378話
まにあいました(っ´ω`c)ほめてもええんじゃよ?評価でもいいy
ギャリィッと硬いものをこすり合わせたような音が響く。
俺が攻撃されたのを見た瞬間に飛び掛かったクロ……それと目の前のこいつが作ったであろう透明な壁が立てた音だ。
ぶち切れてそうなクロの攻撃を防ぐとは、相当に強固な壁である。
外からの攻撃は通らない。であれば中にいる俺が攻撃すれば良い……良いのだが。
攻撃を受けた瞬間、俺も反撃しようとしてはいたのだ。
ただ……体が思うように動かせないでいた。
貫かれた胸から力が、何かが抜けていく。
腕を振りぬくことも、眼前にある顔に牙を突き立てることもできない。
それになにより不味いのが、傷が塞がる気配がない。
胸から溢れた血が少女の服を赤く染めていく……染め切った頃に俺は死亡判定を受けていることだろう。
「やった……やったわ! これでこのダンジョンともおさら───
少女もそれが分かったのか、隠しきれない……いや、隠す気なんてさらさら無いのだろう。
勝ちを確信している少女は凄惨な場面だというのに、それに似つかわしくない嬉しそうな、本当に嬉しそうな笑みを受かべている。
このままだと少女の顔を見たまま力尽きることになるが……ギィンッと一際大きく、高い音が響いた。
───!? け、結界が……何よ驚かせないでよね! 破ったって私に攻撃届いてなきゃ意味ないんだから」
音は通常攻撃だと通らないと判断したクロが放った土蜘蛛によるものだ。
さすが信頼と実績の土蜘蛛、難なく少女の結界とやらをぶち抜くが……クロ本体が結界に阻まれてしまい、牙が少女に届くことはなかった。
さて、本格的にまずいことになってきた。
クロの助けもあまり期待できず、かといって俺も動けない……血が止まらないだけじゃなく、心臓を失ったため全身に血液を送ることができない。それなら液体操作を使えば良いかと思ったが、再生が効かないことから分かるようにカード効果が無効にされているので血流を操ることもできないのだ。気が付いたら龍化も解けている。
そのうち脳に酸素がいかず気を失うことになるだろう。
胸の喪失感……おそらくこれを埋めることができれば何とかなるとは思う。
心臓をもとに戻すのは無理。ワームあたりを生きたまま食えばなんとかなりそうな気もするが、ここにはワームなんていないし……目の前に少女がいるが、動けないのではどうしようもない。
せめて首から上が動けば話は変わってくるのだが……。
徐々に視界が狭まっていた。
いよいよ脳に酸素が足らなくなってきたか……?
何かで……何かで、胸の穴を埋め…………?
なんだ、もうあるじゃないか。
「いぎッ!?」
ぽっかり空いた穴を埋めていたのは少女の腕だ。
アマツ……どちらかというと生首寄りだとは思うが、この空いた穴を埋める素材としては十分だと思う。
あのアマツの干物に比べればまだ体に取り込む抵抗感はない。
少女の顔が苦痛にゆがむが知ったこっちゃない。
俺から奪ったものは返してもらう。
「ぬ、抜けない!? 腕が……痛っ!? や、やめて」
みちみちと音を立てて、再び心臓がつくられていく。
それに伴い喪失感もなくなり、再び体に力が入るようになってきた。
少女は暴れて抜け出そうとするが、逃げられないようにしっかり両腕でホールドする。
……いっそこのまま全部取り込むか?
「ひっ!?」
何かを察したのか、抱えていたはずの少女の姿が掻き消え、少し離れたところに現れ……力が抜けたように壁にもたれ掛かる。
「わ、私の腕が……!?」
直後に飛び掛かったクロによってズタボロにされ、地面を転がるが……彼女の視線は自身のなくなった腕に、そして俺の胸元へと向かう。
信じられないものを見るような目がやがて絶望にそまり、怒りに代わっていく。
「返して! 私の腕返してよっ!!?」
起き上がった少女は残った片腕を俺に向け飛び出すが……あまりにも遅い。
奇襲を狙ったあたり結界と攻撃に特化して、その他の身体能力としては高い方ではなかったのかも知れない……腕とか色々失ったことも影響していそうだ。
「……ふぅ」
そうなってしまってはもう勝ち目はない。 首をはねて終いだ。
結界とやらを再び使えば何か変わったかもしれないが、少女がそれを使うことはなかった。
回数制限でもあるのだろうか?
なんにせよ勝つことはできた。
今回はまじめに死を覚悟したよ……ぶっつけ本番で吸収? できたから良かったものの、あれが無ければ少なくとも俺はやられていた。
ちなみにどうやった? と聞かれても困る。何となくとしか答えようがない……アマツ素材の影響か何かってことにしておこうか。
はあ……しっかしやっぱ油断ならんなこのダンジョン。
「……ドロップは無しかな」
背中に違和感を感じつつ、少女に近づくが何も落ちていないように見える。
腕がドロップと言えなくは……ない? 毎回この方法で入手するとか勘弁してほしいのだけど。
うーん……これはアマツさんに聞いてみるしかないか。
分からないことが多すぎる。何より背中の違和感がすっごい気になる。
「……ねえ、クロ」
……ちょっと気になりすぎるので、アマツさんのところに行く前に確認してみるか。
「俺の背中ってどうなってる?」
自分で背中を見ることはできないけれど、ここにはクロがいるからね!
足で砂をかくしぐさをしているクロに、背中を向けて聞いてみるが……。
「えー……」
クロは顔をこちらに向け……スンッて真顔になった後、顔をそむけてしまった。
いやな予感しかしねえぞおい。
どうしよう……一応自分で確認頑張って手を伸ばせば届かなくはないと思うが、確認するのやだなあ。
筋肉邪魔で届きません! ってならないかなあ……。
気は進まないがやるっきゃないかあ。
「……うげぇ」
届いたよ。
手、届いちゃったよ……あの感触、間違いない。
背中に腕生えたままだ。
アマツ「んー?????」




