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番外編 龍皇女の追憶 前編

 私とアレクとの初めての出会いは九年前の春まで遡る。それは皇族にとっては、国内で神童と囃される少年に出会うのは必然的だった。エルカミス家との皇族の契約、怪盗王シンリア殿との関係も有っただろう。初めて会ったときは、当時はAランクだったシンリア殿の背に隠れ、顔を逸らし私を見ていた。かく言う私も父上の背に隠れていたのだが。初めての会話は貴族、皇族の子としては、酷く拙い物だった事を覚えている。


「あ、あの。よ、よろしくおねがいしましゅ!」


「よ、よろしくたのむぞ」


 そうそう、あのアレクが噛んだのだ。しかも見事なぐらい赤面して。その後の会話は二人とも人見知りになっていた事もあり、一言二言で会話が二、三十秒止まりつつも、各両親の相談が終わるまで会話を繋いぐ事ができたのは奇跡といっても過言ではなかった。内容は何故かお見合いじみたものではあったが、前日に読んだ恋愛小説が原因だったのだろうか?話した内容もその小説の内容だったし。


 私は教師たちの授業もあったから、公務がある今もそんなに本を読む時間が無かったので本自体は読むのだが、速読スキルを取得するほど速読はできなかった。しかし当時のアレクの速読スキルは七十五レベル。読む本のジャンルも広く、その中には恋愛小説も含まれていた。


 私たちが同一の本を読んでいると知ったのは、会の後半だった。お互いに、両親の見守ると言うべきか、微笑ましい物を見るような生暖かい視線を感じていたから。後半とは言えその視線が消えたのは、ほっと出来たのは、言うまでもなかった。


 しかし残念だったのは一番盛り上がる所で時間が来てしまった事だった。この会は私の安全のため、帝城で行われた。アレクが領地から帝城に来るには一週間かかるので、頻繁に会うことができない。そこで父上とロイド卿が話し合って出た結論が文通だ。初めてのアレクからの手紙は四歳児にしては、堅苦しかった。


『第二皇女殿下へ

 すがすがしい初夏の季節となりました……………


 季節のあいさつから始まるとても長い手紙。難しい言い回しもあったので、私は読むことを諦め、メイド達に翻訳して貰った。内容は半分以上は小説の事、もう少しは私の剣の腕を褒める物だった。剣術を褒められた当時の私はそれはもう、ベットの上で飛び跳ねまわる程の喜びようだった。


 当時の私、いや今の私も現在のイスタール皇家で父上を除く、たった一人の幼少期の頃からの龍人族(ドラゴンニュート)だ。幼少期からの龍人族(ドラゴンニュート)は体の成熟の速さ、魔力の質、濃さ、龍器の成長限界etc……このように圧倒的な違いが存在する。そのため、私を女帝に、と担ぎ上げようとする者は多く、帝城の中だけで育てられた。理想の淑女になる様に、と母上や乳母に育てられた私だったが、性に合わず、剣を振るっていた方が機嫌が良かったのは言うまでもない。


 だが、私は皇女。いつかは令嬢たちの模範となるべき人物。苦言を(てい)する者は常に私が剣を持とうものなら、止めるよう言って五月蠅くて仕方がなかった。そのため、訓練に付き合せていた女性近衛騎士も余り褒めてはくれなくなった。


 我ながら、恐ろしい程のちょろさだが、彼は私が物語の中のヒロインをかけて争う騎士たちの決闘の部分だけ、目を輝かせながら語っていたのを覚えていたのだろう。後の七歳の時のお茶会で初めて会った時の私の様子を話してもらったときにそこが一番印象的だったと言われたのは、ちょっとショックだったが。


 出会い自体は単純な物で、より仲を深めるきっかけは文通に有ったと言っても過言では無い。


 アレクが私へ手紙を書く事に慣れ、文章や構成が真面目でなくなるのは、随分時間がかかったが。それでも、私が今まで生きてきた中で一番の青春を聞かれたのならば、手紙を通した馬鹿なやりとりだったと言える。


 その次によく覚えている事は、帝城で行われた私の六歳の誕生パーティーだろうか?基本的に帝都から遠い領地を持つ、地方貴族は祝辞を贈るぐらいで、パーティーそのものには参加しない者が多いのだか、エルカミス家は毎年私の誕生パーティーだけは参加してくれた。兄上達の誕生パーティーの時は三年に一度来る程度だったな。


 ともかく、誕生日に毎年来てくれたアレクは、わざわざ私にプレゼントや、芸を見せてくれた。五歳の時はブレスレットに室内で使える花火の魔法陣(スクロール)。六歳の時はルビーの首飾りと同じくルビーのカスミソウの形の耳飾り、そして結界の魔導陣(スクロール)。プレゼントは、アレクが魔力欠乏症で動けない時も続いた。本人から届けられる事は無かったものの、気付いたら自室の机の上に置いてあったり、専属メイドが代わりに持って来たりした。


 六歳の誕生プレゼントが一番良い物だったから、よく覚えているというわけでもなく。彼は父上に掛け合って、アレクとSランクに昇格したシンリア殿、変装した近衛騎士数人が護衛に付く代わりに、城下町に連れ出してくれた。行く場所は衛兵がかなり巡回していた。変装した私達も殆どの平民に貴族だと勘づかれていたが、城から出ることが一年に一度あるか、無いか、という状況だったら私からすれば、城外に出られるだけで最高級のドレスよりも良い贈り物だった。


 その二年後の悪事に似合わぬ晴天の下で起きた、あの襲撃さえ無ければ私と彼の思い出は良い物へと変わっただろう。

切りが悪いので、後編に続く。その代わり更新は明日の6時です。

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