「46話」
まじかよ……と思っていると、さらに続報が入る。
現場から中継映像が流れ……ハチ公前の広場にでんっと立つ扉の姿が確かにあった。
あるのは扉だけであり、他には何も存在していない。
そして扉は僅かに開いており、本来なら単に後ろの景色が映るはずであるが、そこには映るはずの無い光景が見えている。
間違いなくダンジョンだ。
「わーわー……わー?? え、まじで? まじでここに出したの!?」
あの大きさからして、かなりでかい方のダンジョンだと思う。
全開にしたら車が並んで入れるぐらいはある。
と、なると入った瞬間にゴブリンがこんにちは! するって訳で……あぁ、救急車もきてる。やっぱ中に入った奴が居るんだなこれ。
ネットで探せば現場の詳しい写真やら動画やら上がってそうだ。
てか……これ大丈夫か?
ちょっと不安になったからアマツの所に行ってみるか。
即行でご飯を食べた俺とクロはすぐにアマツの所へと向かう。
休憩所から5階へと続くゲートをくぐり抜け、中にいるであろうアマツへと声を掛けた。
「……アマツさん、いる?」
「やあ、ようこそ。 来ると思っていたおぐっ!?」
椅子に腰掛け足を組み、どや顔でそう言ったアマツの鼻っ面にクロの猫パンチが炸裂した。
俺もぶん殴りたいこのどや顔って思ったけど、クロも同じ気持ちだったらしい。
てか余裕そうだね?
となると、これはアマツが意図して出したって事だよね、やっぱ。
「痛い……」
「あれ、ヤバくないですか? アメリカとイギリスの動画を見た後だと封鎖されかねないですよ。 あと場所が場所なんで後から怒られると思います」
鼻をさすり、涙目になりながら椅子に座り直すアマツに向かい俺はそう話す。
「怒られるのは困るなあ」
いや、絶対怒られるから。
アメリカとイギリスであんだけでかいニュースになった奴が、日本にも現れたんだからね? それも都会のど真ん中も良いところに。
チュートリアル突破されたら説明するんでしょ? しばかれても知らないよ。
「まあ封鎖は無いと思うよ?」
最悪封鎖されて攻略どころの話じゃ無くなるかも知れないし……と俺が心配するが、アマツはパタパタと手を振りそう応える。
「そうなんですか?」
本当かいな。
「何せアメリカもイギリスも、入ってすぐの所にポーション3種共に用意したからね! もちろん日本もだよ?」
「うわあ」
突如現れたダンジョン。
中に入って直ぐにポーションらしき物が……当然持って帰るよね。
そして調べると効果が判明するわけだ。
怪我も病気も治ってさらには若返ると判明したらどうなるだろうか?
まあ、さらに潜るよね。
そしてその内チュートリアルを突破して、アマツが登場しボコられると。
まあ、それは冗談だけど……間違いなくさらに潜るだろう。
権力持っている人って高齢者が多いイメージだし。
えげつないぞアマツっ。
てか俺の時も最初に若返りのポーション置いてくれれば良かったのにさー。
俺がじと目でアマツを見ていると、アマツは大袈裟に肩をすくめると言葉を続ける。
「日本のゲートは確かに不味い位置だったよ。 でもあれ本当にランダムだからね?」
「うっそだー」
「あはははっははっ」
またクロの猫パンチが炸裂した。
まあ、扉については後で移動可能と言うことなので、とりあえずはそのままにするらしい……本当に大丈夫かな。
アマツが大丈夫と言う以上、俺にはどうこうする事も出来ない。
大人しくその日は戻ることにした。
そして扉が現れてから1週間が経った。
扉を囲い込むように突貫工事で建物が建てられ、現在では中がどうなっているのか外から窺うことは出来ない。
周りには野次馬やら、中を見せろとごねるマスコミやらで色々と騒がしい。
そしてそれとは反対に、周辺の住民は一部が都外に避難していて、少し閑散としていたりする。
これはダンジョンからモンスターが溢れ人々を襲う……と言ったデマが広まった為だ。
政府はデマだと言っているが、避難する人が後を絶たないらしい。
「んー……そりゃそうなるよね。 暴動とかにはなってないみたいだけど」
ただまあ暴動になるまでは至っていない。
あちこちに警官が立っているし、巡回もしているのでハチ公前の広場以外は比較的落ち着いている。
「あ、他にも見つかったんか」
それから少しして、アメリカで新たなダンジョンが見つかったとニュースが流れた。
その3日後にはイギリスでも流れた。
アメリカもイギリスも、もしかすると他にもダンジョンがあるのでは?と国民に情報提供を呼び掛けていたのだ。
その内に日本でも同じような流れになるだろう。
「あー……本格的に軍を投入すんのね」
そしてさらに数日後には中にいるモンスターの駆除を名目に、軍を本格的に投入すると報道される。
あ、これアメリカとイギリスのお話ね。
日本はどうだろうね。 自衛隊動かすとなると色々と大変そうだし、しばらく先になりそうな気がする。
と、思ったんだけどね。
「――議会で、自衛隊の投入が決定されました」
1週間もしない内にそんな国内ニュースが流れる。
「思っていたより早いなあ」
何かすごい動きが速い気がする。
この手のってこんなにサクサク決まるものだっけ?
ポーションに釣られたのかな。
「ある程度確保するまでは国民には知らせないのかな?」
その撒き餌のポーションだけど、今のところニュースにはなっていない。
ネットではそう言う話も流れてはいたが、全て根拠のない予想のみである。
まあ、大量に手に入れたとしても直ぐには発表なんて出来ないだろうけど。
何せまだ3カ国以外ではダンジョンが見つかったって報道無いし、この状態でポーションの存在が明らかになったらどうなるか……ろくな事にならんだろうね。
「でも他の国にもこれからダンジョン出来るし、どこかで情報漏れるよね」
発表のタイミング難しそう。
まーその辺は偉い人達が考える事だし、俺が頭を悩ませたってしょうが無いんだけどねー。
さて、そろそろ日課の筋トレでもするかー。
そう思い、椅子から立とうとした所でスマホに着信がきた。
「はい、島津ですー」
「康平か?」
「じいちゃんおひさー」
「おう」
電話はじいちゃんからだった。
内容は以前ばあちゃんに話しておいた件だね、手伝えることあったら言ってねーってやつ。
「おっけー。 金曜の朝ね、前と同じ時間に行くからー」
今回はトウモロコシの苗を定植するのでそのお手伝いだ。
日課の筋トレにより、前よりパワーアップした俺のフィジカルを発揮する時がきたのである。
あ、そろそろお肉も無くなっているだろうし、色々持っていこうかな。
「クロ、ちょっと週末に畑を手伝いに行くね。 お留守番よろしくー」
クロにはお留守番しといて貰おう。
尻尾をぱたんぱたんと振っていたので、良いよーってことだろう。




