一話
処女作です。
恐らくすごい間違いなどが多いので感想や誤字報告などで伝えていただけると幸いです。
4月6日春の光が差し込む教室の廊下側、壁が真横にある列の一番後ろ。そこに頰杖をつき、教壇で話しいる教師の話を全く聞かず、何か考えごとをしている少年がいた。
百人に聞けば、確実に百人が美形だと口にするであろう整った顔立ち。サラサラと、清潔に保たれている黒髪。だが、その態度が制服による真面目さを打ち消し、趣味人である事を感じさせている。
(さて、初の日本発VRMMOゲーム『Life Inherit Online』の開始時間は今日夜8時だったかな。)
考えている事は案外しょうもないようだが。その様な考えで頭が埋まっている様な人はこのクラスでは特異―――という訳ではなくちらほらと、具体的に言えば一列に2人位、体勢こそ違うがよく見ると話を聞いていない。
「――この海幸県立海幸高校の新しい生徒として規律を守って生活する様に。」
(ベータテスト時点でかなり自由度の高いキャラメイクが出来た筈だ、前衛キャラにするか?後衛も面白いんだが…)
(容姿こそ選択できないが、大雑把な方向性は決められるし、スキルも多岐に渡る。時間をかける価値は十二分にある)
始業式後の教師の話が終わった事にも気づかず、趣味人特有の思考に溺れていった彼の名は清興時司。いつの時代にもいるゲーマーである。
そんな彼に近づく男がいた。
「やあ時司君、いつまでボーッとしているんだい、さっさと帰ってLIOのキャラメイクするんじゃなかったの?」
時司は、突然話しかけられた事に驚いたものの、話しかけた人物を見て、微笑んで言う。
「響也いきなり話しかけるな、驚くだろう。それに今キャラメイクについて考えていたところだ」
彼の名前は日比谷響也。時司の小学校から同じクラスでゲーマーというほどではないが、いくつかの作品を時司と共にプレイした事がある。
そして彼らは家に帰り道に向かって歩き出す。やや、足早に。
「そうゆうなよ、それでLIOは前衛やるの?それとも後衛かい?」
「ん〜、俺は後衛になる予定だな」
「いつも後衛な時司君らしい選択だね、しかし予定ってどういうことかい?教えて欲しいなベータテスター様」
「ああ、人生の引き継ぎの時、稀に貴族の生まれになるんだが、その家が武闘派な可能性が有る」
そう"人生の引き継ぎ"それこそが『Life Inherit Online』(以下LIO)の最大の特徴であり、話を聞いていない人が多い理由である。
「武闘派ねぇ、どのくらいなんだい?」
「カーティス王国での話だが、騎士団長の座を継ぐアーチス家の令嬢で魔術師タイプが魔騎士に早変わりだそうだ」
「その話は聞いたことがあるかな、だけど仕組みを聞いたことが無いなぁ?」
「どうやらアーチス家当主に教えてもらったとか、その代わりにレベル上げの機会がないらしいが」
「前衛クラス予定な僕からすると羨ましいばかりだね」
「自分の運に祈る事だ」
などとLIOの情報交換をしながら歩いていれば校門に着いていた。
「今度はLIO内のイスタール帝国で会おうか時司君」
「会える身分になれるといいがな、響也」
時司は手を振って答える、残念ながら彼とはここで別の道になる。
(響也は歩きで来れるんだったか、羨ましい事だ)
内心愚痴を言いながら、時司は駅へと歩いていく。彼の家までは凡そ二十分程電車に揺られる必要があった。
愚痴は今日でなければ、心にあふれる事は無かっただろう。
――――――――――――――――――
電車のドアが閉まり窓の外から、彼にとっては見慣れた光景が見えてくる。
窓一面に海が広がり、所々に時司が住んでいる、太平洋日本海域海上都市海幸と同型の海上都市が存在する。外壁には重機の姿が見て取れる。未だ海上都市は拡大の途上にあるのだ。
息を吸えば、朝の香りが肺の隅々まで透き通る。故郷とは異なるが、彼にとっては同じようなもの、第二の故郷とも言える。感慨に耽るほどでもないが、どこか安堵させた。ついでに響也への恨みもどっかに飛んでった。
ふと時司が窓から目を逸らし、前を向くとそこには、学校一の美少女と謳われる少女がいた。
髪はロングで、スタイルは良く、クラスにこそ問題はあるが、それも長所、らしい。そんな彼女か発せられる他人を拒絶する気がいいとかなんとか。
(隣のクラスの新藤心鑑さんだったかな、まぁ関わる事はないだろう)
そして彼はまたキャラメイクに関しての思考に溺れていった。彼にすれば、その程度の人物は興味を向けるに値しないのだ。少なくとも、己が自ら動くことにはならぬだろうとそう確信したのだ。
彼に関わる事がないと断定されてた当人は、ほんのひととき目を向けた。その後興味を失くしたのか、物珍しそうに窓の風景に視線を落とした。
だが、入学後一時間で学校内の全ての女子を調べ上げた馬鹿どもが思い描く理想とは裏腹に、彼も同じ様に、電車を降りるその時まで話しかける事は無かった。馬鹿どもはいつだって、自意識過剰なのだ。
――――――――――――――――――
現在の時間は午後8時、LIOの開始時間である。そして時司はダイブ用のメガネを大きくした様な機器を頭にを付け部屋のベッドに寝転がった。ベットと壁に嵌め込まれた大型テレビ、そのスピーカー、白木のテーブル、備え付けのキッチン。それしかない、殺風景に近い部屋を机上の勉強の痕跡が生活感を僅かに付け加えていた。
時司は一人暮らしな為止める者もいない。居たとしても、入試で主席を勝ち取った時司に物を申すことは出来ない。もし出来たとて、彼はそれを鼻で笑うであろうし、聞く耳を持つとは思えないが。
(さてっと、ダイブシステム起動、LIOソフト起動)
静かに、けれど確実に彼の体から意識はこの世界からなくなった。主人のいない無機質な室内は、ひどい静寂に包まれ、星々が燦々と白月の輝きを称えていた。
――――――――――――――――――
目が覚めると、いや正確には覚めていないが、雲が反射している湖の様な場所にいた。例えるのはユウニ塩湖だろうか。太陽もないのに光に満ちている、不思議空間である。
「ここはβテスト同じか」
そう呟くと、思わぬところから答えが帰ってきた。一度目を向けた時には何も無かった筈の場所。
「そうでもないわよ、なにかトラブルとかが起きた時の対応場所がここになったわ」
答えた彼女は、この世界を管理する総合統括AIの一人、知識と魔術の女神
エルネアス様だ。βテストの時私が信仰していた方である。そしてその時のキャラメイクも担当していただいた。
「なんで統括AIがキャラメイクの担当しているですかね?」
「やった方が受けがいいじゃない。そしてキャラメイクを始めてもいいかしら?」
とても分かりやすく、運営的な理由だった。当人の負担にならないのであれば、それでいい。健全にゲームが継続される、その一点に絞られた思考が、そんな結果を出した。
「ええ、と言ってもβテストの設定からあまり変える気はしませんねエルネアス様」
「じゃあ、変更点を言ってもらったてもいいかしら?」
「まず、引き継ぎ先をイスタール帝国に、サブショブを学者見習いに、スキルを――」
―――――――――――――――――
キャラメイクの結果ステータスはこうなった。
名前:
種族:
MJ:魔術士見習い
SJ:学者見習い
生命力:+0
魔力:+40
STR:+0
VIT:+0
INT:+8
DEX:+3
AGI:+0
MID:+5
スキル
召喚術 レベル1 従魔契約術 レベル1
錬金術 レベル1
学習 レベル1 解析 レベル1
※容姿と名前と種族が未設定なのは人生引き継ぎのため
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はっきり言って異端である。
魔術士系のジョブに就くことで確かに魔術系スキルに1.2倍の補正が付くが、召喚術士等などの特化ジョブに就いた方が関係のあるスキルに限るが補正は1.5倍と高く、学者ジョブはそもそも、不人気なジョブなため情報が少ない。純魔ぐらいはそこそこいるが、ならばMJ、SJともに魔術師系のジョブを選ぶべきである。
「これでいいかしら?かなり尖っているけれど?」
世界を統括する管理AI、その上位七柱の内の一人である彼女から見ても、完全後衛型としても異様である。
「問題ありません」
「そう、じゃあ引き継ぎ先の体をガチャで選んでね」
彼女がそう言うと目の前にガシャポンが出てきた。相変わらずだなこれ。緊張感に欠けるが、自身のこれからに関わる重要な決定である。選び直すことは勿論不可だ。
少し緊張しつつも、取手を回すと中から一つ出てくる。それをエルネアス様が回収して読み上げる。
「イスタール帝国の西方地方イルバルトを領地に持つのエルカミス伯爵家の次男 イーミール・アレク・エルカミスだそうよ。いってらっしゃ〜い」
エルネアス様の言葉が終わると次第にまぶたが落ちていった。眠気を感じないのに眠いとはこれいかに。
時司の〈会える身分だといいが〉ですが、
王族と平民が日常的に会えたらびっくりなのでこの発言があります。(メイドなど役職を除き)
基本的に現実の登場人物は日本人な予定なので、進藤だけ茶髪です。後から変わりますが。
ステータスは見習いだと初めにメインジョブの補正が得意なステータスに+5 サブジョブは+3がレベルごとに入りますその後はメインジョブのレベルが上がるごとに自由に振れる4ポイントとサブジョブの2ポイントがあります。
そのジョブのプラス分のステータスがキャラクター本体のステータスに加算されます。
スキルはメインジョブから、三つサブジョブから二つです。
他に鑑定や剣術などの基本スキルと種族スキルが有り、その中一枠使いますが取ることもできます。
魔術士のスキルは他に〜術が入ります。重要な事として魔術と魔法は明確に違います。魔術が魔法の下位互換な訳ではありません。(魔法使いならば〜魔法となります)
学者は学習と解析の他に、初級〜学のスキルがあります。スキルレベルの上げ方はご想像のそのまんま。鑑定スキルとの違いは本編で触れさせていただきます
すごくどうでもいいんですが、時司と進藤の名前で相性占いしたら100点と言う結果が出ました。本気で運命の赤い糸を感じた、付けたの僕だけど!
APP 進藤:18 時司:18 響也:16ぐらいで考えています。