ精霊達が手を出そうとする頃なので、止めるとしよう。解決自体は簡単なのだ、問題は後処理である。
『クレティア、抑えに行くぞ』
『契約者の部下にやらせれば良いのではないかしら?』
『学院内に諜報員が多く居ることを知られたくない。それと、アルテミス殿下の従者が止めた方が収まりが良い』
『鴉』には帝国暗部に知られない様に阿h……第三皇子殿下の監視する任務があるので暇ではないのだ。
『分かりましたわ。止めると致しましょう』
クレティアが毛繕いをやめると同時に地面に突き立てられていたシリスティアを手に取る。む、やはり少し重くなったな。片手で持てない事も無いが。
既に獅子と鷲と殴り合いと化した罵り合いをしている空中に目を通し、クレティアに確認の目線を送る。
『いつでも構いませんわ、契約者』
了承が得られたので、鍵となる言葉を言う。多少厳しいが、あのタイプは一度痛い目に遭わせないと変わらないから仕方ない。精霊には精霊の都合があるように、人には人の都合がある。
「全員頭を冷やすと良い、ついでに肝もね。【解放:龍狼の咆哮】」
クレティアの咆哮と共に、空中の精霊二匹に向けられた剣先から白と紫の轟雷が放たれ、物質層で争っていた現し身が消し飛んだ。いずれ精神層で本当の体で意識と取り戻すだろう。
うん、オーバーキルだね。恐らく大精霊だろうから、解放を使ったのだけど。要らなかったね。
「何故御止めになったですか、イーミール伯爵子息様。私は間違った事をした覚えはございませんわ。愚かな平民に身の程を教えているだけでございます」
巫女はこっち見て目をウルウルさせてる。別に君の味方で来た訳じゃないよ?
「はぁ。問題があるのは行為ではありません、この騒動自体です」
「私は騒動を起こして――
「あなたは私が少しぶつかってしまっただけなのに、何度も悪口を言ったからです!そもそも、殿下は何も関係ないのに口煩く言ったから――
僕が収めに来たからか、巫女が反撃に出た。自分の契約精霊が一時的に消えたのに勇ましい事だ。更に面倒な事になる前に流れを断ち切って終わらせるとしよう。
「僕が言っているのはこの騒ぎ自体だ!あなた方の善悪や言い訳が聞きたいのではない、授業を止めた事に対する謝罪だ」
「なっ、貴方も私を悪く言うんですか……」
それっきり巫女はその場でシクシクと泣き出したし、ノラール侯爵令嬢は部が悪いと判断したのかカーテンシーをして練習場の出口に歩き出した。まぁ、シリスティアのしまいますか。はぁ、これ皇帝陛下に報告するの?
そこで流れを読まずに現れる一つの人影。龍角がある時点でアルテミス殿下が第三皇子殿下だが、角が捻れていないので第三皇子殿下だろう。第三皇子殿下とかち合ったノラール侯爵令嬢は、諦めた様に壁際に寄った。練習場を見渡した第三皇子殿下は僕の周囲を見て、眉を顰めて言う。
「一体何の騒ぎた!何故近年の自然を左右する精霊の巫女たるリフティが泣いている!」
此処で精霊の巫女と明かす、その判断自体は良い。だが、その声に答えるのはもう一人の学院にいる皇族。
「どうやらそのリース・リフティ嬢がノラール侯爵令嬢にぶつかった事が原因だそうです、ルース兄上」
実は伝書鳩を召喚してアルテミス殿下を呼びに行かせていたのだ。
「人伝では信用ならん、本人に聞くのが一番だ。そうだな、一番怪しいのはイーミール伯爵子息か」
えっ、どこぞの馬鹿が真剣な表情でこっち見てるのですが。自分の立場を理解してないのですかね?
「はぁ。私を呼んだイーミールが犯人な訳ないではありませんか」
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結果的にこの騒動の終幕は、皇帝陛下の預かりとなった。最悪、マーズフレイズと龍器持ち出してどうにかする予定だったのだけど。
報告書を見た皇帝陛下は、若干不愉快そうだったが。以前の口論の件も報告されている筈だしね。
なんだかんだ報告をしに帝城まで足を運んだ結果、寮室に帰ったのは十時。これだから後処理は面倒なんだ。
ダンジョンから帰って来ていた幻日と幻月と一緒に風呂に入る準備をしながら、CCSBとTUSBの総数をコアに聞く。コア曰くは約五百万体だと言う。あと、魔導まで覚えた事を報告して来た。そろそろ、生物を真似出すだろうか?
ソファーにマーズフレイズを着たまま沈む僕にガレアが見兼ねて紅茶を出してくれた。
ズズッ
嗚呼、無性に紅茶が美味しい。チラッと、小さくガッツポーズをしているガレアが目に入った。微笑ましいなぁ〜、どこぞの貴族子弟達とは大違いだ。
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幻日が―寮室に付いている大きめの風呂―泳ぐのを捕まえ、入りたがらない幻月を近くに召喚んで風呂に入れる。
数分格闘し、二匹を脇に抱えて縁に寄りかかっていた時。衝立の向こうから、ボーイシュな声がかかる。
「あの、背中流しましょうか?以前サーラさんがやっていたと聞いたので…」
別にいいのだか、今は癒されたい気分なのでお願いする。
「よろしく頼むよ」
答えた後に布が擦れる様な音が、いや実際擦れている音が聞こえたので忠告する。確認の為に見た衝立の間に一瞬桃色が見えたが気にしない、気にしてはいけない。
「服を脱ぐ必要はないぞ、支給した普段使いのメイド服の袖を捲って裸足で入ればいい」
「わ、分かりました。前世の同僚が裸体の女性に背中を流されたいと話していたので、そうゆう物かと思っていました」
かなり女性に聞かれては駄目な話かと思うぞ、その話。……擦れる音終わらないのですが、もしや元鎧の方を着ていたのでは?
………ボーっとしてたら幻日と幻月がまた逃げた!まだ体を洗ってないのに!
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今回の成果
プラス
マーズフレイズ 霊薬『宵の雫』完成
皇帝陛下の評価アップ↑
『面倒負わせてすまん』
ガレアのメイド化進行度 5%
『べっ別に若干楽しいなんか思ってないですし!』
今回について
これからは今回の成果でふざけていく方針で。皇帝陛下の評価は、陛下個人の内心ですね。立場からの考えは呪いが常に邪魔をします。サーラはいつカンストするのだろうか?ガレアはこれまで疲れたイーミール君を見た事が無かったので、フォローに回った感じ。この後のガレアの背中流しシーンを書きたい欲がすごいので、次話冒頭に突っ込むか、ガレアの回想シーンにでもします。今回除くと、お色気シーンは当分イーミール君しか無いのよね。
更新について
書いている事自体が楽しいのでエタる事はない筈ですが、作者が時間を取れなくなった場合は更新間隔を一ヶ月に変更するなどを行います。プロットは壊れない強度ですので、お気になさらず。読みやすさ、表現方法に関しては未来の作者の語彙力にご期待ください。実際、一話をすごい書き直したいので内容変えずに文章変わっていく事になると思います。
感謝
ツイッターでも書きましたが、累計1,500pvありがとうございます。ユニークpvの方も600を達成しました。




