「55話」
車両を降りた彼らと目が合った。
彼らは真っ直ぐにこちらへと向かってくる。
やはり彼らが調査チームで間違いないらしい。
「島津 康平さんですか? 私、陸上自衛隊所属の都丸です。 調査チームとして参りました」
そう言ってびしって感じで礼をする隊員さん。
さすが自衛隊、動きがきびきびしてるね。
たぶんこの都丸さんが隊長さんかな?
銃は見当たらないけど、車両に置いてあるのだろうか。車両に何人か残っているぽいし、中かな?
それとも調査だから持ってきていないとか?
……まあ、その内分かるからいっか。
まずは挨拶されたら挨拶を返さないとね。
「あ、どうも島津です。 今日はわざわざ来てもらってすみません。よろしくお願いします」
「いえいえ……それで、例のものはどちらに?」
ぺこぺこ頭を下げる俺に対し、そうたずねる隊長さん。
いきなり本題ですねっ、たぶん忙しいんだろうなあ。
通報ある度に調査チームとして派遣される訳でしょ? 一日にどれだけ通報があるのかは分からないけれど、ダンジョンも攻略して、調査チームもやるとか超ハード。
さて、そんな忙しい自衛隊の方々を待たせるわけにもいかないね。
早速案内しよう……ってすぐそこの納屋なんですけどね。
「あ、こちらです。 家の中ではないですよ」
扉が見当たらないので、家の中かな?とでも思ったのだろう。
家に視線をチラチラと向ける隊員さんに向かい、手を振り納屋へと案内する。
「ここです」
「……」
そう言って納屋の中にある穴を指さすが……あの、皆さん無言になられて、その、ちょっと怖いんですが。
いや、まあ確かにぱっと見はタダの穴だし。
こんなん指差されてダンジョンですとか言われても、そりゃ巫山戯んなって気持ちになるかも知れないけど。
うん、つまり俺が悪い!
「……あ、あの」
「失礼しました。この穴がそうですか? 失礼ですが……その、中に……」
「ああ、ありましたよ。 ダンジョンですよね」
「……分かりました。 我々も確認しますので島津さんはこちらでお待ち頂けますか?」
「はい」
ちゃんと説明はしないとね。
俺があまりにもあっさりそう言ったので、隊員さんも少し怪しみながらも一応信じてくれたらしい。
確認すると言うと車両へと皆して向かい始める。
銃を取りに行くのかな? ここのダンジョン銃持ち込めないんですけどね。ハハハ。
「島津さん、ちなみにですが」
「ほい?」
戻ってきて何やら準備をしていた隊員さん達だけど、不意に隊長さんがこっちに話しかけてきた。
「中に入られた際に、何かを見つけたりはしましたか?」
「ポーションですか?」
あとで持ってるの見つかったら面倒だからね、ここは素直に答えておくよ。
「……そうです、実は大変申し上げにくい事なのですが、ダンジョン内で発見した物は国で一括管理する方針となっていまして、後ほど回収させて頂けると助かるのですが……」
なるほど、やっぱそう来るか。
まあこのためにポーション用意して置いたし、問題はない。
ポーションでよけりゃ幾らでも持っていくと良い、なのだ。
「あーはい、分かりました。 結構数ありますけど大丈夫ですか?」
「ええ、車両にはまだスペースありますので……いくつほどありますか?」
「ええと……とりあえず家にこれぐらいの段ボール2箱分ですね」
「そんなにですかっ!?」
結構がっつり用意したからね。
各ポーション100個ずつ、一抱え有るダンボール2箱分である。
ただ隊長さん驚きっぷり見るに用意しすぎたかも知れない。
さっきまで落ち着いてたのに素が出てますことよ。
「隊長、それだけ有ると厳しくないですか」
「移動中に割れるかも知れません」
「車両手配するか……島津さん、運搬用の車両を手配しますので、申し訳ないですが箱を用意して頂いてもよろしいですか?」
「あ、はーい」
ポーションをそこまで大事に扱うってことは、やっぱチュートリアル突破してないんだな、自衛隊さん。
どうにかして銃じゃ無くて体使って戦うと良いと伝えないとなあ。
うーん……一緒にダンジョン潜れれば良いんだけど、このままじゃ俺は留守番になっちゃうよな。
どうしたもんだろうか……っと、ダンボール運ばないとだ。
隊員さん待たしてあるしね。
「まず、一つ。 同じのがもう一つあります」
「失礼します。 …………確かに、ポーションですね」
「じゃ、残り持ってきますね」
そう言って再び玄関に入り、靴を脱いだ辺りで……不意に俺の耳が誰かの独り言をとらえた。
「確かに相当鍛えているが……しかし、銃も無しに? ここのダンジョンは他と違うのか……?」
隊長の都丸さんかなー……?
まあ、でかいダンジョンと違って敵はそこまで強くないからねー。 銃が無くても対処できてしまう。
たぶん他の見つかったダンジョンもここよりは強い敵が出るだろうし、そりゃ銃も持たずにポーション集めているとなると、ダンジョンの種類について知らなければ不思議に思うのも仕方ないよね。
……てかですね。
なんで俺、独り言が聞こえてるんだって話ですよ。
ここ家の中だからね?
思い当たることがあるとすればあれだな。ウサギのカード。
あれって聴覚強化するはずだからね。
ダンジョン内だと敵が来るのを早く察知できるぐらいの効果だったけど、こんな独り言まで聞こえるとはね……結構有用なカードだったのか。
なんで今まで気付かなかったのか疑問だけど……対象が小さい音だけとか?よく分からんぞ。
落ち着いたらちゃんと検証したほうが良いのかもね。
さて、情報収集するか。
まさか向こうも聞こえているとは思わんだろうし、何か有用な話が聴けるかもだからね。
「……隊長、これだけあれば連中にも回せそうですね」
「ああ……だが、期待はするな。 上に掛け合ってはみるが、通るかどうかは正直分からん」
「そんな……おかしいっすよ! こっちはこんなに怪我人出してるのに、これが有れば怪我だって……!」
「田辺」
「……すみません、隊長」
「……oh」
最後のは俺の呟きね。
何か思っていたよりも重そうな話が聴けてしまったぞ。
アマツの懸念通り詰んでそうな感じがする……たぶん銃が通用しないモンスターが出て来て、怪我人も結構出てるのかな?
なのにポーションは行き渡ってないと……最悪の場合、行き渡ってないと言うか、そもそも配布されていないかも知れない。
国で管理するって話だしなあ……いやあ、これヤバいんじゃ無い?
現場の負担半端ないでしょ。
俺はダンジョン内で死ぬことは無いって知っているし、ポーションもポイントで購入できると知っている。でも彼らはそうじゃない。
……いっその事、知っていることを話せるだけ話してしまうか?
NGな情報はアマツが規制するだろうし……てか言わない方が不味い気がしてきた。
よく考えたら彼らがここのチュートリアルを突破してしまうと、たぶんBBQ広場とかばれるよね? 突破するまではアマツがどうにかするだろうけど、突破した以降はバレバレになるはず。
そうなった時に、これらは誰が用意したんだとなる訳で……間違いなく俺が疑われる事になるな。
ダメじゃん。
……言おう! よし、言うと決めたぞっ!
まずは隊員が興味を引きそうな……ポーションの話からかな。
どこまで規制されるか分からんけど、そこはアマツが調整する事を期待しよう。
この辺りの情報を伝えれば、俺への心証が良くなるかもだし、今後色々とやりやすくなるはず。
よっしゃ、がんばるぞっ。




